第2章 2話

 「ギャアアアアアアァァァァ」


 魔物の奇声きせいが森の中に響きわたる。


 そんな森の中で転生完了後から俺はひたすら敵を狩り続けていた。


 もともとは百体近くいた魔物の大群も徐々に減っていき、残りは五体となっていた。


 (やっと終わりか。予想よりも疲れたな……)


 「そろそろお前らの相手も疲れたから、これで終わりにする。消えろ!」


 残りの五体の魔物目掛けて、無詠唱むえいしょうで風属性上級魔法『天風烈波てんぷうれっぱ』を放つ。


 「グガァァァァァァァァ」


 もう何度目ともしれない魔物の断末魔の叫びを聞きながら、戦闘態勢を解除する俺。


 転生直後に始まった初の魔物との戦闘――魔物の数が多すぎたこともあり少々時間はかかってしまったが、とりあえず危機を脱することは出来たみたいだ。


 魔物の使役者だと思われる男も何処どこかへ消えてしまったので、一先ひとまずは安心だろう。


 (けど………)


 これで終わり、というわけにはもちろんいかない。……むしろ、ようやくスタート地点に立てたというような状況だ。


 転生して十秒と経たないうちに戦闘が始まってしまったため記憶の整理はろくに出来ていないし、護衛や従者を失ってしまっていたし、馬車も壊れてしまっている。なにより、俺はこの場所の地形も家までの道も知らないためのだ。


 見たところ、この森は相当深いようで感覚を頼りに森を出ることは難しい。むしろ感覚だけで行けば遭難の可能性すらある。


 ……だから。


 (とりあえず記憶の整理をする……そして状況を的確に把握し、家まで帰る方法を考える必要がある。必ずこの森から抜け出してみせる……それができなければただ死ぬだけではなく、あの性格の悪い女神さまに絶対に馬鹿にされるに違いない。それだけは絶対にごめんだ……)


 最悪の未来を阻止するため、俺は静かに思考を巡らせ始めた――。



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