第36話 『あんあゔぉいだぶる・ふぇいと!』
「植物の根を追おう。その先に犯人がいると思う。」
「そうだね」
卯月と車田は根を手繰って向かう。
途中、地面から
─も、二人はそれらを総てすり抜けていく。
「やはり君の契術は強いな」
「嬉しいけど過信しすぎないでくださいよ。僕は頭が良くないですから、使いこなせないと思います。」
「謙遜しすぎじゃないか?もっと…ん?」
強化された視覚で、卯月は向こうの人影を見た。
「誰かいたな。」
「え、見えないんだけど…でもあの人が犯人なのかな?」
「そうかもしれ…いや、ヤツは…!馬鹿な…!」
その時だった。
人影が一瞬で近づき、卯月の唇を奪う。
そして、舌を入れた。
「…ッ!?」
「はむ…!れろ…ちゅぱ…!」
卯月はすぐに十文字を振りほどく。
─いや、振りほどかれる直前に十文字は飛び退いていた。
(危なかった…!咄嗟に電撃を透過しなければ…俺達はここで死んでいた!)
「お、また会ったまた会った!今で3回目だよね?これぞ合縁奇縁ってヤツよ。」
十文字が、いた。
「…死に損なったか。飛行機に潰されても死なないのはタフの域を超えているぞ。」
「いやぁ、実は私もポックリイっちゃうと思ってたんですよぉ…。でもですねぇ、生きてるんです。種は当ててみ?」
「…車田、ほぼ別の相手だと思った方がいい。前とは比べ物にならないぐらい強いぞ。電力も
「そうだね。犯人ではなさそうだけど。」
「スピードも負けているから逃げられない…!ここで決着をつけよう。」
米沢の飛行スピードは、更に上がっていた。
人体に過剰に負担をかけない速度という縛りが課せられていたものの、宮藤の体は頑丈だったため、加護の進歩もあり、龍崎を載せた時よりスピードは上だった。
「一昨日までは全員いたのにな。杉も龍崎もいなくなった…。」
「なんや?今更センチな気分になっとるんか?」
「いいや、俺はこのゲームで改めて気づいたことがあんだよ。…眷属の存在だ。」
「確かに、魔王だけでようないか?ってのはあるな。ウチが言うのもアレやけど。」
「これは俺の推測なんだが…眷属の存在は戦闘を増やすためじゃないのか?」
「というと?」
「訓練や戦闘を重ねることによって、契術や加護は進化していく。それを誘発するためのものじゃないかと思うんだよな。」
「おもろい考えやとは思うけどもやな…。何のためにやるんや?そんなこと。」
「それはおそらく…」
米沢は二人の男を見つける。
彼らの周りでは、植物は暴れていなかった。
「話は後だ、行くぞ。」
「もう見つけ…はぁ!?」
宮藤は目を疑う。
(な、何でお前がおんねん、禍供犠!)
「どうした、宮藤?」
「…何もない。今すぐ始末して。」
「おう、少々味気ないが…」
ポケットから大量のパチンコ玉を取り出す。
そして、全て彼らのいる方向に飛ばした。
大量の『銃弾』が飛んでくる。
「どうやら誘き出されたようだね。」
「想定とは違うが…さして問題はあるまいか。保中!」
「はーい!」
大津波が、弾の雨を襲う。
弾は爆発するも、水に威力を殺されて彼らには届かなかった。
その間に、冥崎から翼が生え、空へ飛んでいく。
「おいおい、飛行能力持ちが複数いるとはな。」
(植物の動きが止まった…ってことは奴の力は植物操作と飛行能力か。)
「ふん、無駄は好かん。貴様らには悪いが、撃墜させて貰うぞ。」
冥崎の手から竹が出て、二人を襲う。
(スピードは中々だが…回避は可能だな。)
米沢は軽々これを回避する。
ポケットのパチンコ玉を構えたその時だった。
ビュシィィィィィィィッッッン!
どこからか、米沢を狙って光線が飛んでくる。
「ぐわぁぁぁ!」
墜落する。
米沢はギリギリ地面に激突されなかったが、宮藤は振り落とされる。
冥崎が光線の方向を見ると、大砲のような機械とそれを操作している男がいた。
─合理帝である。
「偏差射撃…僕の得意技で死んじゃうなんてね。」
保中は落ちていく宮藤に水の弾を撃ち込む。
─が、宮藤は保中の計算よりゆっくり落ちていった。
そのお蔭で、水の弾はスレスレで空を切る。
(はぁ、はぁ…!米沢が『力』をかけてくれへんかったら死んどったな…)
「久しぶりだね、宮藤愛蘭。」
保中が歩み寄ってくる。
「結局、過去からは逃げられへんもんなんか。」
「…今度こそ、決着をつけようか。」
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