第3話謁見
魔界、そこは悪魔が住む世界。
彼はまだ悪魔の階級をすべてわかってはいない、と言っているがそれは自分が未熟者だと逃げているのと同じだ。
彼は常に自分にはふさわしくない階級だと言っていた。
悪魔としては破格の強さを持つにも関わらず、だ。
「周と呼ばれるのは慣れたほうがいいぞ。ほとんどの悪魔はそう呼んでるだろう」
「一応叡智の魔王って名前もあるんだけどな・・・」
かつて悪魔の力に目覚めた時、小林周、という名前では恥ずかしいと内心思ったこともあり悪魔や攻撃してくる人間に叡智の魔王、と名乗っていた。
「母親からもらった大事な名前だろう。恥ずかしがることはない」
バフォメットと話しながら装置に入る。
「魔王様、すこし我慢してくださいね」
思わず目をつぶる。光に包まれると魂が移送される感覚に襲われる。
怖かったが、終わるのは一瞬だ。
かつて彼が住んでいた地球、という場所。
ここはかつて魔界と呼ばれていた土地だった。
いまは彼の功績で人間は繫栄し、幸せに生きている。本来ならハルマゲドン(最終戦争)によって滅びる予定だった人間たち。
「ふむ・・・これは美味しいな!バフォメット、これも魔界城に記録してくれ」
彼はスイーツが好きだ。こうして色んな場所に行き、色んな文化を記録する。
これも彼の仕事だ。
彼はいつも幸せそうだった。みんなが幸せになればそれが報酬だと彼はそう言って魔王になったのだから。
「そろそろ嫁にも会いに行かなくちゃなあ・・」
「笑えるな」
「他人事じゃないよ。ほんと」
彼は人外からも人間からもモテモテだ。
結婚した嫁の一人一人をきちんと覚えていて皆を平等に愛そうとする。
「ホント苦労性だけど」
独り言のように彼は呟く。
「俺は幸せだよ。たとえ全人類の敵になってるとしても」
悲しかった。いまや魔王は彼にしか名乗れない。
いばらの道だとしても幸せだと言えるのは彼だけだと思う。
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