5-3
気が付いたのは四時だった。
夢の残像が意識の縁に残っている、翔さんの夢だ、だけど内容が思い出せない。……きっと温かい、胸が膨らんでいるから。その膨らみを息にして出してみる。魔法の風のようにキラキラと星屑を振り撒いて、パアンと弾ける。やっぱり素敵な夢、その正体が分からないからなおいいのかも知れない。睡眠が存在しなかったかのように僕は彼女へのプレゼントのプラン立案の続きに集中する。彼女をまだあまり知らないから、何を貰うと嬉しいのかさっぱり分からない。そうすると無難なのは食べ物か花。つまらない。自分の部屋の小物を見て始まった考えだから、残る物にしたい。彼女で統一されている部屋にビシッと存在を主張する贈り物がしたい。いや待てよ、だったら僕専用の何か、湯呑みとか、……何か違う。
思考が暗礁に乗り上げる、腕枕をする。
天井にはポスター。世界の内でどれだけの人がこうやって視線が合うように天井に貼るのだろう。僕とポスターの美女はここ以外の全ての場所に秘密で繋がっている、十人の美女がそこにいても僕と繋がるのはいっときにつき一人だけだ。その瞬間、僕と彼女は特別な関係になる。
「そうだ」
特別な関係から、特別なプレゼントが生まれる。それをすればいいんだ。つまり、久美子さんと一緒に物を探しに行けばいい。二人で選んだ物は最初から二人にとって特別な存在だ、しかも予め考える必要がない。……考えてはいけない。二人の視線が交わる場所にあるものを部屋に置く。完璧だ。
一人でニヤリと笑ったら、シャワーを浴びに階下に向かう。体をきれいにしたらまた眠くなったから遅めに目覚ましをセットして再び眠りについた。睡魔に攫われるまでの間ずっと、一緒に小物を探すことを想像しては、くふふ、と笑った。
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