第379話 主神様と、ジーニ様

おばあちゃんは、しばらくの間、くまの編みぐるみの姿で過ごすことになりました。


『あらあらまあまあ、かわいいくまの編みぐるみでしょ?』


『はぁぁ⋯相変わらず、キヨさんはとんでもねぇなぁ。まさか、勾玉飲み込んでたとは、ありえねぇ。あっ!そういや、主神様、日本の神様には?』

たしか、協力を頼むとかいう話だったよな?


〖あ~うん。天界の方でも話を聞いてね。慌ててご報告に上がったよ。石の捜索に関しては打ち切るけど、引き続き警戒はしてくれるそうだよ。また、ヤツに召喚などされないようにね〗

『そうか⋯なんか、悪いことしたな』

色んな神様を巻き込んでしまったな⋯


〖そんなことないよ。あっそれからね?その石の探索の時に、他に見つけてくださった物があってね?特別に届けてくださった物があるんだよ。はい。どうぞ〗

そう言って主神がゲンに渡したのは


『これ、俺の刀?』

ゲンは驚きつつ、手に取って、それを確かめる。友でもあり、師匠でもある刀匠が、自分のために打ってくれた刀。


〖うん。君のお友達、いい人だね。刀匠って言うんだっけ?君の刀、勇気ある友人のものだから、と言って、神社に奉納してくれていたんだよ〗

『師匠が⋯』

ゲンの目に光るものが⋯


〖更にね?〗

『ん?』


慈愛に満ちた目で話しかけてくれていた主神の目が、急に遠くを見て


〖ゲンさん、君、やらかしすぎ〗ふぅ~

『は?』

なんの事だ?


〖そのお友達に習った技術、包丁とか農機具にまで使ってたんだって?〗じとー


そんなジト目で言われても

『あ、ああ。作れるものはな?見よう見まねで作ってたぞ』


〖いや、見よう見まねって⋯あのね?あまりに素晴らしい出来で、廃棄するのも忍びなかったらしくてね?包丁は料理の神様へ、農機具は豊穣の神様へ、やっぱり寄贈なり奉納なりしてくれててね?律儀だよね~お友達。ハハハ〗

いやぁ、なかなかできる事じゃないよね~。うんうん。と、一人納得してる主神様。


『お、おぉ』

そんなことになってたのか


〖日本の神様もいたく感心されていてね?そのお友達にも、ゲンさんにも〗

うんうん。どこの世界も神様を敬ってくれるってありがたいよね~。主神様がもう、ひとりの世界に⋯


『そ、そうなのか?』

それで、それが?


〖それでね?今回は特別ですよって、皆さん、加護をつけて下さった上で、ゲンさんにって。はい。どうぞ。あっ、もちろんさっきの刀も加護付きだよ。良かったね~。日本の神様と、僕たちの加護両方付くんなんて。ふふ、ふふ、ふふふふ〗


『はい?』

なんだって?


〖ふふ、ふふふふ〗

しゅ、主神様?大丈夫か?


〖あ~主神、壊れたわね〗

〖お母様、今回ばかりは無理もないかと〗

〖規格外ですね。さすが師匠です。素晴らしい〗

ジーニ様たち、そこまで言わなくても


『まあまあ、流石ねぇ。私のハサミと包丁も打ってくださったあの方よね?私の包丁も欲しかったわぁ』

キヨさん、のんきだなぁ。


『何を言うか。二つの世界の加護を貰った武器だぞ?』

『ありえないよな』

『のんきはお前だ』

ドワーフの親方たちがひどい⋯


〖ひどくないよぉ。ふふふ。ゲンさんの方がひどいよ~ふふふふ〗

スパーンッ

〖主神!しっかりしなさい!〗

〖いた~い。ひどいよぉ、魔神ちゃん〗

〖結局こうなるのですね〗

〖いつものことですね〗

なんか、悪いな主神様


『と、とにかく有難く使わせてもらうよ。親方たちと打ったのと合わせて使うよ』

〖うん。それがいいかな~。だってそれ、神剣になっちゃったからね~。ふふふふ〗


あっ、まだ完全復活してなかったんだな。⋯んん?なんて言った?

『神剣?』


〖そうだよ~。だって、日本て神様多いよね~?八百万の神だっけ?僕たちの加護いらなかったかも?ふふふふ〗


あ~神様、たくさんいるな~

『あらあらまあまあ、そう言えば、源さんの趣味、神社巡りだったわね~。もしかして、それも関係あるんじゃないかしら?』

『そうかな?あ、それから今は、元気の元なんだよ。サーヤがつけてくれたんだ』

『あら、そうなのね?三つ子の魂百までとは、よく言ったものね~』

くすくす笑うキヨさん

『ほんとだよなぁ。くくっ』

一緒になって笑う。


〖そうなんだよ~。ただ巡るだけじゃなくて、ちゃんとお神酒?とか、供えてくれてたんでしょ?小さい神社とかも丁寧に。今どき、そんな人珍しいって皆さん感謝してらしたよ。皆さん新しい人生を楽しんでって仰っていたよ〗

にっこりと主神様がお話してくれる。それは、

『ありがたいな。大切に使わせてもらうよ』

〖うん。そうして〗

そうするよ


〖さあ、それじゃあ、そろそろサーヤの顔を見てから帰ろうかな〗

『え?もうか?』

まだ来たばかりじゃないか。


〖残念だけどね。帰らないとバートに叱られるしね。ほんとにほんとに残念だけどね〗だばー


主神様、涙が滝のようだぞ。

『そ、そうか。じゃあ、せめてこれ持って帰ってくれよ。ストックしといた飯と、デザート』

〖わあ、いいのかい?ありがとう。みんなで頂くよ〗

そ、そんなに嬉しそうにされると⋯

『あっ、キヨさん目が覚めたなら、食材渡したらキヨさん、作れるよな?こっちのキヨさんは無理そうだけど』

キヨさんも自分の丸い手を見て俯いている。キヨさん料理好きだからなぁ。その分、天界のキヨさんが頑張るだろ?


『ゲン、包丁と羽釜も渡してやったらどうだ?俺たちはまた作りゃいいからな』

親方、さすが気が利くな。

『ああ。そうだな。一緒に持って行ってくれ』

〖いいのかい?ありがとう。ちゃんと渡すからね〗

『おう!』

にっこり笑う主神様にニカッと笑って応える。


〖それじゃ、今度こそかわいいサーヤの可愛い寝顔を見て帰ろうかな〗

みんなでサーヤの寝顔を見に行くと、


『なあ、なんでサーヤの顔には誰かしらはっついてるんだろな?』

サーヤの鼻をまたぐように姫が顔面にはっついて寝ていた。


〖なんでだろうね?くすくす〗

『おかしいですわねぇ?ちゃんとベッドを用意しましたのに』

『不思議にゃね~』

きゅるる『もどす』

絹さんが顔から姫を剥がすと、サーヤが

「ぷへっ」

と、声を出した。起きてはないみたいだが、ぷへって⋯苦しかったなら剥がしゃいいのに。


〖ぷっ。くすくす。かわいい声も聞けたことだし、帰るね〗


『主神様、サーヤは一度寝たらあさまでおきないから、撫でても大丈夫よ』

すぐに帰ろうとする主神様にキヨさんが声をかける。せっかく来たのに一瞬寝顔を見ただけじゃ気の毒すぎるもんな。バートさんもこの位なら許してくれるだろ。


〖そう?それじゃ、少しだけ。ふふ。サーヤ、またね。今度は起きてる時に来るからね〗なでなで

「ふにゅ~」

〖ふふ⋯〗なでなで

愛おしそうに顔に張り付いた髪を払うように、優しく撫でる主神様。


〖さあ、行こうかな〗

主神様がいよいよ帰ると言うので、合わせて

『俺達も一度帰らないとな。作業中だった』

『おう。そうだな』

俺達も一度ドワーフたちのところに戻らないとな。


寝室からそっと出て、

〖それじゃ、みんなサーヤをよろしく。あっ、医神は、もう少し残ってハクを見てあげて。戻って来るつもりだったでしょ?〗


エル様が一瞬驚いた顔をしたけど直ぐに戻った。

さすが、おちゃらけてるようでも主神なんだな。お見通しってことか。


〖かしこまりました。では、まだしばらく、こちらに〗

〖うん。そうしてあげて。魔神ちゃんもシアも頼んだよ〗

〖分かってるわよ〗

〖かしこまりました〗

少し寂しそうな主神様に、ジーニ様が


チュッ


頬にキスをした。


〖あ~。なんやかんや仲良いんだから〗

〖いつものことですよ〗

おいおい。シア様とエル様には慣れた光景のようだけどな?


『ひゃ~』

『び、びっくりした』

『『⋯⋯っっ』』

フゥやクゥたちには刺激が強いだろ。山桜桃達なんか声も出せずに真っ赤になっちまったぞ。


〖まあ、今回は素早く動いてくれたみたいだからね。ご褒美よ〗


ジーニ様が主神様の両肩に手を置きながら言う。おいおい。他でやってくれ。目のやり場に困るだろ。特に山桜桃たちが⋯


〖早く帰ってきて欲しいけど、今のでちょっと補充できたから良しとしようかな?〗

〖そうしてちょうだい〗

チュッ


バタンっ

あ~あ。山桜桃と春陽が倒れたぞ。フゥとクゥも、固まってるな。かわいそうに⋯


『はいはい。そこまでよぉ。これ以上は子供の教育によくないわよぉ』

きゅるる『そもそも、よくこれだけの人前で⋯』

すごいな、さすが、結葉様と絹さん。よく突っ込めたな。


〖あら、ごめんね?〗

くすくす笑うジーニ様。

〖すまないね。それじゃ、今度こそ行くね。みんな、体に気をつけて〗

キラキラキラキラ


それだけ言って、主神様は天界に帰って行った。

倒れた山桜桃たちをそのままに⋯


『あらあらまあまあ、固まっちゃったわね。これだから女の敵は⋯』つんつん

『キヨさん⋯』


どうすんだよ。この状況⋯


☆。.:*・゜☆。.:*・゜

お読みいただきありがとうございますm(*_ _)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る