▼間章・登場人物紹介(ネタバレあり)

#ユキト

主人公。間章では途中までほとんど出番がないのに最後の最後にかっさらっていったやつ。


#アイーゼ・リリエス

リリエス男爵家の長女にして士官学院四回生。間章の主人公。

『貴族として』と見栄を張り、無理矢理婚約を仕組まれた一方で、婚約破棄のため、同時に父と母の目を醒ますため、戦技大会本戦での優勝を果たし貴族になることを願う。

何を考えているか分からない不思議ちゃんに見えるが、学業も優秀。相当な優等生かつ真面目であり、ステーリアに課された修練もきちんと果たし、設置型魔術【紅炎天華スカーレット・アルニス】を生み出した。

彼女の望みは何よりも『妹を守ること』であったが、それでもなお、家族で過ごした大切な記憶からか『父と母を見捨てる』ことが出来なかった。

妹であるミミの婚約話が持ち上がり、急ぎ帰郷。結果として、ミミの婚約破棄、そして次期女男爵としての立場を確立する。(なお帝国において、女性が当主という貴族は少ないが、特に問題視されたり、奇異の目で見られることはない)

なお、卒業までは代理人が領地運営をする模様。もっともリリエス家の領地はいずれ帝国に返還されることになるのだが、その領地運営が評価されれば、執政官として役割が継続する可能性が高い。


#ステーリア・マインフォート・アリオルト・ローゼンクロイツ

【容姿】長い亜麻色の髪の先をリボンで結んだ、可愛らしい容姿の幼女……少女。

【性格】超がつく猫かぶり。シルトの前ではいたいけな幼女を演じるが、その実ヤンキーも真っ青な荒々しい性格。

【人物詳細】

若干二十二歳にして帝国における魔術の最高峰、『十二階梯エル・アディール』の第八席に座る若き天才魔術師。その二つ名は『薔薇十字ローゼンクロイツ』。

帝国でも最強の一角を誇る、第一線で活躍する実戦魔術士。

幼い頃から尋常ならざる魔力の制御術を本能で身に着けており、『バケモノ』と畏れられていた。さらに六年制の帝都魔法大学をたった三年で飛び級卒業する知能の持ち主で、魔術への造詣も本物。本人いわく超天才らしいが、その名乗りは全く偽りでもなんでもなく、マジの超天才。

大陸でも屈指の実力者であるがゆえに顔が広い。

幼い頃、彼女が『十二階梯エル・アディール』に選ばれたことで周囲の態度が忌避や嫌悪から媚びるものに一変するも、唯一、幼い頃から変わらず接してくれるシルトに深く依存し、同時に深く愛している。

また、日々研究予算で貴族と敵対しており、過去のあれこれもあって、貴族を嫌っている模様。本人曰く『貴族権威の巣窟』である魔導展覧会での講演を毎年断っているのも、そういう理由らしい。

彼女の代名詞でもある秘術『十字羅列砲台クロス・ヴェルト・プリズム』は本人いわく「超すっげー必殺技」らしい。相手は死ぬ。


#ミミ・リリエス

【容姿】褐色の肌に銀髪、姉と同じ碧色の瞳を持つ。可愛らしい少女。

【性格】家族のことを愛しており、特に姉への愛情が深い。芯が強く、したたかな一面も。

【人物詳細】

リリエス男爵家次女。14歳。

外見的特徴は、非常にアイーゼに似ている。アイーゼよりも活発で饒舌な一方で、やや人見知りする一面も。

アイーゼ以上に芯が強く、その愛情深さゆえに、自己犠牲的な一面を持つ。非常に愛情深く、どんな状況になっても大切な人たちの幸せを願う、まるで聖母のような人物。

打算的、現実的な一面もあり、ある意味アイーゼよりも大人な性格をしているとも言える。恐らく地頭は相当に良く、もし高度な教育を経れば相当な淑女に成長するだろう。

以上のように、シェリーに似た一面があるため、アイーゼとシェリーが親友になったのも、恐らく彼女の影響が強い(本人たちは気づいていないが)。

最終的にユキトにアプローチをかけていたのは、姉への援護射撃のつもりらしい。もっとも、アイーゼ自身、そういった感情は持っていないようだが……。


#オーギュスト・リリエス

【容姿】褐色の肌、金色の髪、碧色の瞳。身なりは良いが、威厳はあまりない。

【性格】やや情緒不安定。自信家のように見えるが、それは虚飾に過ぎない。

【人物詳細】

リリエス男爵家当主。かつてユグライル王国を裏切り、亡命したリリエス家の二代目。実際に亡命したのは彼の父であり、第一次ユグライル戦争から第二次ユグライル戦争までの間、四~五十年ほど前だと思われる。つまり彼が生まれるかどうかの頃である。

当時のリリエス家当主は相当有能だったようで、第二次ユグライル戦争で戦果を挙げて帝国貴族に封じられ、領地までも与えられている。

その血を引く彼はというと、貴族としても政治家としても、軍人としても優秀ではないものの、領地の民衆と心を通わせ、共に歩むという堅実な領地経営を行っていた。実際に、領地では今なお男爵家に対する尊敬の念は篤く、距離感も近い。

その全てが狂ったのは、投資詐欺によって莫大な借金を背負ってからである。

多くの貴族に顔を繋ぎ、『ドブネズミ』と笑われながらも、どうにか借金を返済するために奔走していたが……いつしか心が折れていったのだろう。

本来は少し気弱ながら心優しい、良き父、良き領主であったが、その面影もなく、貴族としての建前と金ばかりに腐心していった。

彼が『戻れる』かどうかは、神のみぞ知るのだろう。


#フェニア・リリエス

【容姿】褐色の肌、銀色の髪、碧色の瞳。険しい表情を常に崩さない。

【性格】厳しい教育ママという印象。

【人物詳細】

リリエス男爵夫人。アイーゼたちの母。外見はアイーゼに似ているが、性格は全く異なる。元はリリエス家と共に亡命した女性で、オーギュストとは幼馴染だった。

夫が投資詐欺に騙され、莫大な借金を背負わされた後、どうにか一緒に頑張って返済しようとしていたが、真っ当な手段で返せるものではなかった。またリリエス家を取り巻く「裏切り者」という状況がそれを許さなかった。

心が弱い夫を献身的に支えていたが、いつしか彼女もまた余裕を失い、心を崩していった。

元の性格は、非常に愛情深い性格。芯が強く、アイーゼとミミの性格はおそらく彼女譲りと言える。

叱咤の強さも、アイーゼやミミの婚約も、実際に彼女たちを想ってのものであると自分自身に信じ込ませていた。しかしその視野の狭さを娘たちの想いから気づかされることになる。

その後、元の穏やかな生活に戻り、領地経営の手伝いと夫の看病を往復する、慌ただしい日々を過ごしている。

徐々にではあるが、娘たちの関係も改善しつつある模様。


#エニャ

【外見】深緑色の髪をしたボーイッシュな少女。一見すると少年にしか見えない。

【性格】姉御肌。男勝りで竹を割ったようなからっとした性格。だがその一方で、繊細な一面も併せ持つ。

【人物紹介】

アイーゼの幼馴染の一人。

ボーイッシュな少女だが、かわいいものが好きなど女性らしい一面もある。

アルナス村では数少ない魔術士の一人で、貫通性のある紅い光を放射するという非常に珍しい魔術を持つ。

トールと二人で、アルナス村自警団として活動している。活動内容は近隣の森や山の警戒、魔物の退治などである。たった二人なのは、アルナス村に若い子供がほとんどいないため。もっとも山狩りなどは村総出で行うらしい。

両親とも健在だが、父が出稼ぎ、母は畑仕事のため、ほとんど家にいないのもあって比較的自由な教育方針だった模様。ちなみに朝早くや夜、自警団が休みの日は畑仕事を手伝っており、家族仲は良好。

アイーゼにとって『姉』ともいえる人物で、女性らしさに無頓着なアイーゼの面倒を見ていた。化粧なども教えてあげたようだが、本人は『似合わないから』という理由で滅多に化粧をしない。

アイーゼが出奔した際には、事情をほとんど知らなかった。だが後に知った時に、アイーゼが自分を巻き込まないようにしたことも悟り、何も出来なかった自分に後悔を抱いていた。


#トール

【外見】短く刈った金髪、筋骨隆々とした男性。

【性格】ガサツで真っすぐな猪突猛進型。思ったことをすぐいうタイプ。

【人物紹介】

アイーゼの幼馴染の一人。

純粋というか単純というべきか、エニャいわく『馬鹿が服を着て歩いている』性格で、実際にその通り頭も悪い。

だがその真っすぐな性格ゆえ、悪ガキではあるが村人たちからは好かれている。

幼い頃、自警団員であった父親が魔物によって殺害されている。

たびたび夜に家を飛び出てうろつくなど荒れていた頃もあったが、そのたびジェイの父である神父に説教を受けていた。悪態をついていても、心の底では、そのことに感謝しており、神父を父のように慕ってもいる。

大切なもののためならば躊躇なく自分の命を差し出すことの出来る男でもあり、ユキトはそれを『英雄の素質』と感じている。

それは同時に危うさでもあるが、恐らく彼の周囲が、培ってきた絆が、それを押し留めるだろう。

ユキトの強さに憧れ、短い期間ではあるが彼に剣と心構えを習っている。


#ジェイス・オード

【外見】黒い髪、青い瞳、やせ型の少年。それなりの美形で、いわゆる可愛い系男子。

【性格】慎重派。頭の回転も速く判断力にも優れる。ただし、あまり自分に自信がないタイプでもある。

【人物紹介】

アイーゼの幼馴染の一人。

双月教の神父であるラルカ・オードの息子。

実はラルカ神父は元巡礼神父という過去があり、その父から聖印を受け継いでいる。聖印を受け継ぐ者は、二十歳になると教国総本山で数年間修行しなければならないため、彼もまたその運命にある。設定だけなら主人公張れそうなわりに影が薄い。

超高難度の『転移』を実戦で成功させるなど、聖術に関する才能は天才的なものがあり、また唐突な実戦の中でも冷静な判断を欠かさないため、将来的にかなり有望な術者である。

そうした立場のため隠し事が多く、その後ろめたさからも、現在ではトールたちと少し距離を置いている。だが彼がトールたちと離れた最大の理由は、やはりアイーゼの出奔、その後悔からであろう。特に彼はアイーゼの婚約を知らされていたため、その後悔は相当に大きなものだったと思われる。


#ラルカ・オード

【外見】白髪、青い瞳。高齢であるが、姿勢がしっかりしているためか、かなり若く見える。

【性格】温厚で丁寧な物腰。しかし叱る時にはしっかりと叱る。

【人物紹介】

ジェイスの父にして神父。元巡礼神父(いわゆる教会の秘密調査員のようなもの)であり、外見と裏腹に実は相当強い。実は代々村に住む人物ではなく、十五年前に教会から派遣されてきた。

ジェイはかなり遅くに出来た子供であり、年齢差はかなりのもの。なお母親は不明。

かなりの修羅場を渡ってきたためか、非常に幅広い知識を持ち、時折村の子供たちを集めて青空学校を開いている。

当然、アイーゼたちもその生徒であり、全員が彼には頭が上がらない。

また医術の心得もあり、薬草を調合しては村人に配ったり、出歩けない老人のために出張で検診や治療を行ったりもする。

十五年前に村に引っ越してきたにも関わらず、その人となりや献身的な姿勢から村人全員の尊敬を集めており、村の代表的な人物ともいえる。そのため、村と領主であるリリエス家の間に立ち、交渉を行う役目を担うことも。


#ランド・ラネス

【外見】少し白髪のある黒髪、褐色の肌。

【性格】常に無表情で、丁寧な物腰。

【人物紹介】

リリエス家の家令。

家令といっても、給金などほとんどなく、近くにある家で畑を耕し暮らしている。

時折村人たちに差し入れをもらったりしているようで、暮らしは豊かとはいえないまでも、貧しいわけでもないようだ。

およそ四十年前、祖父に連れられリリエス家と共に亡命する。しかし亡命の途上で祖父を失い、亡命してすぐの頃に母も死亡している。また母が死亡した頃、父はリリエス家の当主と共に戦場に出ていたようで、その死を一人で看取ったようだ。

その後、父と共にリリエス家の執事、家令として尽くし続ける。父は非常に厳しかったらしく、彼に子供としての甘えを許さなかったという。その教育は虐待にも近いものだったようで、それは彼が死亡するまで続いた。

その後、十数年前に帰郷した時に、故郷は焼かれ、幼馴染が理不尽に殺されていたことを知る。

ひとつひとつは、わずかな絶望の種であったのだろう。だがそれがいつしか、彼の心の中に影を落とし、憎悪という深い闇を作っていったのだろうと思われる。

家令という身でありながら貴族と共謀したり、今回の事件を仕組んだりしながらも、一切露見しなかったことからも、能力的にはかなり優秀な人物だったようだ。

リリエス家の幸福な家族像に憎しみを募らせながら、その一方で、悲しみと絶望の中でもなお諦めることのなかったリリエス姉妹を見続けたことで、彼女たちの願いが叶って欲しいという願いを抱くようになる。

憎悪と憐憫、そして罪悪感の板挟みとなって、いつしか彼の心は壊れていった。

リリエス姉妹に対しては憎しみではなく、愛情をもって接していたのは確かであり、碌な食事さえも与えられない二人を献身的に世話していたのも彼である。父と母に元に戻ってもらおうという二人の行動も、影ながら支援していた。

家族の愛情というものをろくに知らずに育った彼は、家族への愛に、誰よりも憧れていたのかもしれない。



◆次回予告

双月祭に行われる戦技大会本戦が、ついに始まる。

士官学院では例年と同じく、戦技大会の応援を兼ね、全校生徒による帝都への修学旅行が行われることに。

『万華の都』帝都アレクハイム。

時代の最先端を行く北大陸最大都市。

双月祭によって華々しく彩られる帝都で、訪れる新たな出会い。

ユキトたちはまだ知らない。その裏で――帝都の光に潜む影が、悍ましくも蠢動を始めていることに。


剣は語る。

愛を、死を、そして想いを。

譲れぬからこそ、叫ぶのだ。

たとえその先に待つものが、悲劇と知っていても。


第二章『その剣は誰が為に』

――激動と交錯の帝都編、開幕。

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