第24.5話 『でびるず・いんたーるーど!②』

 ベリアルが口を開く。

「まずは卯月太陽。彼は元々正義感の強い性格で、国会議員になってからも不正や悪事に手を染めず、誠実に国民の苦しみに向き合う…そんな人間ですわ。」

「人間の鑑って言われそうな人ですね…」

「えぇ…、ただ甘いだけではなく、状況を冷静に判断して、切り捨てるべき所では適切に切り捨てることもできる。そんな人間ですわ。」

「待ってくれ。君の司る罪は『虚飾』。話を聞く限りとてもそんな欲望を持つ人間に見えないのだが。」 

「彼の性格に『虚飾』の要素はありませんわ。それがあるのは…彼の目的ですわね。」

「どういうことだ?」

「ふふ、それはですね…」

 ベリアルがアスモデウスに耳打ちする。

「道理で、と言いたいところだが…まぁいい。」

「彼は契術をまだ使っておりません。この様子だとギリギリまで温存するつもりでしょう。…まぁ近くに車田がいた以上仕方ないですが。加護は肉体強化。シンプルながら使いやすい部類には入りますわね。」

「…契術は他人を巻き込むようだな。」

「御名答。さて、車田大和の解説へと移りましょうか。彼の契術はありとあらゆる物を1つだけ透過することができる物。…あらゆる契術の中でも最強クラスに入りますわね。」

「だが、こちらの時間停止能力者も倒されたからなぁ。強くても死ぬときは死ぬぞ?」

「それもそうですので、油断はできませんわ。彼の仕事は会社の営業部。日々のストレスから逃れたいという強い思いから契術が発言したのでしょうね。自分で考える程の頭はない上、本人もそれをよくわかっていますので、今は車田の言いなりになってますわ。まぁ前職よりはいい上司ですわね。」

「でもかなり仕事はブラックッスよ…、あっ、頭が悪いなりに戦闘のキレがいいんすけど、コツとかあるンスか?」

「仲間達と協力して戦法の型を造って、それに沿った行動をしていますわ。」

「…凡夫が秀才へ化けるための方法の一つだな。」

「さて、これで私の陣営の解説はお仕舞い。次はアスモデウス様を指名いたしますわ。」

「うむ、心得た…。まずは色欲の魔王、十文字莉杏。彼女は…まぁ言わずもがなだが、性欲の権化だ。」

「うん」

「そうですね…」

「知ってるッス」

「ちなみに彼女のストライクゾーンは全人類だけでなく、動物…下手すれば異形のモノすら受け入れるかもしれん。当然、どんなプレイも楽しむそうだ。他の客とのプレイに影響が出るものは我慢してるそうだがな。」

「…あの女、我には戦闘向きの性格とは思えんが。」

「その通りだ。彼女の本質は『慈愛』。形こそ歪んでいれど、彼女はありとあらゆる物を受け入れてしまう。適応の契術がそれの表れだ。電撃の加護との食い合わせも良い。」

「ギャハハ!食い合わせ!食い合わせ!」

「ベルゼブブちゃんいたンスか?」

「ずっとご飯を食べておりましたね。」

「次は倭島灯火。粘着力の強い糸を生み出して自在に操ることができる。粘着力は対象毎に任意…、器用さを活かして立ち回るタイプだな。あとは…とにかく対人運が悪いぐらいか?」

「そこまで悪いのでございますか?」

「この闘いが始まる前からマトモな人間に会ったことがない。よく犯罪に巻き込まれる。親の借金のカタに売られる。などなど…」

「結構悲惨ッスね、だから十文字ちゃんに依存しちゃったンスか。」

「その通り、産まれて初めてマトモに抱き締められた訳だからな。さて…サタン、今度はお前だ。」

「ふん、次は我か。まずは平魅美…憤怒の魔王だ。この辺りの不良集団のボスだな。だが舎弟達とは深い信頼関係で結ばれている。…後で説明する稲葉アリスもその一人だ。」

「ボス猿気質、と言うことですね。」

「平の加護は炎を操る、契術は自己への他者からの契術や加護を無効化する能力だ。…身体能力も中々のモノだ。何より強い『憤怒』…、いや憎悪を感じる。」

「細かいこととか全く気にしなさそうな性格なのッスにねぇ…」

「無理に語尾付けなくてもいいんだぞ?」

「次に稲葉アリス、先に言った通り平の舎弟だ。平に対して絶大な信頼を置いている。精神的にも成熟していて、先走りがちな平のストッパーを担っている存在だ。」

「ギャハハ!オレ!コノオンナクイタイ!」

「ダメだ。彼女の契術は自らの言葉を聞いた人間に対して発動する。…ありとあらゆる事を禁止することができる。」

「正直今の所無敵に見えますわ。」

「これには制限がある。まず自分の言葉を聞いた人間全員に効果があること。そして…どのような方法を使っても自身にも効果が適用されることだ。」

「例えば『動くことを禁止する』とか言ったら自分も動けないってことか。」

「使い所は限られてるが…それでも強いな」

「その通りだ。以上だが…最後、どちらがいい?」

「ジャアオレ!」

「ふん、なら解説してみろ、ベルゼブブ。」

 大きな口が弧を描く。

「オシ、オレタチ、ボーショク、ツヨサ、カイセツ!ギャハハ!」

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