第10話 顎貫刹衝

ということで、ようやく町に入れてもらうことができた。


「こちら、最強の勇者、蒼真兄貴っす。

 ただ、この世界の言葉は話せません。」


「私はこの町の兵士長、ラルクだ。

 よろしく。」


言葉がわからないが、とりあえず蒼真は握手しといた。


握手が持つ意味は地球と同じらしい。


「とりあえず飯食いたいんっすけど、モンスターを買い取ってくれるところあります?」


「ああ、それなら冒険者ギルドだな。」


「おおー!

 やっぱりあるんすね、冒険者ギルド!

 買い取ってもらうには冒険者に登録する必要があるっすか?」


「買い取りは登録しなくても可能だ。

 しかし、登録しないとクエストを受けることはできない。

 個別でモンスター討伐の依頼があれば、そのモンスターの買取金額は高くなる。

 素材と別で報奨金が出るからな。

 登録しないとその場合の報奨金がもらえない。」


「じゃあ登録した方がいいっすかね?」


「ただ、登録すると依頼を定期的に受ける必要がある。

 それと、ランクごとに受けられるクエストが決まっている。

 登録すると最低ランクからだから…、君たちが登録するメリットはないかもしれん。」


「じゃあいっかな。」


光は蒼真に事情を話す。


2人で話して登録しないことにした。


「ていうか、この世界の言葉わからないの、結構致命的っすね。

 正直、通訳めんどくせえっす。」


「…すまん。」



−−物語の進行が大変なため、光が頑張って通訳する描写は今後全カットします−−



「まあ、そのおかげで助かったんで文句は言えねえっすけど。」


「…大変そうだな。

 ひとまずギルドに案内しよう。」


3人はギルドへ向かった。


ギルドに到着し、ラルクが扉を開ける。


「あ、ラルク兵士長!」


「やあ、今買取カウンター空いてるか?」


「空いてますよ〜!

 何か仕留めたんですか?」


「俺じゃないんだ。

 この2人だ。」


受付嬢は蒼真と光に目を向ける。


「その格好…。

 もしかして…?」


「ああ、召喚された勇者、らしい。」


「ラルク兵士長、…大丈夫ですか?」


「言いたいことは分かる。

 だが、それを確かめるためにも買い取りをしてもらいたい。」


「…はい。」


よくわかってない2人を連れて、買取カウンターへ移動する受付嬢とラルク。


「カウンターはここですけど、何を買い取ればいいんですか?

 見たところ荷物も無いようだけど…。」


「ちょっとここじゃ出せないっすね。

 広い場所あります?」


「え?

 は、はぁ。」


買取カウンターの職員ガーレンを含めた5人は解体場へと移動した。



「これっす!」


そこで光はアイテムボックスからキマイラとミノタウロスを出した。



「「「は!??!?」」」


「あ…、いて、いてて…、あごが…!」


びっくりしすぎてガーレンの顎が外れてしまった。


彼は顎関節症であった。


ストーリーには一切関係ないけど。



「どっちもS級モンスターなんですけど…。」


「それに、今のはアイテムボックスか…!?

 こんな大型モンスターが丸々入るほどの…!?」


「そうっす!

 まあどっちも兄貴が仕留めたんすけどね。」


ラルクが2人を強い眼差しで見たかと思うと、おもむろに土下座した。



「数々の無礼、失礼いたしました!

 勇者様、どうかこの世界を救ってください!!」


「「え?」」


突然の土下座に戸惑う2人。


蒼真に至っては言ってることもわからないため、なんならちょっと怖がっていた。



査定している間、ラルク兵士長とギルドマスターのセオドリクを交えて話をすることとなった。






「この2人が勇者でS級モンスターを仕留めてきた…、と。」


「そうだ。

 しかも、ほとんど無傷で仕留めている。

 相当な実力差がないとできない芸当だ。」


「S級モンスターと相当な実力差って…。

 勇者だとしても無理があるだろ…。」


「それだけじゃない。

 その獲物は2人じゃなく、こちらの蒼真殿が1人で仕留めたそうだ。」


「マジか…。」


「この世界の命運はもうこの2人にかけるしかないと、俺は考えている。」


「それが本当なら…、確かにそうだな…。」


「あのー、俺らにも分かるように説明してもらえます?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る