第3話 告白
楓は帰宅するなり、今日友達を連れてくると、母に伝えた。夢美の一件があったので、心配していた講子だったが、友達の中に幼なじみの隼人を見つけ、安堵した。隼人は、幼稚園の頃からの楓の友人だった。隼人の母親と、楓の母、講子が親友同士で、小さい頃からよく遊んでいた。だが、小学校高学年にもなると、同性同士で遊ぶようになり、いつしか自宅にも来なくなっていた。隼人に会うのは久し振りだった。
(こんなに立派な男の子になって、、、)
講子は、胸に込み上げてくるものを、胸に手を当て、しまい込んだ。楓の友達は、幼なじみの隼人、短髪の長身の女の子、眼鏡を掛けた小柄な男の子、小柄な外国人の美少女。その美少女は、にっこりと微笑み。丁寧なお辞儀をして、日本語で挨拶をした。
「お母様、本日はお邪魔致します。楓さんと仲良くさせていただいております。レンドリッヒと、申します。こちら、よろしければ、皆様でお召し上がり下さい」
「あらまぁ!ご丁寧にありがとう。美味しそうなお菓子ね、開けさせていただくわね。折角だから、皆で食べて頂戴。ありがとうね。気を遣わないでいいのよ!皆、ゆっくりしていってね!楓、お母さん、パートに行ってくるわね!」
講子がレンドリッヒに貰った焼き菓子をお皿に移し、皆の飲み物をテーブルに運んだ。その時も、奥村以外は手伝いをした。奥村は何をしてよいか分からず、1人狼狽えていた。
講子が出て行くと、残されたメンバーでまず口を開いたのは、隼人だった。
「レン、お前、おばちゃんの前と、俺らの前での態度違くないか?」
レンドリッヒは両手を広げて、おどけた顔をしてみせた。楓と、奥村は苦笑する。
円卓を囲むかたちで、光、奥村、隼人、楓、レンドリッヒの順で座っていた。 「楓、今日は家に呼んでくれてありがとう」光が頭を下げる。周りの皆も、それに続いて頭を下げた。
「楓と奥村は、気付いていないと思うけど、ここにいる皆は『力』を持っている」
楓と奥村は、互いに顔を見合わせてビックリした。
「お互いの『力』を知らない者もいるから、自己紹介していければと考えている。隣同士の手を握って貰えるかな?」
皆は、光に言われた通りに手を握る。すると、楓の後ろには胸に矢が刺さった侍と、光の後ろには女の子が見えた。隼人、レンドリッヒ、奥村は悲鳴をあげる。侍は謝罪した。
『驚かしてしまい、申し訳ない。私は侍の正之助(しょうのすけ)と申します。胸の矢が、どうしても抜けなくて。困ったものです』
正之助は、自分の胸に刺さっている矢に触れていた。
(いやいや、、、胸に矢が刺さってるから驚いたのではなく、幽霊のあなたが見えるから驚いたんだ!)と、3人は内心突っ込んだ。論点がずれている侍である。
(侍の幽霊が話したっ!!!)
「怖がると思って言わなかったけど、学校からずっと付いて来てて、、、。でも、悪い人、、、じゃなくて、、、悪い幽霊じゃないっぽいから」
楓は申しわけなさそうに話す。段々と幽霊を受け入れている自分にも驚いた。
「手を握ると、『力』を体感出来る事が分かった。皆に、侍の正之助さんが見えるよね?この霊視は、楓の力だよ」
光は説明した。名前を呼ばれた正之助は、丁寧に頭を下げる。背筋がすっと伸びており、凛とした佇まい。よく見ると、端正な顔立ちをしている青年である。楓は思わずじっと、見つめてしまった。正之助と目が合う。慌てて目を反らした。手は、皆まだ、握ったままだ。光が話しだす。
「私から話すね。私は3歳で力を身に付けた。私の力は相手の考えを読む力。自己流だけど、鍛えたら、自分の考えも相手に送る事が出来るようになったし、動物と会話も出来る様になった。力は鍛えれば、変化させる事が出来るかもしれないと、考えている。じゃあ、奥村!」
光に名指しされた奥村は、体をビクッとさせ、話しだす。
「僕は、1ヶ月前に、、、力を身に付けた。僕は、壁を通り抜けられるんだ」
まさかの能力に、楓は意表をつかれた。隼人が話しだす。
「俺は、昨日だな。職員室入ろうと思ったら、『バチン!』て、弾かれて、後ろに吹っ飛んでさ。そしたら、力が付いた。力は透視だ!」
素早い動作で、レンドリッヒが自分の体を両手でガードした。
「違っ!今は、見てねーから!昨日だけだから!」
思わずこぼした言葉にレンドリッヒの鉄拳が飛ぶ。光の声掛けで、再度、皆で手を繋ぐ。見えなくなっていた、正之助と女の子が、現れた。
「私は、光が説明してくれた通りで、夢との一件があった翌日、幽霊が見えるようになって。ここにいる、正之助さんと、、、」
楓は、女の子の名前を聞いていない事に気づいた。それを悟ってか、光が答える。
「じゃぁ、レンちゃんの前に鈴子ちゃん、自己紹介しようか」
光に促された鈴子は、丁寧にお辞儀をした。正之助を含めた皆も、お辞儀をする。
『れんどりっひさんのまえに、しょうかいすみません。わたしは、すみだ すずこと、もうします』
また、丁寧にお辞儀をする。皆もお辞儀をする。
『わたしたちゆうれいは、このよにみれんがあると、じょうぶつできません。じょうぶつしたいので、おかあさんをさがしてほしいです』
皆は、鈴子ちゃんのお母さんを探してあげたいと、思っていたが、奥村は、震えている。顔が青白い。
「じゃあ、次はレンちゃん。話してくれる?」
光に促されて、レンドリッヒが話し出した。
「あたしの事は、レンて呼んでいいよ。あたしが力を持ったのは、生まれた時から。あたしは、前世の記憶がある。何回も生まれ変わってるみたいで、その時の記憶が全て残ってる。これって、力なのかなぁ?」
レンドリッヒは、首をかしげた。光は、レンドリッヒを見て、頷いた。
「最後に、正之助さん」
名前を呼ばれた正之助は、お辞儀をして、話しだした。
『私は、ある人を探しています』
皆、力を持っていて、鈴子と正之助は、人探し。鈴子の母親は、存命かもしれないが、正之助の方は、どう考えてもこの世の者では無い。奥村の顔は、更に青白くなった。光が話しだす。
「皆、何かしらの力がある。私は、困っている人の為に使うべきだと、考えている。 だから、協力して欲しい。それと、私達以外にも、力を持った者がいる。それは、職員室にいる」
「職員室?!」
(奥村以外の)皆が声を合わせる。
「隼人も職員室に入ろうとして、弾き飛ばされたが、実は私もドアに手をかけたら、物凄い衝撃を受けて、、、。何とか弾き飛ばされないように耐えたが、尻餅をついてしまった。多分、あれは、職員室に結界を張っている。力の持ち主は、職員室の中に見られたくない何かがあるのか、私達と仲良くなりたくないのかもしれない」
皆、黙った。暫く、沈黙が訪れた。隼人がその沈黙を破る。
「それって、俺達の敵ってことか?」
光以外の皆が、隼人を見た。楓も考えた。
(隼人も、光も跳ね返すくらいの力、、、?敵?)
「その入れない、職員室に唯一入れる人物がいる。奥村!」
光に呼ばれ、体をビクッとさせ、奥村が皆の顔を一瞥した。奥村と光は、上下関係にあるようだと、その場にいる皆は、察知した。
「それが、僕です。何故か分からないですけど、、、」
奥村は節目がちに答える。光がその後を引き継ぐ。
「私の推測だけど、奥村の力がその力の持ち主より上なのか、それとも、『罠』か。いずれにしろ、確かめてみないと」
その言葉に、皆がゴクリと唾を飲み込む。すると、正之助が手を挙げた。
『私にも、何か出来る事があれば、協力させて下さい』
続いて、鈴子も、
『わたしもなにかできませんか?』
と、続ける。皆で、その気持ちを組んで、協力出来る事があれば、お願いする事になった。そして、日を改めて、光の家で作戦会議をする事になった。
皆が帰宅した。夜、楓は布団の上で一人、考えていた。
(職員室に、力を操る人がいる??職員室という事は、先生?どの先生?見方なのか?敵かもしれない??誰だろう)
『楓殿、感謝します。暫く、お世話になります』
楓の考えが中断される。楓の横で正座をする、正之助が話した。正之助は、お辞儀をした。楓は、頭を抱えた。
(光、何でだよー!)
皆が帰宅する前に、実は光とのやり取りが原因だった。
「正之助さんと、鈴子ちゃんの人探しを手伝って、2人共成仏させてあげないと。そうそう。うちに野良猫達が遊びに来るから、退屈しないでしょう。だから、鈴子ちゃんはうちに連れていくね。見えないけど、思考で会話出来るし。楓は、正之助さんを宜しく」
「え?!」
口を開けて驚く楓を置いて、光と皆は帰宅したのであった。
正之助は、そんな楓の悩みは知らず、職員室は何かと質問があった。楓が説明をした
そして楓は、先程から抱いていた疑問を、口にした。
「失礼だったら、すみませんと。正之助さんも、鈴子ちゃんも、思い残した事があるから、成仏出来ないんですよね?!鈴子ちゃんは、お母さんを探すこと。正之助さんの探し人は、どんな方ですか?」
正之助は、目を瞑り、暫く黙った。そしてゆっくりと目を開けて、話しだした。
『元蔵という男がいた。斬られて亡くなる直前に、お里に会いたいと、お願いされた。結婚し、子供も設けたと。だが、私も亡くなった。お里を探しているが見つからず、今に至る』
正之助は、自分が斬った相手のお願いを引き受けたのである。斬ったとはいえ、敵であろう。どんなに人が良いのかと、楓は考えていた。また、お里の特徴を正之助に告げずに、亡くなった様である。探すのも、苦難の道かと、楓は考えた。
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