第2話魔王様の日常

「魔王様、彼女を呼んではいけませんよ?」

「あ、ああ・・・」

悪魔としては破格の強さを持つ彼には1つ欠点があった。

「いってくる」

それは滅茶苦茶に一途なところだ。

純粋だった人間だった時から変わらない強い心。

これがあるから強い、と彼はいつも配下の悪魔に語っていた。

彼にはあらゆる謀略、策略は通用しない。

心が揺るがないからだ。

「転移魔法を使いますか?魔王様」

「あれは酔うからいい」

「いくぞ、周。今日は他の魔界に顔を出すんだ」

彼は第一階級の悪魔、やることは山積みだ。

周という名前は彼の人間だった頃に持っていた名前、あまねく、という意味らしい。

彼が好きな悪魔は本名で名前を呼んでいた。

側近のバフォメットが言った。

「無理やりにでも、ついて行くからな」

「はあ・・・勘弁してくれ」

彼が魔界を訪れると、求婚を求められるのでいつも困っている。

ミキ、という愛した女がいると断るのだが。

「それでは事態が悪化するだけだぞ」

「わかった」

仕方なく準備をして転移魔術を展開する。

魂を移送先まで移動させる。叡智の魔王と呼ばれる彼が作った技術だ。

彼は人間の頃から様々な魔術を開発した。

いつも悪魔や神よりも進んだ技術を作っていた。

それゆえにバフォメットと契約関係だったとき彼は世界の仕組みを理解した魔法使い、と言っていた。

「・・・こわ」

「魂を分解して運ぶのではないと言っただろう」

彼は息をのんで装置に入る。

彼の冒険がこうしてまた、始まるのだ。

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