第9話 町へ不法侵入しました

「着いたな〜。」


「着いたっすね!

 さすがに疲れた〜!」


「ずっとおぶってもらって悪いな。

 飯でも奢るよ。」


「あざっす!

 じゃあまずは換金ですね!」


「冒険者ギルドみたいなところがあんのかな?」


「聞いてみましょう!」


2人は今、見るからに強固な門の前にいる。


門番はいないようだ。



ドンドン!


「すいませ〜ん!

 開けて下さーーい!!」


光が門を叩きながら大声で叫ぶ。




カン!カン!カン!




すると、けたたましい鐘の音が鳴り響いた。



「えっ?えっ?」


動揺する光。


蒼真も内心びびっていた。



門の上に設置された櫓から、武装した兵士たちが顔を出す。


手には弓を持っている。


中にはローブ姿に杖を持った魔法使いらしき人たちも。



「…やばくないっすか?」


「…俺は中指以外にくらったら即死だから…、守ってくれよ…。」



しかし、2人を見た兵士たちが何やらザワザワとざわついている。



「すみません!

 旅の者なんですが、町に入れてもらえないでしょうか!?」


蒼真が話しかけると兵士たちがギョッとした様子で、弓や杖を構えだした。


「え!?

 なんで!?」


「…あ。

 兄貴はこの世界の言葉、話せないんじゃ…?」


「あ…。」


「す、すいませーーん!!

 怪しいもんじゃないんです!!

 攻撃しないでください!!」


光が必死で無害さをアピールする。



…頑張りも虚しく矢や魔法が飛んできたが、光がなんとかブロックした。


攻撃を凌ぎながらも敵ではないことを伝え続けるが、埒があかない。



「よし、強行突破しよう。」


このままじゃ無理だと判断して、蒼真たちは無理矢理入ることにした。


「そうっすね。

 頑丈そうな扉ではありますけど、開けられそうっす。」


蒼真は攻撃を受けたら死んでしまうため、攻撃が当たらない場所に避難。


光が1人矢と魔法が降り注ぐ中、門に近づいていった。


「ふ…んっ!!」



バキッ


ゴ……ゴ…ゴッ



町に入る門を開けることに成功した。



「侵入されたぞ〜〜!!!」


「門のところで仕留めるんだ〜〜!!」



町は大騒ぎだ。



「すいませーん!

 話聞いてくださーい!!」


両手を上げて抵抗の意思がないことを示し、無害であることを訴え続ける光。


その状態で攻撃を躱し続けている。


流石に被弾もしているが、ほとんどダメージはない。


「やめい!

 やめーーい!!」


なんだか偉いっぽい人が兵士たちに向けて叫んだ。


「…話を聞こう。」


「やっとすか…。

 ちょっと痛かったっすよ…。」


「…何者だ?」


「俺らは異世界から召喚された勇者っすよ。」


「なんだと?」


「だから、召喚されて別の世界から来たんですって!」


「あのあたりはS級A級のモンスターがウヨウヨいるはずだ。

 召喚されてすぐの人間が、勇者とはいえ生き残れるはずがない。

 だからこそこちらの門から誰かがくることはありえんのだ。」


「ですよね…。

 なんなんすか、あれ…。

 俺っちも兄貴のおかげで命拾いしたっす…。」


「兄貴?

 俺らと言っていたな。

 仲間がいるのか?」


「最強の兄貴がいるっすよ。」


「あんたも相当強いようだが、それ以上に強いということか?」


「俺っちなんか比べもんになんねえっす。

 兄貴がその気になれば、この町は一瞬で消されるっすよ。」


「な…!?」


「だから、俺っちたちはこの町に危害を加えるような気はねえっす。

 やるなら別に門から入らなくてもいいんすから。」


「馬鹿な…、と言いたいところだが、この町の最大戦力の攻撃を1人で無効化されたばかりだからな…。

 それ以上の戦力がもう1人いるとなれば…、納得するしかあるまいな…。

 

 …何が望みだ?」


「え?

 いや、普通に飯食ったり、宿で寝たいだけっすけど…。

 何も持ってない状態で召喚されたから、腹ペコなんすよ…。」


「な!?

 本当か?」


「他に何があるんすか…。」


「この町を支配する…とか?」


「いや、そんな疑問系で言われても…。

 支配して何が楽しいんすか…。」


「…本当にただ立ち寄っただけなのか…。」


「そうっす。

 信じてもらえました?」


「そう…だな…。

 もし違うとしても、どうしようもないものな…。

 受け入れるしか、選択肢はないな…。」


「そんな嫌そうにしないでくださいよー!

 なんかこの世界救うためにわざわざ別の世界から呼ばれたんすから!」


「召喚された勇者か…。

 本当なら…、この世界を…救ってほしい…!」


「兄貴なら指1本で救ってくれるっすよ!」

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