第21話 ネトゲ廃人ども

「おい、なんで悪魔呼ばないのか聞いてみろよ」




「わかってるって。うるせーよ。ネットではネットの聞き方ってのがあんだよ」




「たく、早くしろよ」




「ああ、そういうとこだよ、お前が俺に嫌われてるとこは」




ザノザの部屋で俺たちはネトゲ上でカナタとの接触を試みていた。








ノザノ《タナカ殿、今ヤバい状況って聞いたけどダイジョブでござるか?? ^^) _旦~~》






「えーっとノザノってのがお前でタナカってのがカナタってことでいいのか?」




「はぁ!?それぐらい見りゃわかんだろ!」




「うん、見て分からなかったから聞いたんだけど」






マモン《ボス戦が近づいてるのん。タナカきゅんの助けがないと厳しいの~》






「このマモンってのはマモン?」




「何言ってんだ!文字も読めなくなったのか、ユキト。マモンと書いてあるだろーが!」




マモンも当たり前のことのように言ってくる。イラっとしたが、めんどくさいから堪える。




「いや、確かに書いてあるよ。でも今度は逆に中身のキャラに違和感を覚えてるんだよ。まあめんどくさくて言わなかったけどザノザの中身にもかなり違和感感じてるけどね!」




「ユキト!ちゃんとキャラをみろ!職業はサモナーの幼女だろーが!それに合わせたロールプレイをやってるんだよ!見たらわかるだろ!」




再度マモンは当たり前のことかのように言ってくる。うん、めちゃめちゃめんどくさい。




「もう俺は何も言わない。カナタとのやり取りだけ教えてくれ」






タナカ《もしかしたらしばらくインできなくなるかもしれませぬぅ~。ただ今日のボス戦だけは何が何でも参加いたしますのでご心配なく~》






「カナタの方もそれなりだな」




「おい、ユキト!」




「ん?」




「よかったな!見た通りカナタは今日のボス戦には参加できるみたいだ!これで心配はないな!」




「うん、そりゃよかった。、、、ってなるわけねーだろ!え!?お前ら俺がそのネトゲのボス戦を心配してここまで来たと思ってたのか!?」




「違うのか?」




「違うに決まってんだろ。てか少しは本気でやれ!」




結構前から分かってたけど、ダメだこいつら。




「アンリ!」




「おう!」




「こいつらのPCを皆殺しにしろ」




「わかったのだ!ウイルス塗れにしてやるのだ!」




「ちょ、ちょっと待て!ユキト!落ち着け!久しぶりだからはしゃいでみただけだ!ちゃんとやるからそれだけは勘弁してくれ!」




「アンリ!俺も悪かったよ!今日のボス戦のことで頭がいっぱいだったんだ!そ、そうだよな!今はそういうことじゃないよな!」




ウイルスという単語に悪魔憑きと悪魔が冷や汗を流して取り乱す。自分たちの方がよっぽど物騒だろうに。




「しょうがない。アンリ、ごめん。やっぱりなしで」




「そうなのか?まあ我はどちらでもいいがな!よく分からんし!」




アンリはあっけらかんとしている。わかるよ、俺もよくわかってないから。




「お前ら、今度は真剣にやれよ?」




俺はザノザとマモンを睨みつける。




「ちっ!わかったよ!ただ7時前には帰れよ。世界の命運なんかより大切な戦いがあるからな」




「ザノザ!俺は今日の戦いに向けて精神統一に入る。お前らは勝手にやってろ」




こいつら本当にぶれねぇな。本気でこの世界とかどうでもいいんだろうな。こいつらにとってネットの世界の方が本物なんだろう。うん?何かこいつらの方が幸せそうだな。イラっとする。




「おい、ザノザ。腐りきってもお前は一応うちの副隊長だ。ニートしてる分の仕事ぐらいしろ」




「ちっ!しかたない。なんで悪魔呼ばないのか聞けばいいんだろ?」




「舌打ち多いな、お前。本当にわかってんのか?」




「さすがのニート王でもそれぐらいはわかる」




「じゃあさっさとやれよ」




「わかってるけどむずかしい!基本ネットの世界にいる人間たちにプライベートのことを聞くのはタブーなんだ」




「タブーでも聞けよ」




「お前、タブーの意味って知ってるか!?」




「そもそもお前らのネット料金は俺が払ってるんだ。働かねーならネット止めるぞ?」




「おいザノザ!こいつ血も涙もないぞ!」




精神統一を中断してマモンが大声を上げる。




「ああ、マモン。こいつは悪魔なんか可愛くなるぐらいの悪だ!」




ザノザも俺を親の仇のような目で見てくる。え、なにこいつら。ネット止めるぞって言っただけでそんな感じになるの?、、、控えめに言ってもキモイんだけど。




「もうそういうのめんどくせぇからカナタに悪魔を呼び出さない理由聞いて。マジでもう本気でめんどくさい。サッサトヤレ。ブチコロスゾ(棒)」








ノザノ《タナカ殿、今貴殿の命を祓魔師どもが狙っておるようでござる。なぜ悪魔を呼び出さないのか?》








タナカ《私の悪魔は呼び出せば周りの人間を不幸にしてしまいまするぅ~。ゆえに私はもう悪魔を呼び出すことを自らに禁じたのですよぉ~。たとえ殺されとしてもですぅ~》






なんかすごい決意みたいの聞かされてるんだけど、この言葉遣いのせいで物凄く軽いものに感じる。






ノザノ《来週にもレイドが迫っておるでござる。どうか悪魔を呼び出して生き延びるのでござる!》






何なのこいつらのゲームへの思い。マジで命かけてるじゃん。






タナカ《・・・(;_;)/~~~》






ノザノ《タナカ殿ー!!!》






―タナカがログアウトしました―








「くっ!全力の説得を試みたが無理だったようだ」






ザノザが悔しそうに机をたたく。うん、なんかすげぇイラっとする。






「おい、お前なにやりきったみたいな顔してんだよ。いいか、ザノザとマモン、お前らは何が何でもカナタを説得しろ。出来なかったらパソコンをぶち壊し、ネットも止める。ついでにスマホやタブレット的な電化製品もすべて破壊する」




「ユキト!お前それは余りにも!」




「うるせぇ。これは決定事項だ。嫌なら死に物狂いで説得しろ。ずっとニート生活を許してやってたんだ。こんなときぐらい本気で働いて見せろ」




「そんなこと言っても!」




「あとは任せた。俺はもう行かなくちゃいけない。聖十字協会(タナハ)が本格的に動き出したみたいだ」




「ユキト!十二使徒が隊員を連れてカナタのところへ向かってるのだ!」




「十二使徒は何人だ?」




「3人。第一使徒セイヤ・センエイ、第六使徒ジュンコ・ヒライシ、第八使徒インゼ・キキキなのだ!」




「はぁ、面倒だな。いいか!ザノザ!マモン!俺は出来るだけ連中を止める!だからその間にカナタに悪魔を呼び出させろ!じゃないとわかってるな?」




「、、、わかったよ」




ネット環境の生殺与奪権を持っている俺にこのネトゲ廃人たちが逆らうことなどできないのだ。

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