03 反撃



 何度も何度も化け物に追いかけられて、体力がだいぶ消耗してしまった。


 私は悟っていた。


 生きてこの洋館から出る事は叶わない。


 どんなに逃げても。おそらく。


 じゃあ、何のためにここまで頑張ってきたの!


 私は色々な人を犠牲にしてきた。


 それは生きてここから出るためなのに!


 私は悲しみの感情を抱きながらも、同時に憤った。


 親友を裏切った。

 見知らぬ人達も裏切った。


 その末路がこれってわけね。


 とんだ場所だわ。


 私は目の前にせまってきているそれを見た。


 とても醜悪なそれを。


 この洋館で、私達をとじこめたそれ。


 化け物は追い詰めた私を見てにやりと笑った。


 笑いなさいよ。存分に。


 けれど、ただやられるだけじゃないわ。


 あんたにとって痛い反撃をしてやるんだから。


 私はそのぬいぐるみを掲げて見せた。


 幽霊の持ちモノであるそれを。


 途端に、化け物の雰囲気がかわる。


 私はぬいぐるみを、近くで燃えている蝋燭の日に近づける。


 それは燃え始めた。


 瞬間、激高したそれがおそいかかってきた。


 私の意識はすぐに落ちる。


 死にたくない。


 その思いは変わらない。


 でも、すこしせいせいした。

 やってやった。


 だからだろう。


 私はその化け物を嘲った。


 ほんと、ざまぁないわね。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る