#10 ~ 出会い
(銃声が離れていく? でも――)
森を駆けながら、離れていく銃声に首を傾げ、気配を探る。
(いや、一人残ってる。魔物もそっちに……囮か?)
銃は気になるけど。
どう考えても、残っている一人がピンチに思えてならない。
勝手に乱入したら怒られる、というか敵対視される可能性もなくはないが、いや、見殺しにするのはどう考えてもアウト。
(数は、クマが一、オオカミ多数っと!)
――歩法、天歩。
宙を駆って直進、さらに加速して――捕えた!
刃を落とす。
クマの首が、何の抵抗もなく宙を舞った。
「えっ?」
今にもクマと剣を交えようとしていた、一人の女性。
そのすぐ横に立って、一言「助太刀します」と告げた。
……うわぁめっちゃ美人だよ。どうしよ。
「横殴りとか何考えてんだ、あ?」とか言われたら……いやネトゲじゃないんだしそんなわけないよな。
「その、大丈夫ですか?」
「は、あ、え、はい」
混乱しているらしい彼女に声をかけ、安全を確認。
怪我らしい怪我はしてなさそうだ。服や顔は汚れてるけど、傷は見当たらない。
「えーと、狼のほうも片づけますね」
とりあえず魔物は死すべき慈悲はない、だ。こいつらがいると落ち着いて話もできない。
――歩法、
流れるように、包囲を狭めようとしていた狼の眼前に歩を進める。
白水は、簡単に言うと意識の間隙をつく歩法だ。相手の呼吸を読み取り、急速な加減速を用いた特殊な歩法によって、意識の裏側に回り込む。
相手にしてみれば、気が付いたら目の前にいた、となる。
こうなってしまえばもう終わりだ。
振りぬいた刃が簡単に狼の首を斬り飛ばし、他にいた十匹も同様に斬り飛ばしていく。
瞬きほどの間に、狼の死体の山が出来上がった。
チン、と音を立てて刀を鞘に納め、俺は小さく息を吐く。
女性の方に振り向いて目線をやると――あからさまに、少女は顔を引きつらせていた。
「……ハンターの方ですか?」
「ハンター?」
首を傾げると、その目にあからさまな警戒の色が宿る。
やっべぇめっちゃ警戒されてるよ!
「えっと、通りすがりの者で、戦闘音が聞こえたから――あ、俺は向こうの山に住んでたんだけど」
「山? 住んでた?」
「そ、そうだけど……」
じー、と見つめられて、思わず目をそらしてしまう。
美人に警戒の目で見つめられるのって、なんでこんな緊張するんだろうな!
「……失礼しました。それより、助けていただいて本当にありがとうございます」
「いえ、こちらこそ……」
何がこちらこそなのか。
頭を下げ返してあちこちと目線をさまよわせていると、
「ふふっ」
という小さな笑い声と共に、彼女は手に持っていた細身の剣を鞘にしまう。口元に手を当てて小さな笑みを浮かべていた。
「本当にごめんなさい。凄まじい戦いっぷりだったから……助けていただいたのに、失礼な態度をとってしまって」
「あ、いや、ダイジョウブっす」
なんでそんな口調なのかって? 緊張してるんだよ! めっちゃ美人だから! どどどど童貞ちゃうわ!(妄言)
「イリア・オーランドと申します。この度の救援、誠にありがとうございました」
「あー……ユキトといいます。そんなにかしこまらなくても。多分、同年代だと思うし」
お互いに頭を下げて自己紹介。イリアさんかぁ。名前も美人っぽいなあ。
歳は十八か、二十歳にはなっていないだろうか。凛とした風貌の女性だ。金色の髪、涼やかな緑色の瞳、絹のように白い肌、もし日本にいたら大騒ぎされること間違いなしの美少女である。
「では、私のことはイリアと」
「じゃあ俺のこともユキトで」
握手をかわし、涼やかな笑みを浮かべる彼女に思わず見惚れてしまいながらも――ふと、背後から迫る気配に気づいた。
「あ、救援が来たみたいだ」
俺がそう言って振り向くと、その数秒後、木々の向こうから十数人でこちらに向かってくる姿が見えた。
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