第3話 悪魔憑きたちの学園生活
ジリリリリリ!!!
「ユキト!起きるのだ!遅刻するぞ!」
アンリが俺の上に跨って起こしてくる。
「はぁ、めんどくせぇなぁ」
とりあえず起きて顔を洗い制服に着替える。一応俺は学生として高校に通っている。17歳の高校2年生だ。
別に高校に通う必要性もないが、どこにも所属していないのは社会で生きる上であまりよくない。
「で、アンリは今日も一緒に来るのか?」
「もちろんなのだ!我の定位置はユキトの肩の上なのだ!」
アンリは基本俺から離れることはない。だがさすがに学校に幼女を肩車していくわけにもいかない。アンリは完全に顕現してるので人の目にも映るのだ。だから学校に行くときアンリは自分で認識阻害と念話を使う。そういう訳で俺は毎日アンリを肩車して登校している。
「おはよう!ユキト!時間通りに登校なんて偉いじゃないか」
そしてめんどくさいことにこの学校には神殺しの槍(ロンギヌス)や聖十字協会(タナハ)の連中も通っている。
「はいはい、おはよう。ミナト」
神殺しの槍(ロンギヌス)の構成員はほぼ10代から30代で占められている。
だが別に大人になると力が失われるとかいったロマンチックな理由はない。むしろ年を重ねれば力は増していくだろう。だが先に心が壊れてしまうのだ。終わりの見えない戦いに、創造主が終焉を望んでいるという事実に。
だからこそ年を重ねても神殺しの槍ロンギヌスに所属している連中は本当の強者だ。特に強いジジババが3人いて『三原則』と呼ばれている。彼らは隊に属しはしない。仲間の死を見過ぎたせいか単独行動を好む節がある。だがそれでも十分な戦力であるため自由を許されている。『13本の槍』とはまた別の機関と言っていいだろう。
というわけで話は戻るが『13本の槍』に所属している者たちの半分ぐらいはこの学校に通っているのだ。ああ、うっとおしい。
「今日もアンリ様を肩車して登校かい?」
「我とユキトは離れられない運命なのだ!わははは!」
「お二人はお似合いですもんね」
「そうであろう!そうであろう!わははは!」
「朝からアンリのテンションを無駄に上げてんじゃねーよ」
「僕は本心を言ったまでだよ」
そう言ってミナトは胸焼けしそうなぐらい爽やかな笑顔でこちらを見てくる。なんで同じ孤児のくせにこんなすべてに恵まれてきたかのような100パーセントの笑顔ができるんだ?こういうところが昔から気味が悪い。
「おい!今日も幼女担いで学校来てんのかよ」
後ろから声をかけてきたのはミツキだ。こいつは常にむかつくが、ザ・孤児って感じのひねくれ方をしてるので安心する、
「このくそロリコンやろーが!」
あ、ダメだ。やっぱこいつはこいつで今すぐぶち殺したい。
「幼女じゃないわい!我はお前らなんかの何万倍も年上なのだぞ!崇めるがよいのだ!」
アンリが胸を張る。俺の肩の上で。人の肩の上であんまり動かないでほしいんだけど。
「とにかく予言の件もあるから何かあったら教えてくれ」
「ぽっくり死ぬんじゃねーぞ!ははは!」
「わかったよ、何かあったら知らせる。そんでもってミツキ、お前はこの場でぶっ殺してやるからかかってこい」
「おう!望むところだ!」
「二人ともやめなよ。ここは一般人も多くいるんだ。それでもやるというなら、僕は君たちに互いの目玉を食べさせ合わすしかなくなるよ?」
「目玉を食べさせ合わすしかないってどんな状況だよ。いろんな段階ぶっ飛ばしていきなりラグナロク行ってんじゃねーか!」
とりあえずバカとサイコパスと折り合いをつけて俺たちは各々の教室へ向かう、本当にあいつらと同じクラス出なかったことだけは神の野郎にサンキューと言っといてやろう。
俺のクラスは2年B組。まあ最悪の事態は回避したが、完全に平和なクラスというわけでもない、
「ユキト!待ってたわよ~。早く座って~。今日はお弁当を3つ作ってきたの!早速一つ目食べて~」
「お前、キャラブレブレじゃね?」
「隊長の時の私はお仕事だもの!こうやって学校でユキトといるときの私が本当の私よ!」
教室に入ってすぐに抱きついてきたのが、ユウカ・イチジョウ。十二番隊『猪突』の隊長だ。隊長と学生の時では大分雰囲気が変わる。なぜか俺の事が好きらしく妙にベタベタしてくる。だが好かれるような心当たりが全くないから話し半分に聞いてはいる。
まあそれよりここからがめんどくさい。
「女!我のユキトにベタベタするでない!」
「ちっ!いちいち私とユキトの邪魔をしないで!悪魔のくせに!」
「何を言っておるか!我とユキトはまさに一心同体!一生を共にするのだ!えっへん!」
アンリが胸を張る。俺の肩の上で。しんどいからあんまり肩の上で動かないで欲しい。
「悪魔め!いつかお前からユキトを解放してやるんだから!」
「やれるものならやってみい!ふはははは!」
「余裕ぶってられるのは今のうちよ!ねぇ!スズネ!」
「はい、お嬢様。というかユキトさんまだ生きてたんですね。はぁ、忌々しい」
そしてスズネも同じクラスだ。スズネはユウカの家に使えている祓魔師の一族で、本来ならユウカにつく祓魔師となる様に育てられていたのだが、選ばれた剣・・・・・が特異だったために俺担当の祓魔師になった。それがここまで異常に俺に殺意を抱いている理由でもある。
「お前は本当に俺に死んでほしいのな」
「はい、あなた達が死ねば私はお嬢様の祓魔師になれるのですから」
「いや、そうとは限らんだろ」
「スズネ!いつもありがとう!これからもユキトのそばでよろしく頼むわね」
「もちろんです。お嬢様」
「アンリにイジメられたりしてない?」
「いえ、まさに理想的な職場です」
「それならよかったわ。無理をさせてるのかもと思って」
「そんなことありません!お嬢様が気に病むことなど欠片ほどもございません!」
スズネが焦ったように捲し立てる。いつもの辛辣なスズネに慣れていると、何と言うか、うん、キモかった。
「うん、キモい」
「ユキトさん、今『死にたい』と言いましたか?」
「どういう耳してんだよ。お前一回精神を診てもらって来いよ」
「くそ!今すぐ殺したい」
「もうやだよ、こいつ。俺に付けるの止めてくんない」
「ぐーぐーぐー」
そんでもっていつも通り、いつの間にか、当たり前のようにアンリは寝ていた。もちろん俺の肩の上で。
「よう、ユキト!今日も女の子たちに囲まれて羨ましいな」
話しかけてきたチャラそうな男はイイダ。帰りにマックに一緒に行くぐらいの仲だ。
「僕には大変そうに見えるけど」
こっちの小柄で頭のよさそうなのがマエダ。帰りにマックに一緒に行くぐらいの仲だ。
「マエダの言う通りだ。イイダは本気で女に命を狙われたことないからそんな暢気なこと言えるんだよ」
「あんなに可愛い子になら狙われてみたいぜ」
「だからクソチャラゴミ野郎って言われるんだよ」
「本当だよ。チャラヘッチャラ男」
「いやそこまでは言われてねーだろ!」
「「・・・」」
「え、言われてないよね?」
「「・・・」」
「マジ?」
イイダとマエダは俺にとって数少ない一般人の友達だ。
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