湊&美鈴「親友の見慣れない挨拶」
とある朝のホームルーム前。
「美鈴、涼原さん、おはよー」
「おっはよー!」
「お、おはよう……」
涼原楓と美鈴が話しているところに次々とクラスメイトがやってきて、楓は控えめに、そして美鈴は明るく挨拶をする。楓が挨拶を交わすのは女子限定(一部例外アリ)だが、美鈴は男女の垣根がまるでない。
(美鈴の挨拶は……何パターンかある)
誰にでも明るく挨拶する美鈴だが、特に仲が良い女子に対しては少し声のトーンが上がり、なおかつ身振り手振りが大きくなる。
もっと言えば、楓自身に対してはとっても柔らかい笑顔を向けて「おはよ」と挨拶してくれる。これを楓の中では勝手に「親密度がもはや殿堂入りした挨拶」と呼んでいる。どうだ、ふふん。
美鈴と仲が良い女子のハイタッチ(楓はテンションが高いときでないと照れてできない)を眺めていると、伊織と湊が教室に入ってきた。
「おはよ~いおりん!」
「おはよう、美鈴さん」
美鈴は伊織に対しては分かりやすい明るさで、
「あ、小野寺くん。おはよ」
「おはよ~、鹿岡さん」
そして湊に対しては……誰とも違う態度を見せる。大多数のクラスメイトとも、仲の良い女子とも、そして楓に対してとも違う表情。控えめに上げた手をひらひらと揺らす仕草がとても可愛らしい。
「楓、どしたの? わたしのことじっと見て」
「あ……べ、別に、なんでもない」
「……ほ~ん?」
「んっ、ちょっと、やめ……っ!」
美鈴に頭を撫でられて抵抗していると(ふたりきりなら大歓迎だが)、視界の隅で慌てて顔をそむける伊織を発見した。
む。
「パパラッチがまた出没した……」
「ちょっと待ってちょっと待って!?」
「あははは! 今日も楓といおりんは愉快だね~」
楓と伊織のやりとりに美鈴がけらけらと笑い、そしてその視線がさりげなく湊のほうへすべる。
美鈴と湊の目が合った。
湊が柔らかく笑い、美鈴もほのかな笑みで応える。その頬がほんのりと朱い。
……今度、色々と聞いてみようかな。
今までとはちょっと違う話ができるかも……と、楓はちょっとわくわくした。
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