第15話 【回想】子ども達の悪企み

焦げた焼き菓子を見て、瑞紀は落ち込む。

「みずきー、あたらしいのつくろ?」

「あ・・・、その前に掃除しないと。」

「いつもみずきはりょうりしっぱいしないのにね・・・。」

「ううん、たまに失敗するよ。次は頑張ろう。」


子ども達は瑞紀が席を外している間に、そっと集まった。

「みずき、げんきないね・・・。」

「おれたちにはぜったいはなしてくれないよな!」

「だって、しんぱいかけさせたくないっていうもん。」

「やさしすぎるんだろうなー。」

「そうだ・・・、いっかいおこらせてみようぜ!」

「えっ!?」

「おこっておおごえだしたらすっきりするかもしれねーじゃん!」

「な、なるほど・・・。」

子ども達はこっそりと作戦を練り始めた。


「うーん、・・・とりあえず、まずパンケーキ焼こう。それでうまくいったら他のも少しずつ練習していこう・・・。」

子どもたちの悪だくみも知らず、瑞紀はとにかくがむしゃらに練習を始めようとしていた。

ホットケーキミックスを使って、パンケーキを焼き始める。

プツプツと黄色い生地に穴が開き始める。

「よいしょっと・・・。あ、いい感じ!」

キレイな茶色に焼けたパンケーキに、瑞紀は少し嬉しくなる。

「パンケーキはうまく焼けそうね・・・。みんなのお昼ご飯、今日はパンケーキにしようかしら。」


だが、子どもたちは会話に夢中で手伝ってくれそうにない。

瑞紀はせっせと焼いたパンケーキをお皿に盛りつけて、サラダとスープも用意する。

「みんなー、お昼ご飯できたよ?」

「あ、みずきだ・・・。」

「つづきはごはんをたべてからだね。」

「うん。」

子どもたちは大急ぎでそれぞれの椅子に座る。

「わぁ、きょうはぱんけーきだ!」

「ちゃんとお野菜も摂ろうね。スープもおかわりあるからね。」

「わーい!」

子どもたちはちゃんと「いただきます」と言って昼食を食べる。


「おいしい!ぱんけーきおいしいよ!」

「良かった。午後からはまた何か焼き菓子作ってみるね。」

「わーい!」

「みんな楽しそうにお話していたみたいだけど、何のお話をしていたの?」

「ひみつ!」

「ないしょ!」

子どもたちは目を見合わせて笑った。

「気になるなぁ・・・。」

「ないしょだもん。」

子どもたちは頑として言わなかった。


瑞紀は食器を下げて洗い、片付けていると、なにやら声が聞こえる。

子ども達のようだが、様子がおかしいとすぐに気づいた。


「どうしたの!?何かあったの?」

「みずきー!まきととはじめが口げんかしてるの!」

女の子が泣きつきに来る。


瑞紀ははっとして二人を見ると、睨み合い、今にも掴みかからん勢いで口論をしている。

「だいたい、まきとが最年長なんだし!」

「はじめがしきりたがるからゆずったんだい!」

「そんなわけないだろ!まきとがもっとしっかりしてればいい!」

「なんだとー!」

子ども達はびくびくとしている。


「ちょっと二人とも、落ち着いて・・・。」

「みずきはだまっててよ!」

「そうだそうだ!」

「・・・いい加減にしなさい!」

瑞紀は厳しい声で怒ると、家がぐらりと揺れた。

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