モブな俺でも恋はしたいし、彼女も欲しい
◆
我が生涯に一片の悔いなし。
思わずそう零したくなるような、1人の男として味わうその感触を感じつつ、薄れいく意識の中で、思った。
そう、あの日だ。
あの日から、
俺は、
血の繋がりがある実の姉妹2人から、過剰とも呼べる親愛?の情を態度で示されるようになった。
普段は決して表層には出さない、出せない。
いやだって、そんなこと言おうものなら、いまの桃華姉ちゃんも、柚子も。
きっと、俺に『1人の女の子』としての顔しか見せなくなる。
そんな確信が不思議とあったからに他ならない。
全く、とんでもない面倒事を巻き起こしてくれたものだ。
あの日、彼女からの、その言葉は。
俺が普通だと思い込んでいた、俺たち姉兄妹(きょうだい)の関係性を壊し、本来あってはならない、けれども、俺たち家族からはあるべき形へと変貌させるきっかけとなった。
そう、事態の発露は今から凡そ2ヶ月前に遡る。
第一話
モブな俺でも恋はしたいし、彼女も欲しい
令和3年5月中旬。
俺は、朝方陽平。
今年から、都内某所にある私立渡良瀬川高校に通う高校一年生だ。
この学校は、世田谷区内某所にあるそこそこ名の知れた進学校なんだが、進学校の割に校則は緩めで、芸能活動やマンガ、ラノベといった創作活動にも理解があり、自由な校風が特徴である人気校だ。そんな学校であるから、芸能活動をしているけど学生らしく勉学等に励み、二度こない、ただ一度きりの高校生生活を楽しみたい、そういう生徒の需要を見事に鷲掴みしていた。
つまり、この学校には芸能人事務所所属の芸能人等に代表される所謂有名人がそれなりにいたりするわけだ。
そんな学校にこの春から妹と共に通い始めた俺。ん?なんで妹と一緒?双子だとか?残念、ハズレ、不正解だ。
妹の柚子は年子なんだ。だから、妹だけど、同級生。
分かりやすくいうと、、、だ。
親が俺の産まれた後間もなく励みまくった結果、出来ちゃいました〜。テヘペロ的なやつだ。全くなんてうらやまけしからん。いや、俺はかつての両親の淫行に、、、いやいや、自分も創り出した生命の神秘に対して淫行呼ばわりはさすがにーーーーいや、うちの万年発情期夫婦にはやっぱ淫行呼ばわりで十分だわ。
全く、毎日、毎日、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日まいにちまいにちまいにちまいにちっ!
「くわぁーーーーーーッッッ!!!」
「ひゃんっ!?」
、、、、あれ?
いつの間にか俺は、登校の只中にありながらも思考の坩堝へ埋没し、あまつさえ、我が両親により毎日見せつけられる、思春期男子には目の毒にしかならないイチャイチャ夫婦愛は、、、く、く、くっっ!
「もうっ!お兄ちゃんってばっ!?聞いてるっ!?」
毎朝聴こえてくる、麗しい小鳥の囀りみたいに可憐な声が、俺の鼓膜を甘美に奮わせると同時に右耳に激痛が走った。
「いたい、いたいっ!ちょ、まて、柚子っ!?み、右耳が千切れるっ!?」
「こんな程度じゃ、ち、ぎ、れ、な、いっ!大体、あたしの話をちゃんと聞いてない、お兄ちゃんが悪いんじゃないっ!?その割に急に『くわぁーっ!』って奇声上げるし?周りの人達と違ってドン引きしてないだけ、可愛い妹の柚子ちゃんに感謝くらいして欲しいんだけど?」
「あー、、、。」
柚子からの指摘に、未だ右耳を引っ張られる姿を晒しつつ周囲を鑑みる。
、、、、、、、。
ママー、あのお兄ちゃん、変っ!
シッ、見ちゃいけませんっっ!?
他にも同じ学校を目指す数多の同級生、諸先輩方、通勤途中のサラリーマンから、通園途中の子連れの若奥様(←ここ重要、テスト出るぞ!)とか、エトセトラ、エトセトラ。
そんな方々から絶賛冷たい眼差しを向けられている、俺。やだ、キュンキュンしちゃうからっ!
「アダッ!ィダダダダッッ!?ゆ、柚子ちゃん様、後生ですから許してつかーさい。はー、神さま、仏様、高校一年生で奇跡のGカップを誇る巨乳美少女の柚子さ、、、いぢぢだだただだあ゛ッッッッッ!?」
悪ふざけな思考をしてたら、更にオレイヤーがギュウッと捻られた。痛くてたまらんよ、麗しのマイシスター柚子よ。そろそろお兄ちゃんを許して欲しい。昼と放課後にダッツ奢るからっ!
「ほんとっ!?し、仕方ない。お兄ちゃんも?反省してるようだし?ゆ、許してあげる♡」
「、、、妹よ。なんで口に出していないことがいつも分かるんですかね?」
「そんなの、お兄ちゃんの妹なんだから、もはや、阿吽のなんたら、よっ!」
そうして、ようやく俺の可愛い可愛い右耳を解放してくれた我が妹様は、先程も俺が述べた奇跡のGカップおっぱい(当然衣服着用済)を高らかに誇らしく張り、えっへん!と言わんばかりに鼻息荒くムフーッと会心の笑みを浮かべた。うん、我が妹ながら、毎日観てるけど姉同様に絵になる。
ちなみに妹よ。こういう場合には、阿吽の呼吸は適さないぞっと。
「オッス、陽平、ユズ!朝からいつもの兄妹漫才か?」
「おっ!?はよ!哲太!」
「あ、おはよ!てっちゃん!」
爽やかな笑顔で俺たち兄妹に話しかけてきたこの男は、俺たちの幼馴染、坂田哲太という。見た目、ガタイがいかつい、典型的な脳筋系の体育会系男子。なのだが!
哲太くん、おはよー♡
哲太くん、今日もカッコいいねっ♪
哲太!ほ、放課後、柔道場裏で、ま、待ってるからなっ!?ぜ、絶対にこいよっ?
哲太くん、抱いてー♡♡♡
とか。
まあ、コイツ、腹立つことにモテるんだ。脳筋のクセにっ!顔か?やっぱり顔なのかっっ!?いかにもいかついゴツい体付きなのに、頭部を占めるソレが、イケ面、いやイケメンなら、世の中の女はそれでいいのかっ!?納得いかんっっっ!!!
ケッ!
「お兄ちゃん、、、。またやさぐれてるしw」
周囲の先輩女子を含む、哲太ラヴな女生徒達からのきゃいきゃいした黄色い声に包まれている(爆発しろっ)な哲太にはギリ届かない声音で呟く柚子は、どこか面白くなさげだ。やっぱり、、、片想い相手がモテるのは、いくら阿吽の呼吸すら体得済みの幼馴染ヒロインちゃんと言えども焦りを覚えるのだろうか?
(、、、お兄ちゃん、どうせまた、検討ハズレなこと考えてるんだろうなぁ、、、。)
ここは一発優しい兄貴らしいところをアピールしておくとしますか。
柚子と哲太。多分、俺が思うに、相思相愛な2人が、やがて結ばれるであろう未来を幻想すると、なんとも言えない喪失感に苛まれる。コレはなんだろうな?昔からそうなんだ。姉の桃華や妹の柚子が他の男子と仲良く楽しげにしていると胸がズキンと痛む。けれど、どんなに思考の海に沈んでも、彷徨っても答えが出ないまま、今に至る。
まさか、実の姉妹に性的な劣情や恋慕しているわけでもあるまいし、あり得んっ!馬鹿馬鹿しいっ!やめだやめっ!
絡みつく負の思考を振り払い、努めて明るく振る舞って、哲太の右肩に腕を回す。
「あー、哲太君。今日も大変モテモテで羨ましいっ!!俺にも1人くらいしょうかい、、、。」
顔を上げる。
そこには先程までの女子たちは1人も居なかった。
俺の心に何故か季節外れの木枯らしが吹いた気がした。くすん、わかっていた事でも、俺は悲しい。いくら俺が、絶世のブチャイク面だとしても音も立てずに逃げるとか酷くね?俺は悲しい。とても悲しい。誰か1人くらい俺にも可愛い女の子を分け与えて欲しい。
あ゛ーっ。こんな俺だけど、恋愛したいし、彼女ー、、、身も蓋もなくぶっちゃければ可愛い巨乳の美少女とセックスしたい。
だって、俺も性欲漲る立派な思春期男子ですことよ!?
はあ、虚しい。
と、ここまでの要らぬ思考時間はおそらくコンマ何秒。思考を切り替えていこう。
いまはいつまでも互いに素直になれない、この幼馴染同士にヨイショをしてやるターンだ。
「あー、でも、なんだなぁ、哲太よ。お前は柚子くらいの巨乳女子じゃないと満足できないんじゃないか?」
肩を組んだまま、軽く鍛え上げた哲太の腹筋めがけて腹パン一閃。む、よく鍛えられておる。
「なっ!?お!お兄ちゃんっっ!?な、何言ってくれてんのぉっ!?(ほんとに何言ってるの!?この、超絶、天然、唐変木お兄ちゃんはっ!?あたしが哲太を好きなはずないじゃないっ!だってあたしは…、あたしはっ!?)」
「はいはい、いつも気を遣ってもらってすまねーな、陽平。でも、余計なお世話って言葉もお前の辞書に書いたほうが、オレは良いとおもうぞ。」
どう見ても、明らかに意識して慌てている柚子とは対象的に、哲太のほうはいつもの哲太だ。できる男の余裕というやつかねぇ?
ま、いいや。
「けど、いつかお前らがくっついて、哲太にお義兄さんとか呼ばれる日が来るんかね?なんか想像つかんわ。」
学校内外で凄まじくおモテになる華やかな2人に一介のモブである俺ごときが何をいう
、だな。
未だに何か言いたげな2人を半ば置き去りにするかのように俺は学校へ向けて歩を進めるのだった。
◆
「はぁー、毎日思うけど、なーんで、俺の周りは目立つ輩ばかりで賑やかなんですかね。モブな俺にはとても辛いんだが。」
「いつも言うけど、そんなこと思ってるのはきっとお兄ちゃんだけだよ?ね?てっちゃん。」
「だな。陽平はもっと自分に自信を持つべきだ。」
俺たち3人がふられたクラス、1-B組教室に向かいながら駄弁る。
はぁー、自信、、、ねぇ。
「お前ら2人とも、俺が小5の2学期後半から受けた仕打ちを覚えているだろ?あんな事があってから今日に至るまでずっと変わらずなんだ。それでどうやって自信とやらを身に付けたら良いんだ?」
「「、、、、、、、、、。」」
いつも繰り返すやり取りに返し、そしていつものように俺たちの間に下りる居心地の悪い雰囲気という名前の帳。
俺だって今のままでいいとは全く思っていない。だけど、しようがないだろう?アレはある意味、未だに俺を蝕む呪いのようなものだ。
そう、アレは、小学5年の2学期も終わりが近づいた12月のとある金曜日の放課後のことだ。
俺は、この年、保育園時代から一度も違わなかった妹柚子と幼馴染哲太と初めてにして唯一違うクラスに振り分けられた。けれど、当時の俺は、男女問わず積極的に交流を持ちにいったし、自分でいうのもなんだが、この時点ではクラス1の人気者だったと思う。
しかし、この金曜日の放課後に起こったとある事件以降、俺はクラスの女子全てに避けられるようになってしまい、女子に良いカッコしたい将来ヤリチンチャラ男への進化が待ったなし(←いま、どう考えても偏見でしかない気がする)な男子からも避けられるようになった。
その事件とは。
クラス1可愛い女子から付き合って欲しいと告白されたのを秒殺でお断りしたからだ。
曰く。
『、、、、、、。ょ、陽平くんのことが、すき、、です。つ、、、つきあって、、くださいっ。』
今から思えばそれはその子なりの精一杯の勇気を振り絞り紡いだ幼い愛ーとは呼べなくても、恋とは呼べる感情の発露だったに違いない。
けれど、当時の俺は。
「ごめん、無理。」
とだけ軽々しく言い放ち、放課後遊ぶ約束をしていた柚子や哲太達を優先して悪びれもせずに走り去ってしまった。
今から思い返せばなんと無神経極まりない有様であろうかと我が事ながら頭を抱えたくなる。
しかし、あえて言い訳をさせてもらえるならば、当時の俺は今以上に、どうしようもなく小学生男子でしかなかった、ということを。
女子と比較すると男子の精神的成長は個人差あれども遅く、曰く、幼少より女子はおしゃまで、背伸びをしたがる生き物に対して、男子は二次性徴を迎え始めて、ようやく恋という感情の機微に反応し始める、らしい。
まさに、男子でしかなかった小5の俺には、彼女から発されたカタチもあやふやな淡い恋心を受け止めれない幼さだったのだから。
だからといって、振りかざした言葉は無くならず、1人の女子を傷つけた俺は、翌週からクラスの女子全員から無視されるようになり、やがて、何の影響かは知らないが、俺よりはませていた一部の男子からも無視されるようになった結果、クラスでただ1人孤立した。
そしてそれは、3学期になっても続き、かつては名前の陽の字のごとく底抜けに明るかった俺はすっかりなりをひそめ、クラスの片隅で息をする虫のような学校生活を、家では今までの自分を無理して取り繕い、日々の生活を送っていった。
尤も、そんな家と学校でまるで様子の変わった俺にいち早く気付いた柚子と哲太、姉桃華により、俺はギリギリ不登校からの引きこもりのコンボにはならずに済み、本来なら小5のクラスをそのまま6年に上げさせるところを俺だけ特例で柚子と哲太がいるクラスへと差し替える対処が為された。
そのおかげで、俺は無事に小学校を卒業できた。
ただし、当時の俺は柚子と哲太しか信じられない状態に陥っていたから、大半の学校生活では柚子と哲太が側にいてくれた。哲太はクラスの男女問わず人気者であったから側にいない事も珍しくなかったが、柚子だけは全ての優先事項を俺の傍にいることに極振りしたかのように傍から離れなかった。柚子も可愛いから男女問わず人気者であったんだけど、哲太以外の誰かしらが遊ぼうと近寄ると激しい殺気混じりの怒気を放ち近寄らせなかった。
そうして、小学校生活は幕を閉じた。
中学は運が良いのか悪いのか、俺と柚子兄妹と哲太は学区の境界線ギリギリの場所に住んでいたらしく、小学校の同級生進学率0.5%未満の隣の学区にある中学校へ進学した。無論、先に小学校を卒業した姉桃華も同じ中学校だった。
だから、俺は心機一転、中学校生活を楽しもうと意気込んでいた。
例の一件以来、相変わらず、柚子と姉桃華以外の同世代女子全員が苦手にはなっていたが。
しかし、またしても、とある女子絡みの問題に俺は頭を抱えたくなる。
何故かは分からないが女子が俺と目を合わせることを嫌ってか向かい合うと視線を虚空で彷徨わせ、暫くすると顔を背けてしまう、という状態に遭遇する。だから、またもや、男女混同の体育などの授業や学校行事に対しては常に柚子が対応することになった。
俺は柚子に申し訳なさを積み重ねていたが、不思議とその時間前後は柚子の機嫌の良さが振り切っているのだ。訳が分からなかったが、柚子の機嫌が良いのは俺も嬉しかった。
だけど、そんな生活を送り続けたその年のバレンタインについに俺のナニカがブツリと切れ、俺は折角姉と妹が初めて作ったチョコレートケーキを薙ぎ払ってダメにしてしまい、正体不明の苛立ちと悲しさにただ情けなく号泣した。
さすがに姉ちゃんにも柚子にも嫌われる。そんな悲しみにまで囚われ、ただ、ただ、ケーキをダメにしたことを泣き声のまま謝罪し続けていた。
だけど、姉ちゃんも柚子もとても苦しそうな顔で、何も言わずに俺をただ抱きしめてくれていた。それは、当時は共働きしていた両親が帰宅するまま続き、その後も俺から一切離れようとしない2人に呆れ顔のような、よく判ると語るような顔で見守ってくれていた。
まあ、まさか、中学生にもなって、姉兄妹で一緒にお風呂に入る羽目になるとは。
今から思い返せば、この日以降だろう。
2人が寝る前や夜中にまるで夜這いを仕掛けるかのように俺の眠るベッドに潜り込んでハグしてくるようになったのは。
2人には、本当に感謝しかないし、頭も上がらない。
けど、言葉にして伝えたら、2人して調子づくに決まってる。一体どんな無茶振り要求してくることか、、、。
「お兄ちゃん?教室着いたよ?入らないの?」
思考の海にまた沈んでいたらしい。最近の悪い癖だ、1人で自室に居る時ならいざ知らず、こうして歩いたりしてる時はより注意しよう。
「ごめん、柚子。ぼーっとしてた。今から開けるよ。」
ガララッと教室の引き戸を引いて開ける。
「諸君、おっはよ〜っ!」
同時に柚子の明るい声色が教室内に響き渡った。
柚子、哲太くん、おはよー!
哲太、オッス!今日も夫婦で登校とかうらやますぎか!
朝からイチャイチャして!柚子も哲太くんもいい加減にくっ付いたらー?
などなど、普段から柚子、哲太と交流がある我が1年B組の陽キャ軍団達である。
人種も基本的にイケメン、可愛い女子が基礎スペックであり、そこにややチャラ男風やギャル風など彼等自身で個性を自分らしく出している。一見、やれイケメンというだけで死すべし!やれギャルだからヤリマンビッチ等と決めつけるべからず。うちのクラスに振り分けられてはや1か月ちょっと。たったそれだけの付き合い、、、まあ、柚子と哲太と交流しているのを傍目から見ていただけだが。
柚子と哲太がいつものように、いつもの取り巻き達の元に向かう中、俺はだんまりを決めたまま自席に向かった。
「おはよう、朝方くん。」
席に着いたら、隣の席に座る眼鏡女子、倉橋優奈が微笑みながら話しかけてきた。
「おはよう、倉橋さん。」
ちなみに同じアニ研部員である。普通に読み専で消費オンリーのオタク男子な俺に対して、彼女は同人誌などを執筆する所謂同人作家。結構稼いでいるらしく、手持ちの液タブを部室に設置しており、よく執筆活動をしているのをよく見かける。
同じ部員でも天地の差だし、彼女の執筆に対する姿勢や考え方は素直に尊敬している。
たーだーし、だ。
「毎日、毎日、可愛い巨乳の妹さんと仲良く登校してくるよね?朝方くんはシスコンさんなのかな?」
眼鏡越しですら隠しきれないニヤケ顔。そう、倉橋優奈はそれなりに交流のある相手には基本、口が頗る(すこぶる)悪い。
ったく、折角美人なのに毒舌とか随分損な属性持ちな気がするのは俺だけなんだろうか?
「うっせ、シスコンだよ、悪かったな。」
「おやおや、潔い。ボクとしては大変好ましいけど、他のクラスの女子諸君はどう思うだろうね?」
ニヤニヤしながら王行な態度を取る倉橋。しかし、これが不思議とマッチしている気がするんだよな。こいつ、女優とか普通にやれそうだと思ってんのって、俺だけなんかね?
はぁー、ほんっと、
「折角、美人なのに、もったいねーこった。」
ガタッ!
「んあ?なに、してんだよ、倉橋。」
教室に一際高く鳴り響いた座席椅子が激しく動いた音。それに導かれるままそちらを見てみれば、誰が見ても分かるレベルで顔を真っ赤にして体を戦慄かせている倉橋優奈が立ち上がり、まるで突然知り合いから口説かれましたような有様でかなり狼狽えている。
ハッキリ言って、めちゃくちゃレアな光景である。
素直に言おう、揶揄い時きたる!だ。
「おやおや、どうしたんですかね?ユウナリーさまともあろう大人気同人作家様が、ちょっとした同年代に可愛いとか言われて顔真っ赤とか乙女ですな?あんなえっろいすけべ漫画を執筆なされているのに?いやー、ピュアピュアですな?」
以上、彼女にしか届いていない音量でお送り致しました。
は?大声でカミングアウトするとか有り得んだろ。どんだけ無神経だよ。親しき仲にも礼儀有りと言うだろう?そういう精神よ。
まあー。
激しく動揺した結果、目立つ音出して立ち上がったもんだから、注目だけは未だにされているんだけど、、、、、、すっごい、とある方向からお一人様ほど、視線で人を射殺せそうな御方がおられます。
「、、、、、、、、、!!」
はい、妹の柚子さんですね!うわー、怖い、倉橋、お前、柚子にどんな恨み売ったんだよ。あの目は子孫縁者まで呪い殺さん鋭さがある気がするぞ?普段のあの(俺には)甘えん坊で優しい柚子からは到底考えられない状態だ。
あ、ズンズン鼻息荒くこっち来た。
「ちょっとお兄ちゃん?倉橋さんに何したの!?」
「あっれー?まさかの俺だった件っ!」
未だあわあわ言い続けているポンコツ化した倉橋をスルーして俺の所までくると同時にフンスッ!と仁王立ちして睨み下ろしてくる。
ひ、ひえぇーっ!怒れる柚子大明神様の御成だ、誰かっ、であえいっ、であえーいっ!あ、そんなの誰もいないすか、サーセン。
「ゆ、柚子?俺は何もしてな「したよっ!!」、、!?」
今度こそ激情のままに俺の机を両手でぶっ叩いた。うわ、柚子。それ、手、いたくね?
またしてもアホな事考えてたら睨まれた。
「だ、「ダッツなんかじゃ許さないからっ!」(oh〜ッ!先手ヲ打タレタデース)。」
拙いな。これはキチンと原因を究明してそこを付かないとダメなパターンだ。桃華姉ちゃんといい、柚子といい。どうして俺にはこう甘えるのか。いくら俺たちが姉兄妹だからって、度が過ぎればブラコンだシスコンだのネタ扱いじゃ済まなくなるぞ?ヤバいヤバい、考えろ、考えろ!マジで柚子の機嫌を損ねたら、来週の昼飯がなくなりかねんっ!そうなれば、貴重な小遣いから昼食代を捻出せざるを得ない。
今月は下旬にずっとハマっているソシャゲのガチャフェス期間があるんだ!しかも、噂だとマキシマムキャラの新キャラが出るとの噂だ、キャラによっては母さんに土下座してでも天井する必要性すらある。たかが昼飯代といえどもされど昼飯代!1円たりとて無駄にはできぬっ!
さあっ、俺っ!考えろっ!
考えついたら既に困ってないっ!?
誰か、ボスケテー!
背中を何某らの冷たい汗が伝う中、そんな俺の顔を見ては、やれやれとため息を吐き、軽く咳払いした柚子が顔を朱に染めて、俺にしか聞こえないだろう声音でポソリとつぶやいた。
あとでいっぱい頭撫で撫でしてくれたら、許す。
であった。
俺が、その可愛い妹のかわいいかわいいヤキモチのような感情ににこやかに笑って頷いてみせると一瞬だけなんとも言えない気色が宿った表情を浮かべるとまるで羽が生えたように軽やかに陽キャ軍団の中に戻っていった。
はぁ、あんなこっちの心臓に悪い顔を、ただの兄貴に向けるんじゃねーよっ。
調子が狂うわ。
あーいう顔は、哲太に向けてやれっ!
あのとき、柚子が俺に向けたソレは。
まるで恋愛漫画やアニメなどのヒロインが、恋しくてたまらない相手に向けるかのようなー。
そんな恋をする女の顔だったのだから。
おかげで俺の思考は大混乱だ。
だから、情けない限りだがまるで気付けなかった。
いつの間にか、席に座り直していた倉橋が、とても面白そうなモノを見つけたかのような顔で俺を伺っていた事を。
第二話、そして爆弾は投下される
に、つづく。
あとがきなるもの。
おまたせしました。姉妹取り、、、ごろのいい略式お待ちしております。の、第一話公開いたします。
今回も割とノリだけで書ききりました。
主人公たる陽平がなんで自己評価が低いのか?その理由の一端を軽く書き出しております。
モテないと思い込む理由の方はまだまだ先ですね。晒すラインになるとき、柚子との関係にも大きな変化が訪れる事でしょう。
この作品はラブコメながら、性描写有りの近親恋愛という割と重い題材のため、ヒロイン2人とは似たような他作とは異なり、割と早い段階で、、、、ます。
おっさんが大事にしたいのは、そこからなんですよね。
そこから、かなり話は大きく動くでしょう。
宜しければ、最期までお付き合い戴ければ幸いです。
でわ、また、第二話のあとがきでお会いしましょう。
あー、やっぱり、SSSS.ダイナゼノンのopとedは最高です!
※柚子の最近お気に入りな曲設定から、令和元年から令和3年に変更しました。また、あくまで架空世界という思考により、新型コロナが早期終息した世界設定を改めて追加しました。
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