第376話 くまのぬいぐるみ⋯?

サーヤたちの寝室。子どもたちは夢の中⋯


「まっちぇ~みじゅまんじゅう⋯」むにゃむにゃ

『まだだよ~⋯』むにゃむにゃ

『水まんじゅうの前~⋯』むにゃむにゃ

『『『すいすいくず~⋯』』』むにゃむにゃ

『まてまて~⋯』むにゃむにゃ

ぴゅいきゅい『『にげないで~⋯』』むにゃむにゃ


そのサーヤの傍らで、私を見る、くまのぬいぐるみ⋯

私の体を見て、自分の体を見てガックリって⋯


下を向いてプルプルと震える、くまのぬいぐるみ⋯

が、突然、ビシィッと私を指さして


『ぼん・きゅっ・ぼん!の、うらやまけしからんボディ!女の敵ぃ!』

と、片手を腰にあて、仁王立ちで叫んでいる。気がする⋯


だって声は出てないもの。念話でもないもの。

ただただ呆然としていると


はっ!

と、何かに気がついたらしい、くまのぬいぐるみ⋯

くるっと背を向けて身繕い?をしている?

そして、こちらを向いて、


『あらあらまあまあ、私ったら嫌だわ。ほほほほ』

と、言っている。気がする⋯


そして、正座をして姿勢を正し、三つ指をついて(ゲンに教えてもらったのよ)、すっと流れるような所作でおじぎをする、くまのぬいぐるみ⋯


思わず、つられてお辞儀をすると、


今度はベッドから降りてこちらに来ようとしている。らしい。

なぜなら、ベッドの高さに尻込みしたようで、ベッドに腹ばいになり、ズルズルと足からおりようとしているのだが、それでも足が届かず、シーツに捕まりバタバタしているから⋯って、落ちる!

あまりのことに呆然として、気づくのが遅れてしまった。慌てて魔法で受け止める。


落下が止まったことに気づかず、しばらく空中でバタバタしていた、くまのぬいぐるみ⋯

落ちないと分かったらしく、きょろきょろしたあと、恥ずかしそうに地面に足をつけ、

『あらあらまあまあ、おほほ』

と、またもやごまかす、くまのぬいぐるみ⋯


こちらにとてとて歩いてきて、ぺこり。と、改めてお辞儀をする、くまのぬいぐるみ⋯

またまたつられてみんなでお辞儀を返してしまった。


それから、くまのぬいぐるみは、口に指を当て、

『しーっ』

と、言っている。気がする⋯


そして、

『あらあらまあまあ、ここではなんですから、外でお話しましょう』

と、言っている気がする⋯


そして、おもむろにぽてぽてと、歩き始める、くまのぬいぐるみ⋯

みんなが後に続いて歩き出したとたんに、ピタッと止まって振り返り


『てへっ』

と、笑ってごまかす、くまのぬいぐるみ⋯

どうやら、迷子らしい。


『えっとぉ?どこへ行くかもわからず、とりあえず歩いたってことかしらぁ?』

立ち直りの早い結葉がたずねると


『あらあらまあまあ、いえね、つい?申し訳ないわぁ』

と、両手で顔を隠して、体をくねくねさせながら言っている。気がする⋯


『とりあえずぅ、抱っこさせてもらうわねぇ。歩くより速いだろうしぃ』

結葉、そういう順応力が高いところは、尊敬するわ。

くまのぬいぐるみの方も、


『あらあらまあまあ、ありがとうございます。お世話になります』

と、お辞儀をしてから、バンザイのポーズで

『さあ、抱っこどうぞ。お好きになさって』

と、結葉に抱っこアピールをしている。


『それじゃあ、行きましょうかぁ』

と、抱っこする結葉。


抱っこされたくまのぬいぐるみは、近くなった結葉の胸を凝視⋯見つめてから、丸い手でその胸をぽふぽふと叩いて、


『はぁ~この世界は女の敵が溢れてるのねぇ』

と、自分の胸を見ながらため息をついている。

いやいや、くまだし、ぬいぐるみだし、今そもそも、胸ないし⋯

もう、この反応は間違いないわね⋯


再び、リビングに戻ってきた私たち。

『はい。到着よぉ』

結葉がサーヤの椅子にくまのぬいぐるみを座らせると


『あらあらまあまあ、この歳になってまたこういう椅子にお世話になるとは思わなかったわぁ』

と、言っている。気がする⋯


もう、いいわ。気にしたら負けだわ。


〖初めまして。くまのぬいぐるみさん。いえ⋯あなたは、サーヤのおばあちゃん、よね?〗


くまのぬいぐるみを、真っ直ぐ見つめて尋ねると


『あらあらまあまあ?なんで分かっちゃったのかしら?』

片手を頬に当て、こてっと首を傾げるくまのぬいぐるみに、みんなが一斉に


ずるっと滑った


〖分かるでしょ!〗

あれだけサーヤと同じことしてて?


『あらあらまあまあ、おかしいわね?』

と、本気で不思議そうな、くまのぬいぐるみ改め、おばあちゃん。


『さすが、サーヤの祖母殿だの』

『そっくりじゃのぉ』

『『言動が』』

じぃコンビの言葉にみんなが、うんうんと頷く。


〖と、とりあえず、なぜか言ってることは分かるけど、一応、念話できるように、するわね〗パチンッ

細かい話が必要になるかもしれないしね。


『あの子にサーヤと名付けてくれたのね。孫がお世話になっております。サーヤの祖母でございます』

なんで分かったのかしらぁ?と、いまだに不思議そうなおばあちゃん。いやいや、分かるでしょ。


〖いいえ。お世話なんて。私たちこそ楽しませてもらってるわ。それより、この世界の神を代表して、お詫びさせて。私は魔神ジーニ。私たちの問題に巻き込んでしまって申し訳ありません。サーヤを助けてくれたのに、あなたの命まで⋯ほんとに、どうお詫びしたらよいか⋯〗

私の後ろでシアと医神も頭を下げる。


サーヤのために文字通り命をかけてくれた、おばあちゃんと、ゲン。本当に感謝してもしきれないし、お詫びの仕方も分からないわ⋯


『⋯皆さん、お顔をあげてくださいな。私はサーヤの祖母として当然のことをしただけ。ゲンさんには大変申し訳ないことをしてしまったけれど⋯。でも、今、サーヤが毎日笑って元気に暮らしているのは、あなた方のおかげです。ありがとうございます』


サーヤのおばあちゃんは、まるで気にしてないと言わんばかりに、優しく微笑んでいる。気がする⋯

何せ、姿はくまのぬいぐるみだから。


〖あなたは、とても強いのね。恨み言の一つや二つ、言われても仕方ないと思っていたのに〗

むしろ感謝してくれるなんて


『だって、あなた方のせいではないでしょう?悪いのは落ちた神⋯さすがにその方は許すつもりはないですけれど、あなた方には感謝しかないわ』

なんて、優しい人なんだろう。この人がサーヤのおばあちゃんであることに改めて感謝するわ。


〖ありがとう。あなたがサーヤのおばあちゃんで、良かったわ。本当に良かった〗

我慢していた涙が溢れてくる。


『泣かないで下さいな。これからは私もお世話になりますし、ただ、サーヤにはしばらく黙っていて欲しいの。私がここにいることを』


え?これにはみんなが驚いた。

〖あの、なぜか聞いても?〗


『それはね?』


バタバタバタバタ!バーンッ


その時、おばあちゃんの言葉を遮るように


『キヨさん!』


と、ゲンが部屋に飛び込んできた。


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございますm(*_ _)m

サーヤのおばあちゃん登場です。皆さんの想像通りでしたか?

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