104日目 ビビア(3)

「あっ、そ、そうだ。そういえばあの動画視て思ったんだけど、ダメ元でびーちゃんに頼みたいことがあって」


 私が落ち込んでいると、きーちゃんは愛想笑いを浮かべて話を逸らしてきた。うう、こんなときでも人に気を遣えるだなんてなんていい子なの……。

 あからさま過ぎて涙を誘うけれど、でも、きーちゃんが頑張って私を励まそうとしてくれてるんだものね。私は無理矢理笑顔を作って、きーちゃんの思いやりに乗っかることにした。


「う、うん。なになに。私にできることなら何でもやらせて」

「あの、あのね。もし。もし可能なら。もし万が一にでも、まだ買い手が決まってなければ。……動画で作ってたあの衣装セット、私が買い取りたいんだけど……ダメかな?」

「へ? そんなこと? うん、いいよ」

「ほんと!? 嬉しい、ありがとう!」


 ぱあああっと輝くような今度の笑みは、作ったものじゃない心からのものであることがまざまざと分かった。自然、私も嬉しくなる。


 でもちょっと意外かも。きーちゃん、ああいうタイプの服が好みだったんだね。

 勿論似合うと思うけど、彼女はいつもカーディガンにチェックのプリーツスカートというJKスタイルだもので、なんか他の衣装で想像が付かなかった。

 そう言うと、きーちゃんはやや慌てる。


「あ、あ、ごめんね。その、実は、買いたいなって思ったのは、プレゼント用なの」

「プレゼント! へ~」

「えっと、しかも、ご、ごめん。私なんかほんと、思いつきで凄く失礼なことを……。あああ、やっぱなし! 今のなし! 何でもないから、忘れて」


 え、急にそんなこと言われても気になるよ。どうしたの?

 私、プレゼント用だろうと何だろうと、全然あの衣装セット売るよ?


 するときーちゃんは顔を真っ赤にして俯いて、ぽそっと呟いた。


「うう。実は、いいな、プレゼントしたいな、って思ったのは、スキルが魅力的だったからなの」


 あ、そーゆーこと。

 納得する私を前にして、きーちゃんはわたわたと弁明する。


「その、勿論見た目も凄く素敵だよ。けど、贈る相手が男の子でね?」


 ――――――OTOKONOKO!!


「である以上、どうしたってスキルに目が眩みましたとしか、言いようがなくって。ごめん、あのポシェットに付いてる時限スキルがあんまりにもその子にぴったりで、よく考えず口走っちゃった。私ったらオリデザ生産者さんになんて不躾なことを……」


 ボーイフレンド発言でクリティカルヒットを食らった私に何を思ったのか、きーちゃんはひたすらに頭を下げてくる。

 いや、私はそんなことはどうでもいいんだよ。


 確かに私利私欲丸出しで「スキル付き求む!」ってリク投げ付けてくる見ず知らずの人達にはイラッとくるときもあるけど、それとこれとは全然別の話である。

 何せきーちゃんとの間には持ちつ持たれつな関係値がありますから。

 多少無理を強いるような頼みでも私にできることなら聞いてあげたいな、くらいには思ってるし、であれば尚更、既に完成してて未だ買い手も決まってない服を売ってほしいだなんて簡単なお願い、断るわけがない。


 断るわけが、ないんだけど――――――OTOKONOKOですか、そうですか……。うぐぐぐ、いやっ!

 きーちゃんは大事な友達だもの! 劣等感と羨望に目が眩むがあまり、幸せを願えないでどうする私!

 いいですよ売りますよ。それできーちゃんと彼の幸せなひと時に花を添えられるというのなら、快く協力しますとも、コノヤロー。


「あ、あの、一応誤解を生まないように言っておくけど、その子私の身内というか何というか……えっと、はっきり言っちゃうと、弟だからね?」


 え? 弟?

 なんだそれならそうと早く言ってよ~。

 衣装セットをその子に贈るんだ? うんうん、全然いいよ。

 仲良しでほっこりするね。友情割引サービスしちゃう~。


 ――――――あっ。っていうか、それならさあ。

 と、一つの閃きが喉元まで上ってくるも、私は寸でのところで口を噤む。


 や、折角弟さんにプレゼントするんなら、男の子用に衣装、作り直そうか? って提案しようと思ったんだよね。

 何せ今の私にはスキル【必然アルスマグナ】があるもので、以前発生したのと同じスキルを別のアイテムに付与することも可能となっている。

 けどぎりぎりとどまったのは、それが“確率”で成功するものだから。さすがに「成功するまでその子のための服を作るよ!」とは言えないし、きーちゃんからしてもそれは重く感じるだろう。


 だから私は必然のことは伏せつつ、別の提案をすることにした。




******




【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(非公式)・初心者さんどうしで情報交換する部屋・わいわいまったり・交流・クラン、PT勧誘など自由にどぞ(*'ω'*)】



[gonta32]

>>つららE

同じくブティックさん動画から始めました!


[RuRuNa]

俺もブティック動画視て購入決めた

友達がめっちゃこぐにのほう勧めてくるから悩んでたけど、後悔はない


[環奈]

色々職業があって作れるものできることが違うってかんじなんだね

Bさんに憧れて服作る気満々でいたけど、結局獣使いになっちゃった

早くブーツキティズ飼いたいな~♪


[ジンギス]

初めてお店に来てくれたシエルシャンタ、めっちゃ可愛い

連れて歩けるデートイベあるってマジか


[志詩]

俺はストレートにリル派

パッケージに描かれてるやつより実物のがずっとふつくしくて感動


[あやかた]

>>環奈

自分は当初の予定通りちゃんと仕立屋になったよ

けどあの動画みたくがっつりリアルテイストで生産やるものと思いきや、もっと楽に作れるオリデザ機能?あるっぽいね

こだわる人はこだわるんだろうけど、自分はこっちで十分だわ


[おかし]

オリデザ機能、こぐにより全然自由度あっていいよね

リアルで生産できる人でないと難しいのかなーって思ってたけど、俄かな自分でも簡単に色々作れて楽しい


[Matchan]

てっきりこぐにみたいな完全生産特化のスローライフゲーなのかと

ちゃんと冒険面も充実してんのな

結局細工師リセットして狩人になったわ

コミュ障だからNPパーティシステムあんの助かる


[りんこ]

生産にしても何にしても、VR内で自分の行動が細かいところまでちゃんと結果になって表れるっていうのがほんとに凄い

まさに仮想現実ってかんじ


[抹茶jk]

なんか街の門とかフィールドの入り口とかでクラン勧誘してる人増えてきたね

みんなはプレイヤーズクラン入る?


[みかち]

入ったよ~

女子限定の交流主体クラン

とりあえず一週間どう?ってことだったから、お試しで


[EC]

基本無言効率重視な遠征クラン入ったわ


[な]

このゲームのクラン、目的というかポリシーみたいのが独特な大手多くておもろいね

もも太郎金融、情報屋、国境なき騎士団、この辺で迷ってるわ


[環奈]

きまくら。改革委員会、みんな親切で初心者にも協力的でお勧めだよ~

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