第6話 転移者に保護されました

「中指で小石飛ばした。」


「な、中指!?」


「…ああ。」


「意味わかんねえ…。

 なあ、【鑑定】使ってもいいか?」


「…まあ、別にいいけど…。」


「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて…。

 【鑑定】。】




************


名前:古仙蒼真

Lv:66

HP:100

MP:10

耐久力:10

力:10

素早さ:10

器用さ:10

魔力:10


************




「は?」


「…どうだった?」


「いやいやいやいやいや!

 レベル66なのに、全部初期値じゃん!!

 HP100!

 あとは全部10!!

 スキルは0!!!」


「あれ?

 じゃあこの指にやってみて?」


「中指に【鑑定】とか意味わかんねえわ…。

 【鑑定】。」




************


名前:古仙蒼真

Lv:66


(中指)

耐久力:34500

力:34500

器用さ:34500

魔力:34500


************




「さ、さんまn…。」


「お、見れたか。」


「………先輩。

 いや…、兄貴!!」


「…は?」


「すごいっす!!!

 めちゃくちゃ強いじゃねえっすか!?

 さっきのはなんて技っすか!?」


「…いや、飛ばしただけ…。」


「いやいやいや!!

 あれはなんか技の名前が必要っす!!

 そうっすね…。


 伝説の弓から拝借して…、『フェイルノート』はどうっすか?!

 『中指フェイルノート』!!」


「いや、だから飛ばしただ…」


「うん、弓じゃないけど、遠距離攻撃だからいいっすよね!

 『中指フェイルノート』、恐ろしい威力でしたね…!」


「人の話を…」


「それより俺っちにも経験値入ったってことは、俺らパーティっすね!?」


「…知らん。」


「いやいや!

 さっき明らか気づいてましたよね!?」


「…知らん。」


「よし、パーティ名は『蒼穹の閃光』なんてどうすかね!?」

 

(…意外と悪くない…。)


「蒼真の「蒼」と、「光」を使ってみたっす!

 気に入ったようっすね!」


「…別に…。」


「よし、『蒼穹の閃光』結成!

 勇者が2人揃えば最強っすよ!」


「…勇者?」


「はい!

 俺らは勇者として転移されるんで!

 聞いてませんでした?」


(色々抜けがあるな、あの女神様。

 でも、それどころじゃなかったからなぁ。)


「…聞いてない。

 他には何か言ってた?」


「う〜ん。

 なんか聞いても濁されることも多くて…。

 多分生存率0%だから、言いにくかったんっすかね?」


「…俺らはなにすればいいんだ?」


「それも教えてくれなかったんっすよ。

 『とにかく、生きて!』って言われて…。」


「…そうか。

 ところでなんで敬語?」


「蒼真さんは兄貴っすから!」


「…意味わからん。」


「まあ、同じ転移者同士仲良くしましょうよ!」



(はっきり言っとくか…。)


「俺は誰かと一緒に行動するつもりはない。

 …レベルも上がったし、1人でも大丈夫だろ?」


「そんな〜!

 兄貴は命の恩人なんっすから、一緒にいさせてくださいよ〜!」


「…人は苦手なんだ。」


「ん〜。

 でも、今からどうするんすか?」


「町を探す。」


「俺、1番近い町の場所わかりますよ。」


「え?

 なんで?」


「【マップ】スキルで。」


「あ…。」


「兄貴、持ってないっすよね。」


「…方向教えてもらえる?」


「いいっすけど、町に着いたらどうするんすか?」


「とりあえず飯食いたい。

 それから宿の確保かな。」


「言葉、通じないらしいっすよ。」


「あ…。」


「俺は話せますけどね。」


「…【言語能力】か…。」


「はい。

 【鑑定】ないと、その辺のもの適当に食べたら毒に当たりますしね。」


「…。」


「ということで『蒼穹の閃光』、しゅっぱーつ!」


「…。」



戦い以外はなにもできない蒼真は、とぼとぼと光のあとを着いていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る