さよならの言葉と私達

仲仁へび(旧:離久)

第1話 さよならなんて言わないで





「さよならなんて言わないで」


 子供の頃、彼と一緒に遊び終わった後必ずいってたな。


 私は何も知れない子供だったから、いつまでもずっと好きな人と遊んでいたかったんだ。


 だから、別れの旅に泣きついてた。


 彼は、ものすごく困っていただろうな。


 なつかしい。






 今もあの時と同じ言葉を行ってしまいそう。


「さよならなんて言わないで」


 私はとても弱いし、寂しがりやみたい。


 大人になってもなおらない。






 この小さな町で十何年。


 一緒に過ごしてきた。


 彼とは、いつも一緒だった。


 楽しい時も、悲しい時も。

 いつもその感情を分かち合ってきた。


 だから、これかもずっと一緒にいるんだと、信じて疑わなかった。


 それなのに、彼は遠くへ行ってしまうらしい。


 都会に出て、働きに出る。


 そんな言葉を聞いた時、裏切られたと感じた。


 彼は私より、この町より、輝かしい場所を選らんだのだ。


 私達のことを忘れて、どこか遠くの地にある喜びを、栄光を探しに行く。


 私にとって、それはひどい裏切りだった。


 だから、彼が上京するとき、見送りにはいかない事にした。


 だって、さよならなんて聞きたくない。


 彼が旅立つ姿を見なければ、しばらくは都合のいい妄想にひたってられる。


 この町で彼の顔が見えないのは、たまたま。


 言葉をかわせないのは、彼が病気でねこんでいるせい。


 そんな具合に。


 きっとごかましはいつまでも続かないだろう。


 それでもいい。


 思い出と故郷を切り捨てて旅立つ彼ほど強くない。


 私は弱い人間なのだから。






「おうちには帰りたくないよ。ずっと遊んでいたいよ」

「駄目だよ、帰らなくちゃ」

「でも」

「大丈夫。明日になった俺とまた一緒に遊べるから。ほら、約束」

「ほんとに、遊べる?」

「ほんとのほんとだ」

「分かった。約束だよ。絶対だよ」





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