第一章 時間差の一目惚れ
入学してから二週間ほど
初対面のクラスメイトとも打ち解けてくると、教室内での自分の立ち位置もなんとなくわかってくる。
「それじゃあ、この問題がわかる人はいるか?」
英語のグラマーの時間、やたらと
「お、
「よし、正解だ。
「着眼点おかしくないですか?」
教室に笑いが起きる。この先生は
(……今回も笑わないな)
すっかりクラスでのお笑い担当になっている
──この二週間を通して、
学校では同学年どころか
その
(しかしなぁ……笑わないのはなぁ……)
だからこそ、すぐ
× × ×
昼休み。
「…………」
ふと生じた会話の
「
他の男子が昨日見た動画の感想を言い合っているなか、
「……別に、ぜんぜん気にしてないっての」
「よっぽど好きなんだねぇ」
「あのな……俺はただひとり笑わない
「
「おい、いいのか? 泣くぞ? いいのか?」
「
「さあな。女子グループもいないから、みんなで食べてんだろうけど」
いまだに見たことはないが、
「
「だね~。男子と話すのも見たことないよ。
「あれ、そうなのか?」
「期待の光が目に宿ったね~」
「人の心を
同じ輪にいる男子たちが最近人気の同世代の動画配信者について熱く語り合っている。「俺のほうが前から知ってるから」「いや俺のほうが古参だし」と
「
「え、それすげぇ
「
「え、それすげぇ
二回目の言葉のほうが心がこもっていた。
「
「
「
「
「発想が
いつも通りの
× × ×
とある日の放課後、
プリントをホチキスで留めるだけの作業だが、先生とは
「今日も残業だぜぇ……へへへ、たまんねぇなぁ……」
遠い目をした担任の言葉に、
「
トークアプリをちらりと見て
同じく帰宅部である
職員室のある二階から階段を降り、一年生の教室へつながる
(あれ? 女子の声……?)
(このまま入るのも
男子ならまだしも、まだまだ会話の少ない女子グループの中に
教室にいたのは、見慣れたふたり──
「
けれど、
「もう、
お団子頭をぽんぽんと
(え、な、ええ? そんな笑い方、すんの? え、えぇぇ……?)
対して
背景の教室が一気に遠くなる。
やがて
視界が、思考が、根こそぎ彼女に……
けれどそこに、親友と呼べるであろう
情報量が多すぎた。
「……あれ?
「……え……っ」
楽しげに笑っていた
「…………」
「パ……」
「ん? ……パ?」
「パパラッチ……っ」
「……は、はぁ!? なんでだよ!?」
思わず大きな声を出すと、
「
「え? あ、ああ、うん。……ちょっと失礼しまーす」
教室を出て、
静かな場所だからこそわかる。自分の
「……いやいやいや、あれは……反則だろ……」
ふだん笑わない子が不意に見せる
……などと
「いったぁ……あ、やば」
ぶつかったのは美術室で、中にいる美術部員らしき人たちの「なんだ今の音?」「
おでこをさすって
けれど今は……どうしようもないほど、
あの子を笑わせたい。あの子の
(うわー……俺、うわー……)
顔がどんどん熱くなっていく。
× × ×
翌日、早めに教室についてやたらめったらそわそわしている
「
「ほぼぜんぶいったよな今? 泣きそうなんだけど」
友人のなじりによるダメージに
「お、おはよう」
ためらいながらも
(え、キっつぅぅ……)
「(ごめんねー!)」
ショートホームルーム前からこの世の終わりのような顔をしていると、
「……なんだよ?」
「いや~、青春だなって思って」
「ああん?」
「
ちらりと
(つらい)
窓から見える
Interlude
「
移動教室で
「パパラッチにかける
「めちゃくちゃキリッとしちゃったよ……」
ばっさり切り捨てたものの、
「…………」
顔をそむけたが
「よーし笑ってる笑ってる!
「あ、ちょ、やめっ、もう……っ」
(あの対応は
なおも頭を
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