第377話 おばあちゃんの計画?

慌ただしい足音と共に、部屋に飛び込んできたのは、ゲンだった。

後ろからはドワーフ達が続く。親方たちもいる。

どうやらドワーフロードを使って迎えに行ってくれたらしい。


『⋯⋯』ゼェゼェ


肩で息をするゲン。

『キヨさん』とは、サーヤのおばあちゃんのことね。名前以外何も言えず黙り込んじゃったわ。無理もないわよね。と、思っていると


『あらあらまあまあ、ゲンさん、お久しぶり。まあまあ、しばらく見ないうちに若返っちゃってぇ。羨ましいわぁ』


ずるっ

さすが、サーヤのおばあちゃん⋯

みんな滑ってしまったわね。


『キ、キヨさん』

『はい?』

『キヨさんは、また、随分とまた、つるぺたなもんに⋯』

シュパッ!くるくるっ!ドカーンッ

『ぐわあっ』


〖え?〗

え?飛び蹴り?


『あらあらまあまあ、この編みぐるみは仮の姿なのよ。それにかわいいでしょ?』

『そ、そうだな。それで、なんでこんな姿に?』

シュパッ!ゲシッ!ドカンっ!

『ぐはっ』


〖ええ?〗

ま、回し蹴り?


『かわいいでしょ?』

『あ、ああ。そうだな。それで、なんでこんな可愛い姿に?』

頭を擦りながらゲンが聞く。


そうよ、なぜその姿?それに

〖なぜ、サーヤには黙っているの?〗


みんなの視線がおばあちゃんに集中する。


『あらあらまあまあ、大注目?それがね?私にもよく分からないのだけどね?あの日の前日、突然、お守りにしていた勾玉が割れたのよ』

あの日とは、サーヤたちが襲われた?


『あの日⋯』

『そう、あの日の前日。お茶飲んでたらね?突然、ぱかっと真っ二つに。しかもね?飲もうとしてた水出しの緑茶に落ちちゃって~』はぁ~ぁ


『は?』

〖え?まさか〗

お茶に落ちたって⋯

〖〖もしかして?〗〗


『飲んじゃったのぉ?』

結葉⋯そんな直球で


『そうなのよぉ。もうビックリよね~うふふふ』

あっ、認めちゃうのね


『飲み込んじまったのかよ⋯』

『そうなのよぉ』

バシバシバシバシ!

『いててっ』

いつの間にかゲンの頭に張り付いていたおばあちゃん。ゲンの頭をバシバシ叩いてるけど、さっきから、けっこう激しいわね⋯


『でも、もう片割れは飲む前に気づいてね?どういう訳か、この子に入れなきゃいけない気がしてね?』

自分?のお腹をぽんぽんしながら言う。

『それで、この子に入れといたら』

〖なぜか、魂が半分ずつになっちゃったと⋯〗

『そうみたいなのよぉ』

バシバシバシっ

『いててっ』


はぁ⋯でもそれで、

〖どおりで、目覚めないわけよね〗

納得いったわ~


『あっ、多分向こうも目覚めたと思うわよ?なんだか、そんな感じがするの』

やっぱり。と、言うことは⋯


『ちょっと待ってぇ?向こうってぇ?』

結葉⋯ほんとに直球ね


〖実はね、おばあちゃんが亡くなった時、日本の神様がね、異世界の神の気配に気づいてくれてね?〗

『異世界の神⋯』

みんなの顔が険しくなった


〖亡くなった時の状況や、それまでの経緯を調べてくれてね?これはおかしいと、それに、こんな澄んだ魂をこのままにしてはいけないと、魂と体を神界に引き上げてくれて、うちの主神に連絡をくれたのよ。それで、引き取ってうちの神殿で目覚めてくれるのを待っていたのだけど、まったく目覚める気配がなくてね。それがようやく⋯〗


『そうだったのぉ』

『あ、では、それで割れた石から魔力が靄のように見えたのですわね』

『なるほどにゃ。天界のおばあちゃんの石に流れてたのにゃね』

そう。さっきアイナが見たサーヤの魔力は天界に流れていたんでしょうね。


〖恐らくね。本当に、サーヤのおばあちゃんに気づいてくれた日本の神様には感謝だわ。本当にうちの主神とは、大違いの出来た神様よね〗

〖お母様ったら、お父様が泣きますわよ〗

〖いいのよ、泣かせとけば〗

ふんっ


〖ひどいよぉ、魔神ちゃん⋯〗しくしく


〖だから、泣かせとけば⋯って?主神!?〗

〖お父様!?〗

〖なぜ、バートではなくあなたが来るのですか?〗


〖医神までひどい!?しくしくしくしく〗


まさかの主神様降臨!?


『あらぁ、主神様また来ちゃったのぉ?』

〖ええ?こっちもひどい!?〗ガーンっ

結葉様まで!イル様不憫!


『あ、あれが主神様なのか?』

『な、なんだかイメージが⋯』

主神の姿に驚くドワーフたちに、アルコン様が

『そうか、ドワーフたちはまだお会いしたことなかったな?あのお方が主神イリューシア様だ』

『『あの方が⋯』』

ドワーフたちの目線の先には


〖魔神ちゃんも、シアもひどいよぉ。連絡くらいくれてもいいじゃないさ~〗

〖主神うるさい〗

〖お父様、今はそれどころでは⋯〗

泣きつく主神様の姿が⋯でも、本題を思い出せば


〖そうだったね。天界でずっと眠っていたあの人が、突然起きたから、きっとこちらで何かをやらかしたんだろうと思って、確認をしに来たんだよ〗

ちゃんとシャキッとできるのである。


〖やらかしは決定なのね?〗

〖違うのかい?〗

〖違わないわ⋯〗

〖違わないですね⋯〗

〖ほらぁ~〗

さすが仲良し家族⋯


『息ぴったしじゃないか』

『やっぱり神様でも』

『家族は家族なんだな』

『ちょっと安心するね』

『まあ、主神様は』

『意外だったけどねぇ』

ドワーフさんたち、下手したら不敬になりますよ?大丈夫だけど


『あらあらまあまあ、やっぱり、もう一人の私も目覚めたのねぇ』

おばあちゃん、のんき⋯


〖え?サーヤのおばあちゃん?〗

『はい。そうですよ。孫が大変お世話になりまして。その上、この度は私まで。ありがとうございます』

お辞儀しながらお礼を言うくまのぬいぐるみのおばあちゃん。

〖いえいえ。こちらこそ、なんとお詫びを申したら良いか⋯それにサーヤをいい子に育てて頂いて、なんとお礼を申したら良いか、ありがとうございます〗

『いえいえ。こちらこそ』

〖いえいえ。そんな〗

『いえいえ』

〖いえいえ〗


スパーン!!


〖痛~い。何するの魔神ちゃん~〗うるうる

〖うるさい。話が進まないでしょう!〗

〖ううぅ。ごめんよ~〗

『あらあらまあまあ』

どこまでも、おばあちゃんはマイペース


『どこの家も女が強いんだな』

『『そうだな』』

『『『なんだい?』』』

『『『なんでもない』』』

ドワーフさんたちも、仲良し家族だね。


『あ、あの、それで?キヨさん、サーヤにはまだ言わないって言うのは?』

ゲンがちっとも進まない話に、業を煮やして、突っ込んだ。すると、答えてくれたのは


〖ああ。そうだったね〗

主神イル様。


〖実はね、天界のおばあちゃんが、目覚めて直ぐに言うんだよ。天界と地上で、別々に修行すれば一石二鳥だから、天界で武神から体術や剣術を、聖域で魔神ちゃんに魔法を習いたいって〗


『ええ。時間が惜しいですから。いつか、私が天界の体に戻るまで、それまでサーヤには正体を隠した方がいいかと思って。くまのあみぐるみがおばあちゃんだなんて、サーヤが混乱しちゃうでしょ?いくらこの姿が可愛いくて、愛らしいからって』


おばあちゃんは、自分たちがひとつになった時に正体を明かしたいようだけど⋯


〖無理じゃないかしら?〗

〖でしょ?やっぱり無理だと思うよね?〗

〖思いますね〗

〖私も思います〗

神様全員、無理宣言。


『あら、何故かしら?』

首を傾げるくまのぬいぐ⋯『編みぐるみよ』編みぐるみのおばあちゃん。


〖だって、魔法の練習、時間が惜しいってことは昼間やるでしょ?〗

『そうね』

〖そうしたら、嫌でもサーヤに動いてる姿、見られるでしょ?〗

『そこは隠れて?』


『いやいや、無理だろ』

ゲンからも突っ込みが


『え~?』

〖え~?ではなくて、そうなれば、間違いなく、ばれるわよ〗

『え~?くまのぬいぐるみだし、喋らなければ分からないでしょ?』

どこまでも、のんきなおばあちゃん。


〖〖〖〖いやいやいやいや〗〗〗〗

神様全否定!!


『絶対バレるわ!』

ゲンから更に突っ込み。


『逆になんでバレないと思うのか』

『不思議だわねぇ』

『『これだけそっくりなのに』』

アルコン様、結葉様の言葉に一同、うんうんと、頷く。


『え~?みんなひどいわ』


〖〖〖〖ひどくない〗〗〗〗

神様全員、キッパリ!


『え~』


『やっぱりサーヤの祖母殿だの』

『ほんにのぉ』

じぃじたちの言葉に、全員


うんうん。


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございますm(*_ _)m

おかしいな~おばあちゃん、もっとお淑やかな予定だったのにな?勝手に暴走していく~

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