第2話 神様

「私は地球の女神ガイアソフィア。よろしくね」

「えっと、よろしくお願いします」

「今、本当かよ?って疑ったわね」

「いや、そういうつもりじゃなくて」


 単純に状況に追いつけていないだけだった。この女性はものすごい美人だし、声も綺麗だし、神様だって言うし……。


「ガ、ガイアソフィア様?」

「えぇ、そうよ」

「もし神様なのだとしたら、どうしてこんな所で泣いていたのですか?」

「そう。それなのよ」


 そのままガイアソフィアと名乗る女性は、経緯を語ってくれた。


 どうやら彼女は本当に地球の女神らしく、かつて昔は多くの人に信仰されていたが、近代化するにつれて信者が減っていって、今では0人らしい。どうしてそうなってしまったのか訊くと、世界中の人が地球の女神はガイアだと勘違いしているのが一番大きいという。


「ガイア様はいい神様なんでけどね……。そのせいで私は力をなくして、とうとう下界まで堕ちてしまったのよ」

「そ、そうなんですか……」


 話が壮大すぎてついていけないが、要するにこの女性は本気で自分のことを神様だと信じているということはわかった。


「まだ、疑っているわね?」

「すみません。でも、あまりにも突拍子のない話で……」

「仕方ないなぁ。私の力見せてあげる」


 そう言うと彼女は僕の知らない言語で空間に話し掛け出した。何がしたいんだろうと不思議に思っていると、急に鳥たちが四方八方から羽ばたいてきて、彼女のもとに集まっていった。


「どう?すごいでしょ」

「た、たしかに……」


 僕の一目惚れした女性は、本当に神様なのかもしれない。


「あのねぇ。まだ疑っているの?」

「どうして分かるんですか?」

「そりゃ、神様だもん!」


 先ほどからガイアソフィア様に思っていることを当てられることが多いと感じていたが、もしかしたらこの人は人の心を覗くことができるのかもしれない。


「Yes」

「なら、それやめてもらってもいいですか?」

「どうして?」

「そりゃ、恥ずかしいからですよ」

「分かったわ。今度から覗かないどく」

「お願いします」


 ここで重大なことに気づいてしまった。本当に彼女に人の心を覗く力があるのなら、僕の芽生えたばかりの恋心もバレてしまったのではないか。


「Yes」

「だから覗かないでって言ったでしょ!」

「気になるものは気になるの!あと、神様を愛するってことは信仰心が強いってことだから、私としてはオッケーよ」

「あなたはデリカシーがないのですか?」

「それは人が作った物差しでしょ?私知らない」

「知ってるじゃないですか!」

「分かった。こうしよう」


「君が私のことを信じてくれたら、心を覗くのをやめてあげる」

「なんですか、それ」


 正直に言うと、僕の中でもう答えは定まっていた。深呼吸を一つして言う。


「信じますよ、ガイアソフィア様」

「やったぁ!信者一人目!」


 僕の信じる神様は、本当に美しく笑った。

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