佐久間兄妹とコタロー「無敵の愛猫」

 とある休日の昼下がり。

 佐久間伊織は課題に二時間ほど取り組んだあと、休憩でコーヒー(という名のカフェオレ)を淹れにリビングに来た。


「ん? ひよりは……寝てるのか」


 妹のひよりがソファでブランケットをかぶり、すやすやと寝ている。


「みゃー」


 そして、そのブランケットを……愛猫であるマンチカンのコタローがふみふみ、ふみふみ。


「は? 可愛い」


 妙に響く低い声でつぶやくと、


「みゃー?」


 ふみふみしながら、どないしたん? という目で見つめてくる愛猫。さすがは我が家の天使。可愛さの追撃に余念がない。可愛さの追撃ってなんだ。


「お兄、変にドスきいた声でしゃべんないで……」


 ひよりがもぞもぞと起き上がり、目をこすりながら片頬を膨らませる。コタローはマイペースにふみふみし続けている。なんだこの幸せ空間は。


「悪い、起こしちゃったか」

「ま、いいんだけど~」


 ひよりがコタローを抱きしめてふたたび寝転がる。


「みゃ~」


 コタローが目を細め、ひよりのほっぺたにうにうにとおでこをこすりつける。


「うぇへへ……ちょー可愛いぜぇ……」

「俺よりよっぽど変態じみた危ない声だけどコタロー相手ではしょうがないよなうん」

「なんで息継ぎなしで言ったの? 無呼吸連打でもしたいの?」


 妹と愛猫の可愛さの波状攻撃に呼吸を忘れてしまった。


「お兄、ずっと課題やってたの?」


 ひよりがコタローをだっこして起き上がり、あごの下を撫でながら尋ねた。


「そうだな、かなり頭がすり減った……」

「表現がまあまあ怖いんだけど」


 ひよりがくすくす笑いながらソファのスペースを開け、そこにコーヒー(という名のカフェオレ)ふたり分を淹れた伊織が座る。


「そこのお疲れなあなた! こちらの天使様はいかがでしょうか~」


 ひよりがごく自然に伊織とぴったりくっつくと、


「みゃ~」


 コタローはふたりの太腿に跨ってころりと寝転がり、もふもふのお腹を露わにした。


「「癒される……」」


 伊織とひよりが兄妹揃って頬をゆるめながら、コタローのお腹を存分に愛でた。

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