第7話 可愛げのあるやつら
こうして、俺の仕事が始まった。週5日の仕事だが、時には深夜に及ぶ事もあり、そうすると翌日はお休み。メイクスタッフは交代で休日を取らせてもらう。つまり、俺らは順番に休んでいるけれど、その間タレントの方は、オレンジピールの方はずっと働いているって事なんだよな。
それにしても、こうやって一日中メイクをしては直して、やり直してってやるのだ。普通のヘアメイクの仕事と比べるとかなりの仕事量だ。あの給与額も頷ける。さすが、急成長のWideHitだ。
毎日接していると、タレントを我が子のように思ってしまうスタッフも多い。みんなオレンジピールのメンバーが可愛くて仕方がないという雰囲気だ。若宮さんなんて、時々お菓子を与えているし、他の女性スタッフも、彼らがふざけ合っているのを、ほほえみながらずっと見ている事がある。
「こんなおっさんにメイクされるより、若い女性にされたいよなあ。」
つい、俺は意地悪くそう言った。大哉のメイクをしている時である。顔の美しいメンバーである。
「そんな事ないですよ。女性だと緊張しちゃうから、花村さんの方がいいです。」
なんて、にこやかに言う。ちょっと、可愛いじゃねえか。
「花村さん、下の名前なんて言うんですか?」
「ん?りょうだよ。梨に太陽の陽と書いてりょう。」
「へえ、かっこいいですね。というより、綺麗な名前ですね。梨陽さんって呼んでもいいですか?」
「は?いや、まあ、いいけど。」
大哉はクールな顔をしているくせに、笑うと目尻が下がって可愛い顔になる。
「お前な、そうやって笑うんだったら、目尻を上に向けて描くぞ。」
「え?何ですか?どういう事?」
大哉はそれこそ目を丸くした。おかしくなって、俺は笑った。
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