第11話 男2人でショッピング

「あのー、俺らにも分かるように説明してもらえます?」


「わかりました。

 

 この世界には魔王という存在がいます。

 その魔王を倒すためにあなた方のような勇者を異世界から召喚しています。」


「それは知ってるっす。」


「召喚するための魔法陣は世界に1つしかなく、それを守るために世界一堅固な城が建てられました。」


「え!?

 それってあの廃墟になってたとこっすか?」


「そうです。

 魔王は倒しても、一定の期間が経つと復活します。

 その度に新しい勇者が召喚され、倒す。

 その繰り返しでした。


 しかし、20年ほど前、状況が大きく変わりました。

 弱い魔物しか現れない場所に建てたはずの城の近くに、魔王直属の部下、四天王のうち3人が居城を構えたのです。」


「四天王の3人があの近くにいるの!?」


「はい。

 当時召喚されていた勇者様は、帰らぬ人となりました。

 魔王は健在だったので、おそらく魔王に殺されてしまったと考えられます。

 おそらくその後のタイミングだと思いますが、また勇者様が転移してこられました。

 その時は四天王がいることに気付かず、その配下の強力なモンスターに殺されてしまいました。」


「かわいそうに…。」


「この世界のために犠牲にしてしまい、申し訳ないです…。

 その後召喚された勇者様たちは城の中で鍛錬をしていただきました。」


「城の中には入ってこれないんすか?」


「はい。

 町や城には『神の加護』があり、モンスターは中に入ってこれないのです。

 しかし、城の中で強くなれるのも限度があります。

 時間が経てば経つほどモンスター側の体制も整ってきてしまい、どれだけ鍛錬しても勇者様は1匹のモンスターも倒すことができませんでした。」


「そりゃ…そうでしょうね…。

 はじめの村がラストダンジョン前にあるようなもんっすからね…。」


「ただ、異常に気づいた魔王城近くの国から応援が来ました。」


「おお!

 それならなんとかなるんじゃないっすか!?」


「残念ながら、勇者様が覚えるスキルの中に、この世界の選ばれしものを強く育てるスキルがあるのです。

 そのスキルなしでは、この世界で最強の戦士でもA級モンスターも倒すことができません。

 その国の応援もB級モンスターを倒すのが限界でした。

 辿り着いたのが奇跡的と言ってもよく、結局は何もできませんでした。」


「おぉ…。」


「しまいには、どうやったのかわかりませんが、召喚の魔法陣がある城の『神の加護』に必要な宝玉を破壊し、城がご覧の通りになってしまいました。」


「それで…。」


「はい。

 召喚されてすぐにモンスターに襲われ、勇者様たちは生き残ることができなくなりました。」


「生存率0%…、か…。」


「ですので、お2人があの城の方からやってきたことに警戒したのです。

 この町の『神の加護』を解除しにきたのでは…、と。」


「なるほど…。」


「お願いします!

 魔王を倒して、この世界を救ってください!!」


ラルクとセオドリクが深々と頭を下げる。


「頭を上げてください。

 元からそのつもりっす。


 ところで、魔王を倒したら俺らは元の世界に戻れるんすかね?」


「はい。

 魔王を倒すと魔法陣が輝き、元の世界に戻れるようになっています。」


「なら倒すっすよ。

 兄貴が。」


蒼真の方を見て、にっこり微笑む光。


「倒すのは俺なのに、なんかお前だけ株あげてるな。」


「そんなことはないっす。」



兵士長であるラルク、ギルマスのセオドリクが2人を勇者として認めたことで、蒼真と光は晴れて異世界の勇者を名乗れるようになった。


キマイラとミノタウロスの買取金額は6000万だったのだが、ギルドにそこまでの支払い能力がなかった。


2人としては食事代と宿泊代、それから身の回りのものが買えればよかったので、この町で2人が買い物した分は全部ギルドに請求するということで話がついた。



とりあえず腹ごしらえをして、2人はショッピングに出かけた。


まず下着や洋服などを見に行ったが、品揃えがとにかく少ない。


周りにいる敵が強すぎて、他の町との交易もなく、物資も資金も限られているらしい。


「こりゃ〜、まずいっすね。

 飯屋さんもメニュー少なかったし…。

 早いとこなんとかしましょう、兄貴。」


「そうだな。

 美味い飯が食いたい。」


次に武器を見にいく。


応援が来たときに持ち込まれたのか、最初の町にしては強力な武器がある。


とりあえず一番高い剣を1本買った。


「どうせ俺は使えないからな。」


中指だけが武器の蒼真に武器は使えなかった。


次に防具を見に行く。


「防具だけはいいのを身につけときたい!

 多分攻撃受けたら一撃で死ぬ。」


「一番いいやつを買いましょう。」


防具もそこそこのものがあった。


ただ、武器もそうだが、新品ではなく中古だった。


それもかなり年季が入っている。


強い国から応援に来た時のものだろうからしょうがないと2人は諦めた。



それから道具屋で必要な物資を一通り揃えた。


アイテムボックスがあるので、多めに買っておいた。



そして、2人は宿屋へ行くのだが、とんでもない事が起こることを、この時知る由もなかった…。


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