第23話 ネトゲ回終結
「セイヤ、これは暴走ってこととして処理していいのよね?」
「ああ、猫と蛇は今をもって殺処分対象となった。第一使徒セイヤ・センエイの名において宣言する」
セイヤがそう宣言したと同時に第六使徒ジュンコ・ヒライシ、第八使徒インゼ・キキキも剣を抜く。
ジュンコの剣は『フラガラッハ』、恩恵は『反射』。インゼの剣は『干将・莫耶』、12使徒の中で唯一の二対の剣であり、恩恵は『神速』だ。
もちろん隊長格であるミツキはそれを知っている。ミツキの能力にとって二人の恩恵は相性が良くない。だから面倒だと思った。だがただ面倒だと思っただけだ。
「まあいい。相性が悪かろうが桁違いの力っで捻りつぶせばいいだけのことだ」
リヴァイアサンの怖さは能力自体よりもその膨大な魔力だ。要するに尽きる心配のないガソリンで巨大なエンジンを回し続けられるということだ。
―蛇流―
止むことのない爆撃をミツキは空から容赦なく振りまく。リヴァイアサンのブレスを『増殖』の力で増やし雨のように降らしたのだ。
「フラガラッハ!答えて!」
ジュンコがフラガラッハを振ると自分に振って来た爆撃がミツキへと跳ね返っていく。だが返されたら次はその倍の数の爆撃を落とす。それが返されればさらにその倍、倍、倍。何も考えていないバカみたいな戦い方だが。リヴァイアサンの無尽蔵の魔力があれば成立してしまう。そしてこれしかないというような必勝の手となる。
「ちゃっちゃと首を貰うよ」
今度はいつの間にか上空まで飛び上がっていたインゼが上からミツキを狙う。
「誘ったんだよ。リヴァイ、鏖殺しろ」
『御意』
―蛇悪―
雨のように降らしていただけだった爆撃をミツキは全方位に向けて吐き出す。狙いを定めるわけでも敵を確認するでもないただひたすらどこにも逃げ場のない爆撃を垂れ流し続けるのだった。
「相変わらずめちゃめちゃするな、あいつ」
隣で起こっているこの世の終わりのような光景を眺めながらユキトが呟く。ちなみに今戦いが行われているこの空間は切り離された隔離空間となっている。これだけの空間を作っているのは大蛇の副隊長であるタダラだ。
「はぁはぁ、隊長。いくら現実世界に被害がないからと言ってもやり過ぎですよ。制御するのが、はぁはぁ、ギリギリですよ」
タダラは鼻血を流しながらも必死に空間の維持に務めていた。
「あの調子であのバカが暴れ続けたら、タダラの限界もすぐに来るだろうな。てことで俺たちもさっさとケリをつけるか。第一使徒」
「アンリ・マンユもろとも殺してやるよ。猫」
聖剣エクスカリバーの恩恵は『絶対切断』。エクスカリバーはこの世の全てを斬る。斬れないものは存在しないといわれている。
だから斬りかかって来たセイヤの剣を受けることをユキトはしない。
「何でも斬れるらしいが、結局その剣に触れなければいいだけだろ」
「エクスカリバーに空振りは存在しない」
「はぁ!?」
セイヤの剣を避けたはずのユキトは急激にセイヤの元に引き寄せられる。
「空間を斬った」
「めちゃくちゃだな、お前」
「死ね」
セイヤは自分の元に飛び込んでくるユキトに対して剣を再び振りかぶる。
ガキン!
だがその剣はユキトに届くことはなかった。妖刀村正に受け止められたのだ。
「なっ!?なぜエクスカリバーで斬れない!?」
「斬れてるよ。今まさにこの瞬間も斬れ続けてる」
刀を交えながらユキトが答える。
「どういうことだ!」
「斬れたそばから再生していってるだけだよ。どうやらエクスカリバーの斬るスピードと村正が再生するスピードはトントンぐらいらしいな」
「それなら再生という能力ごと斬るだけだ!」
「ちっ!」
ユキトは一旦セイヤから距離をとる。
「マジで能力ごと斬られるところだった。お前無茶苦茶だな」
「斬り損ねたか。まあいいや。どうせ結局全部斬る」
そう言ってセイヤはエクスカリバーで空を切る。
「ごはっ!」
その一太刀は空間をごと切り裂き、離れていたユキトを袈裟斬りにする。
完全に真っ二つにされたユキトだったが、すぐにその身体は再生する。アンリのおかげだ。そしてユキトにここまでされてアンリが黙っているわけがない。
「アンリ、ありがとう。死ぬところだった」
『・・・』
「アンリ?」
『・・ざけるな。ふざけるなぁぁぁぁ!!!!あの人間は我からユキトを奪おうとしたのか?万死に値する』
怒り狂ったアンリは肉体の主導権をユキトから奪う。
「おい、祓魔師。お前は殺すぞ?」
そこにはユキトの姿をしたアンリがいた。
「ん?アンリ・マンユの方が出て来たのか?」
セイヤもユキトの雰囲気が変わったことに気付いた。
「しゃべるな。黙って死ね」
「まあどっちでもいいか。どうせ斬るだけだ」
「しゃべるなと言った」
アンリに会話をするような余裕はない。ユキトを殺そうとした。それだけで十分すぎる。この世から消し去る理由としては。
―斬神―
―悪逆―
2人はぶつかり合い、アンリとセイヤは鍔迫り合いの形となる。
「また再生か。それごと斬るって言ったぜ!」
「再生なんか使っておらん。ただ単純にお前が切れてないだけだ」
アンリは表情を変えずに淡々と答える。
「はぁ!?そんなことあるわけ―
「何でも斬れるらしいな?悪も斬れるか?」
互角にぶつかり合っていたアンリとセイヤだったが徐々にアンリが押し始める。
「はぁ?」
「悪とは何だ?どこにある?どこにでもある。お前の中にだって」
「くっ!」
完全にアンリに押され今にもセイヤは斬られそうになっていた。
「どこにあるのか。なんなのか。貴様自身が認識できてないものをどうやって切る?」
「悪とは・・・?」
「この世の半分だ」
そしてアンリはセイヤを斬る。
*
「よう、お前の宿主殺されそうになってんぞ?」
「あん?マモンかよ。それがどうした?」
ここは地獄と人間界の狭間。悪魔憑きと契約している悪魔たちが待機してる場所。いわば待合室みたいなところ。
「お前だってヤバイじゃん。受肉した瞬間に祓魔師たちに一緒に殺されるぞ?」
「だって呼ばれねーんだからしょうがねーじゃん」
タバコをくわえて雑誌を読みながらサタンが答える。そう、サタンはまるで指名の入らないキャバ嬢のようにやさぐれていたのだ。
「いや顕現したらいいじゃん。お前ならできるだろ?」
「そうは言われてもよぉ。俺が勝手に顕現しても、、そのあいつが、、カナタが困るだろ」
「殺されるほうが困るんじゃね?」
「でもあいつがまた俺の力のせいで傷つくと思うと、、、」
「お前ってそんなキャラだっけ?」
「俺はあいつが小さいころから憑いてる。だから知ってるんだあいつがどんなにいい子かを。というかあいつこそが本物の弟なのではと思ってる」
「まあ確かにお前の本当の弟ルシファーだもんな。現実逃避もしたくなるか」
「ルシファー?誰だっけ、それ」
「重傷だな。てか弟と思ってるってちゃんと言ってるの?」
「?カナタと会話したことなんかないけど?」
「え、なんで?」
「はぁ!?普通に緊張するからだけど?」
当たり前の様にサタンが答える。マモンはすぐに『ああ、これはダメだ』と理解し、サタンを落とす殺し文句を思いついた。
「、、、直接会話せずにカナタと意思疎通することができ、さらにカナタの助けになる方法があるぜ?」
マモンはニヤリと笑ってサタンに耳打ちする。
「マジでそんな方法が!?」
「とりあえず顕現しろよ」
「おっけー」
超軽かった。
*
ピコーン!
セイヤと絶賛戦闘中にスマホにメッセージが届く。ザノザからだ。俺はアンリと代わってもらってスマホを見る。
ザノザ〈任務完了でござる!(^^)!〉
イラっ!
このメッセージ、マジイラっとするんですけど。今回ってネトゲ組のせいで緊張感がね―んだよ。なのにここまで良く戦った。頑張った、俺。もう帰って泥のように眠りたい。
「祓魔師たちのみんなー!!!問題解決したよー!!!」
とりあえずこの物騒な戦いの終了を伝える。
「問題解決ってどういうことだよ!」
致命傷ぐらい斬られながら全然斬りかかってきていたセイヤが目の前で止まる。
「だからちゃんと悪魔来たってよ」
「寸前で悪魔を呼び出したってことか?でも今回現にこういった事態を起こしたんだ。再発の可能性がある以上、カナタは未だに抹殺対象のままだ」
セイヤは再び剣を構える。
「いや再発の可能性はない」
「なんでそう言いきれる!」
「サタンは常時顕現型となったからだよ」
「なに!?、、、ちっ!また悪魔がこっちに来やがったのかよ。くそ!だが神殺しの槍ロンギヌスとの協定は守る。撤収だ!!!」
セイヤは悔しそうに宣言する。これによって残り二人の使徒も帰って行った。すんごい斬れてるはずなんだけどなんであの第一使徒は平気で動けるんだろう。セイヤの感想はキモいだった。
「ちっ!殺し損ねた」
人の姿に戻ったミツキが悔しそうに空から降りてくる。
「でもミツキ、お前のところの副隊長はもう限界だったみたいだぞ?」
というか今回一番頑張ったのは間違いなくタダラだろう。
「お、終わった、、ん、、ですね」
そう言ってタダラはその場で気を失って倒れる。
「気合が足りねーな」
「いや、お前が遠慮なしにめちゃくちゃしたからだろ」
「鍛えなおしてやる」
ミツキはタダラを担ぎ、とんでもない言葉を残して帰って行った。
「あいつマジかよ、、、」
そして今回の茶番は幕を閉じた。はぁ、帰って寝よ。
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