第7話 買い物と敵襲来
翌日俺たちはシンの小学校入学へ向けて必要なものを買いそろえるために街に出てきていた。
なぜかユウカとスズネも付いてきた。まあスズネはユウカに連れられて嫌々だろうが。
「この子がシンちゃんなのね」
「うん、そう」
シンは初対面のユウカにも物怖じしてないように見えた。
「かわいい!!!今日はもっと可愛くなれるお洋服を買おうね!」
「えっとえっと、楽しみ?」
「キャー可愛い!!!」
「く、くるしい」
ユウカはシンを抱き締める。
「シンは我とユキトの子なのだ!もうそう言っても過言ではないレベルなのだ!だから今すぐ離れるのだ!」
「あれ?シンちゃんってどこか私とユキト君に似てる気がするわね。ユキト君この子は私たちの子供として育てましょう!」
「だからシンは我とユキトの!」
「悪魔の要素なさそうだけど?」
「ちぃ!」
「シンちゃん、私のことママって呼んでみて?」
「シン!我のことを母上と呼ぶのだ!」
「ちょっとよくわかんない」
「お前ら子供にめんどくさいこと言ってんじゃねーよ。とにかく小学生に必要なものを買いに行くぞ。戸籍とかは神殺しの槍(ロンギヌス)がなんとかしてくれたからな」
「無理やりなんとかさせたのでしょう?」
スズネが睨んでくる。
「まあいいや。とりあえずちゃっちゃと買ってちゃっちゃと帰るぞ」
まあワイワイしながらもユウカは可愛い服を選び、アンリはランドセルとか文房具を選んでやっていた。そして小学校に通うための準備が整ったころにめんどくさい客が現れる。
「ユキト、天使がやってくるのだ!それも相当な数なのだ!」
「スズネ!認識阻害と結界をお願い!」
「わかりました。お嬢様。切り取ります」
皆気付いたようだ。シンだけが何が起こっているのかわからない様子だ。
「スズネ、シンを頼んだ。多分こいつらシンを狙ってる」
「わ、わかりました。ですが向かって来ている天使の数は百を超えているかと。さすがに私でもわかるレベルです。どうするんですか?」
呼ぶまでもなくアンリは俺に憑りつく。
「皆殺しだよ」
空から羽虫のように天使たちが降ってくる。スズネの結界で広さも拡張されてるからいいがこんだけの数の天使は見てるだけで気持ち悪い。早く殺したい。
「猫!神殺しの槍(ロンギヌス)として対応します!」
ユウカが一気に仕事モードになる。
「休んでてもいいんだぜ?猪」
「そんなことができるわけない。私たちの使命は神とその配下の天使を、、、皆殺しにすることよ」
ユウカが獰猛な笑みを浮かべる。
―宿りなさい、ベルゼビュート―
ユウカには羽が生え、肩には巨大な口だけの生き物が乗っかかる。
「おい、お嬢。今日の供物はどんなもんだ?」
巨大な口が声を発する。
ユウカに憑いている悪魔は『ベルゼビュート』。暴食の二つ名で呼ばれる魔王クラスの悪魔だ。能力は『吸収と消化』。単純で強力。
―喰らい尽くしなさい、ベルゼビュート―
「ちっ!天使かよ。もう食い飽きたぜ、この鳥もどきども」
そう言いながらもベルゼビュートはその大きな口で天使たちを食い千切っていく。
「アンリ、行けるか?」
「遠慮はいらないのだ!」
「じゃあ思いっきり振りまいてくれ。厄災を」
「結界の中なら遠慮なく振りまけるのだ!」
アンリの能力は『絶対悪』。
アンリはこの世の全ての不幸を生み出した悪神だ。限定空間であれば安全に最強だ。
病気で、天災で、不運で、心を病んで、その他諸々。数多くの不幸で天使たちは死んでいく。死んでは落ちていく。地面に向かって。醜い雨のように。
天使たちを皆殺しにして少し落ち着いたところで更なる増援がやってくる。今度はさっきの倍だ。
「こんな数の天使がやってくることなんて今まであった?」
「どうしてもシンを殺すか連れ帰りたいんだろう。まあこいつらの感じから察するに殺したいんだろうけど」
「どうするの?これじゃキリがないわよ!」
「いいじゃねーか。シンを連れてりゃコバエみたいに天使が寄ってくるんだ。この方が手っ取り早い。一匹一匹ちまちま殺すのに嫌気がさしてとこなんだ」
「だけど持久戦になったら不利なのは私たちよ!悪魔に憑かれていられる時間は限られてる!」
「俺にそういう時間制限はねぇ。アンリとは一心同体だからな」
「あなたはあなたでアンリ・マンユを完全に具現化してるために、彼女には睡眠が必要でしょうが!」
「わかってるよ。という訳で厄災を起こして俺とアンリは眠るからあとはよろしく」
「え!?」
「天使ってやっぱキモいな。そう思うだろ?アンリ」
「そうだな!キモいのだ!しかもいっぱいいて余計にキモキモなのだ!」
「じゃあ一匹残らず殺そうか」
「それがいいのだ!」
空を埋め尽くす天使の群れ。とてもじゃないが2人でなんとかできる数じゃない。だけども俺たちは笑い合った。
「大丈夫、俺たちはずっと一緒だ」
「もちろん!我らは一心同体なのだ!」
「それじゃあ寂しくないな」
「寂しくなんてさせない。ユキトは我の、私の最初で最後の人なのだ」
「ありがとう。俺もだよ」
「そうかそうか!これほどうれしい言葉はないのだ!」
「俺もだよ。じゃあ思いっきり暴れてやろうか」
「これが最後でも我は幸せだぞ!」
「俺もだよ」
「では一切の遠慮なしで暴れてやろう。この世界を滅ぼすぐらいのつもりで」
アンリはいたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「そうだな。いっそ滅ぼしちまうか」
「あ、でもチョコが食べれなくなるなるのは嫌なのだ」
「じゃあチョコだけは残してやろうか」
「あとケーキも残しておきたいのだ!」
「お前と一緒なら俺は何でもいいぜ。アンリの好きなようにやれよ。俺のしたいことはきっとそれなんだ」
「だからユキト大好きなのだ!」
俺はアンリと全力で厄災を振りまく。
「もう!無茶ばっかりするんだから!」
あとはユウカに任せた。最大出力で厄災を振りまくと後始末が大変だ。だけどユウカのベルゼビュートなら厄災ごと食べてくれる。
スズネの結界の中なら問題ない。という訳でおやすみなさい。
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