第5話人助け
「ちょっと・・・痛いじゃない?」
サキュバスは複数のプレイヤーに囲まれて攻撃されていた。
「黙れ、異業種!」
何とか何人かは倒しているが、じり貧だ。
追いつめられる。・・・もう逃げ道はない。
「もう、だめなのかしら・・・」
刃が振り下ろされる。
しかし、
「ハアアアアッ!」
その剣戟はキルの攻撃で弾かれた。
「コバヤシ、フォローよろしく!」
「ああ・・!」
その女悪魔は緊張感もなく、こちらを見る。
「遅いじゃない?魔王様」
「アヌマエヌマ・・・少し優しすぎないかな?」
彼女はアバターなどではなく本物の魔物、アヌマエヌマ。
叡智の魔王と同じ魔界に住む悪魔の一人だが、こうやってたまにオンラインゲームにログインして遊んでいる。
「ほら・・・♪よそ見してるとキルが殺されるわよ?」
「まったく・・・」
「術式展開・・・契約に従いその力を具現化せよ。魔剣ヘブンズギル!」
コバヤシは魔力の身体強化をして、駆ける。
キルの背後、隙を伺おうとしたプレイヤーを切り捨てる。
【魔剣・ヘブンズギル。魔術の媒介にもなるし、hpを使ってブーストすると、atkとintを大幅に上昇されることが出来る。魔力を破壊し、吸収する能力もある】
敵はあと3人。
キルのレベルを考えると大した数ではない。
レベルは全員俺と同じくらいだ。
キルのステータス
【lv(レベル)40
hp(ヒットポイント)120
mp(マジックポイント)103
atk(攻撃力)93
int(魔法攻撃力)82
mgr(魔法防御)65
agl(素早さ)92
ジョブ ツインセイバー】
ツインセイバーは二刀流のショートソード系の武器を使うジョブだ。
もちろん武器が壊れれば普通の剣士(ブレイバー)としても戦える。
「術式展開・・・燃えよ。放て、ファイヤボール!」
魔剣ヘブンズギルを介して火球が放たれる。
魔術による攻撃が当たると、相手のhpが消し飛ぶ。
「なんだあいつら・・・逃げろ・・!」
一目散に彼らは逃げていく。
「つまんないの、人間が成長するのにはあとどのくらいかかるかしら・・・」
アヌマエヌマの軽口にコバヤシはため息をつく。
「なんであんな奴ら追い払わないんだよ。相手になるはずないだろう」
「その為にあなたがいるじゃない」
このアヌマエヌマ、アバターではなく本物のサキュバスの女王だ。
俺よりもはるかに強いのだが、どうにもいつも手を抜いている。
このゲームにはこうして本物の悪魔や神が紛れ込んで、人間を観察している。
「コバヤシ、そいつは異業種のプレイヤーか?」
「そうだ。ただ・・・あまり関わらないほうが身のためだ」
「ひどい人ねw」
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