第378話 話し合い

天界と聖域で同時に別の訓練をし、いつか、ひとつになった時にサーヤに名乗りたいという、おばあちゃん。


〖〖〖〖絶対バレる!〗〗〗〗

と、言い切る神様たちに、同意するその他一同。でも⋯


『でもぉ、相手はサーヤよぉ?案外大丈夫だったりしてぇ?』

そんな中、結葉様がのほほんと言う。


『た、たしかに?』

ゲンさんまで、そんな気がしてきた?


『あらあらまあまあ。皆さんの、サーヤに対する認識が伺えるわね?』

複雑な気持ちだわ~と言う、おばあちゃん⋯


〖まあ、とにかく、サーヤに隠すのは無理よ。特に魔法を覚えたいなら尚更ね〗

『ええ~』

ジーニ様たちに言われても、納得いかない様子のおばあちゃん。

どうしたらいいのか、大人たちが思案していると、思わぬところから思わぬ助けが!


『あっ、でも、サーヤに名前つけてもらった方が、強くなるんじゃないですか?』パンっ!

フゥがパンっと手を打って提案すると、

『そうだよな。おれたちだって手のひらサイズから、こんなにでかくなったし、他の人たちも強くなったもんな!』

クゥも賛成します。


『そうですよね。あ、でも、今までのことを思い返すと、くまのぬいぐるみだと思って名前付けられたら、モーモーさんたちみたいになるんじゃないですか?』

『あっ。うーちゃん、しーちゃんとかでいくと、クマさんですから!くーちゃん、まーちゃんとかでしょうか?』

『『ありえる(な)わね』』

フゥ、クゥ、山桜桃ちゃん、春陽くんがそんなことを言うと


『あらあらまあまあ?それはさすがに嫌ね~?くま子とか、くま美とか付けられそう⋯あ、それからぬいぐるみじゃなくて、かわいい編みぐるみよ』

真剣に悩むおばあちゃん。ちゃっかり、かわいいをつけて編みぐるみだと訂正するのも忘れない。


『ぶふっ。くま子、くま美』

吹き出すゲンさんと


〖クマだから、くま子にくま美⋯〗

〖たしかにそんな理由でその名前は〗

『嫌よねぇ~』

きゅるる『わたし、絹で良かった』ほっ

同情し始める女性陣。くま子決定?


『あらあらまあまあ、こんな状態でよくサーヤにかわいい名前がついたわねぇ』くすくす

楽しそうに笑うおばあちゃん。


『サーヤの名前は、おばあちゃんの言葉をヒントにおれたちが一緒に考えたんです。サーヤのいい思い出からつけようって話をして。な?』


『うん。それで、サーヤが「ほんとはね、おばあちゃん孫が出来たら「清」って漢字をつかって「さやか」ってつけたかったのよ。でも、あなたはのんびり屋さんでふわふわしてるから「和(のどか)」でも良かったかもねぇ」っておばあちゃんに言われたって教えてくれて』


『だから、おばあちゃんがつけたかった「さやか」を、異世界の名前じゃ危ないから、こちらの世界に合わせようって、サーヤにしたんです』

『けっきょく、まわりはサーヤたちがいた世界の名前だらけになりましたけどね~』

フゥと、クゥがサーヤの名前をつけた時のことを説明すると


『そう。そんなことを覚えていてくれたのね』

名前の由来を聞いて涙ぐむおばあちゃん。たぶん。ぬい⋯編みぐるみだから⋯


『あ、あの、勝手に名前をいじっちゃって、ごめんなさい』

『そのまま、さやかってつけてあげれば良かったですよね。ごめんなさい』

話し終えてから思い至ったフゥとクゥが慌てて謝ると


『いいえ。謝らないで。かわいい名前をありがとう。一生懸命あの子のために考えてくれたのが分かるわ』


『『でも』』

それでも申し訳なさそうにするフゥとクゥに、おばあちゃんは話しかける


『ふふ。あのね?私の「キヨ」って名前はカタカナという字で漢字ではないの。それがなんだか、子供の頃からおばあちゃんみたいな気がしてね?せめて「清」とか「聖」って漢字を使うか、カタカナでもせめてもう一文字足してくれれば良かったのに!って思ってたのね?キヨラとか、キヨカとか、響きがかわいいでしょ?』


『『え?』』

あ、あれ?なんだか違う方面に怒り始めた?

突然の変化に戸惑うフゥとクゥ。それから、周りの方たち

『キヨさん⋯』

溜息をつきながら首をふるゲン


『だから、子供には可愛い名前を付けたかったのに、生まれてきたのは男の子だったでしょ?あ、サーヤの父親ね』


『はい?』

『えっと?』

謎の盛り上がり方をみせるおばあちゃんに、おののくフゥとクゥ。と、周りの方たち

『はあ~あぁ』

頭を抱えるゲン


『それならって可愛い孫の名前たくさんたくさん考えてたのに!付けられなくて!』


『そ、それは』

『お気の毒に⋯』

この人、やばい!と思い始めたフゥと、クゥ。それから、周りの方たち

『ふぅ~』

諦めたゲン⋯


『だから、今度こそ絶対!サーヤみたいに可愛い名前が欲しいのよーっ!』ドッパーン!


『『は、はあ』』

あっけにとられるフゥとクゥ、それから、周りの方々


『あ~キヨさんの背中に打ちつける荒波が見える⋯』

ゲンには何かが見えているようだ


『決めた!やっぱり名乗るわ!可愛い孫のため!力を得るため!可愛い名前のため!』ドッパーンッ!


『あ~やっぱり、キヨさんだなぁ』

遠い目をするゲン⋯


〖最後のが、決め手だよね?〗

〖ええ。間違いないわねぇ〗

〖さすが、サーヤのおばあちゃん〗

〖そうですね〗

神様たちも悟りを開かれた!


『そうと決まれば、かわいい名前の候補を考えないと!何がいいかしら~♪〗

もうヤル気満々?のおばあちゃん


『いやいや』

『なんか違う?』

フゥとクゥが首を捻る。

でも、結果的にフゥとクゥの提案で問題はひとつ解決された!


〖ま、まあ、とにかく、無事に?目覚めてくれてよかったよ〗

〖そ、そうね、そうよね〗

〖それでは、おばあさんはこのまましばらく、本当にこのままで?〗

〖いいのですか?それで〗

立ち直った神様たち、話を真面目路線に修正します。


『あらあらまあまあ、おほほほ。そうね。しばらくはこのままでお願いできるかしら?』

おばあちゃん、今頃取り繕っても⋯


〖魔神ちゃん、目覚めたきっかけは、サーヤがくまのぬいぐる『編みぐるみ!』編みぐるみの中の石に魔力を送ったことで間違いないんだね?〗

〖そうね。間違いないわ〗

〖だったら、サーヤに、しばらく魔力を送り続けてもらった方がいいかもしれないね。ふたつの繋がりが途切れてもいけないだろうから〗

〖そうね。目覚めはしたから大丈夫だと思うけど、何しろ初めてのことだから、念には念を入れた方がいいわね〗

夫婦で仲良く真剣なお話です。


〖いつもこうならいいですのに〗

〖本当ですね。バートの苦労も減るでしょうに〗

シア様たち、容赦ないおことば⋯


『わがまま言ってごめんなさいね。でも、力をつけるならその方がいいかと思って』

おばあちゃんも、真剣に


〖だけどね、あまり長い時間はおすすめ出来ないよ〗

〖そうね。元に戻れなくなるかもという可能性も考えないと〗

〖たしかに、双方の自我が別になってしまったら大変ですね〗

〖下手をしたら、消滅してしまうかもしれないですし〗

神様たちはあらゆる可能性を考えると、あまり時間はかけられないという。


『分かりました。今度こそ、サーヤを守りたいのです。皆様、お力をお貸しください。お願い致します』

おばあちゃんの雰囲気が変わりました。


〖もちろんです。こちらこそ、辛い思いをさせてしまい申し訳ない。おばあさんも、そして、ゲンさんにも〗

〖私たちもできる限りのことをするわ〗

〖お約束いたします〗

〖もちろん、私たち以外の神たちもです〗

神様たちも、姿勢を正す。


『ありがとうございます』

『ありがとう』


『あらぁ。忘れちゃ困るわぁ?私たちだっているんだからねぇ?』

『はい!』

『その通りです!』

結葉様とフゥとクゥの言葉に、みんなも頷いている。


『皆さん、ありがとうございます。これからよろしくお願い致します』


みんなの決意も新たに、聖域にサーヤのおばあちゃん(くまの編みぐるみ)が仲間に加わりました。


『あらあらまあまあ、「かわいい」を忘れないでね』

『キヨさん⋯』


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございますm(*_ _)m

おばあちゃん、かなり愉快になってしまったような?

『あらあらまあまあ、皆さん、これからよろしくお願いしますね』

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