93日目 情報屋(後編)
入口から見て、左に三人、右に三人。綺麗に整列した男達が、こちらへ向けて一斉に頭を下げる。
気分は新装開店したパチンコ屋の店員達に迎えられる敏腕オーナーかのよう。知らんけど。
ひえー、やっぱりアミューズメントパークだった!?
それにしてもこの対応はかなりの解釈違い! どうせやるんなら、もっとニヒルでハードボイルドなロールプレイにしてほしかったよ。
しかもね、もっと変なのが、全員同じ格好のみならず、全員同じ容姿容貌なの! 髪型から肌の色、背格好まで、みーんな一緒。
且つそのキャラクターデザインが、わざわざ合わせるまでもないような無個性さなのだ。
西欧風RPGで出てくる町の人Aみたいな、いわゆるモブ。絵に描いたようなモブ。
実際ここレスティンですれ違ったとしても、九割方NPCだと思うんじゃないかなあ。
声だけがそれぞれ別物なもので、中の人がちゃんと別個に存在するプレイヤーなんだってことは辛うじて分かる。けどだからこその
と、戸惑う私に、先のモブ娘さんが肩を押し、手を伸べるジェスチャー。
「皆あなたが来るのを待ち侘びておりました。ささ、どうぞこちらへ」
執事喫茶? 執事喫茶とか、メイド喫茶みたいなテーマで営業してるのかな。
だったらもうちょっとキャラクリ頑張って、分かりやすくイケメン美少女揃いにしてくれてもいいのにね。
そうして通されたのは
ドーム型の空間になっていて、硝子張りの天井からさんさんと陽の光が注いでいる。
中心から渦を描くように部屋を巡る螺旋階段に、英字新聞を模したような柄の小洒落た絨毯。重厚感のある木製ケースの中には、年季の入った書物やファイル、骨董品などが収まっている。
えっと……もしかしなくてもこれって、今からぼったくられる流れ?
リンちゃん、私のこと何て言って紹介したんだろ。私、情報を広めてくれるようちょっとした相談しに来ただけなんですけど……。
とはいえ今更やっぱ帰りますとも言いだせず、私はアンティーク調のソファに勧められるがままに腰を落とす。
対面に座ったのは、モブ男さんの列からすっと抜け出てきた一人。うん、勿論見分けられてはいない。
「お越しいただき大変嬉しく思います、ブティックさん。初めまして、情報屋のクランマスター、[ゆうへい]と申します」
にっこり笑んで、慣れた動きで握手の構え。そこはかとなく胡散臭い雰囲気がある。
いや、仮にこの人単体がもっと事務的な応接室で同じことをしようものなら、そうは思わなかったかもしれない。でもこの状況で、同じ顔が後ろに五体並んでてってなると、もうどんな表情どんな仕草も胡散臭くなるんだろうね。
っていうかこの人今“クラマス”って言った? ……リンちゃん、「ブティがこれからウルトラスーパー超絶レアでリッチで天地が引っ繰り返るような情報持って行きますんで」とか何とか言ったのかな!?
そして先のモブ娘さんにより、抜かりなく並べられていくお茶やお菓子。いいにおい。
きまくら。内での飲食はほんのり香りを感じる程度のもの。でもこうやって目に楽しいカトラリーや綺麗で美味しそうなお菓子のセットがあると、テンションは上がるよね。
最後にどこからかとたた、とやってきた白い長靴
問答無用で膝に乗ってきたかと思えば、いきなりヘソ天ですよ、ヘソ天。ふっくら上下するお腹に目が釘付けなワタクシ。
しかもいつの間にか同じ柄の猫ちゃんがもう一匹ソファに登ってきてて、私に寄り添って体を丸めてるの。
え、え、どうすれば、これ、どうすれば。
自我がメロメロに侵食されていく前にと、どうにか視線を猫ちゃんから引き剥がし、無言の圧をかけてきているモブ男さんモブ娘さんに助けを乞う。
モブ娘さんは仰った。
「私をフレ登録すれば接触可能、つまり触り放題です」
ひゃっはーなんかよく分かんないけどもうどうでもいいや。ぬこぬこばんざあい!
******
【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・デートイベントについて語る部屋】
[にゅー]
ずっと一途にリル派だったもんで、生のシエル見るのぶっちゃけこれが初めてだった
なんだ可愛いじゃん
[とりたまご]
>>にゅー
相手誰?
男?女?
[にゅー]
コハクさんとかいう人
女
[とりたまご]
ありあり
女なら画像見れるわ
[ゆう_]
シックな袴女子いいですなあ
ビャクヤの景色によく合いますわ
[イーフィ]
和傘で相合傘、映えるな( ˘ω˘ )
[アリス]
今回もB監修かな?
[レナ]
一部Bアイテム取り入れてるけど専用でトータルデザインではないっぽいね
[檸檬無花果]
すぐ分かるのすご
[9tate]
なんだ違うのか
シエルの衣装は全部自分で作るくらいのことはしそうなのに
[マ ユ]
まあ普通に頼まれてない可能性も大いにあるからね
[コハク]
リクしてはいたけどスルーされちゃった(´・ω・`)
[マ ユ]
あ、そうなの?
残念だったね
[roll]
Bさんはシャンタのほうで忙しかったんじゃね?
[ナルティーク]
あー…
[pouder kona]
あー…
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