第48話

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「あひっ…あひゃひゃっ…もう、もう無理っ…笑い死ぬっ…腹痛い…っ…腹筋崩壊する…っ」


裸でゴリラの真似をする裕也を見て、幸雄は涙目になって笑い転げる。


「うほっ、うほうほっ」


幸雄に笑われ、クラスメイトたちに爆笑され、散々辱められた裕也は、それでもひたすら面白おかしい動きをさせられていた。


「ふぅ…ふぅ…落ち着いてきた…」


やがて笑い疲れた幸雄が立ち上がって、生徒たちに命令した。


「うんよし。もう笑うのやめ。黙っててね」


途端に口を閉ざす生徒たち。


幸雄は満足そうに笑ってから、裸で珍妙な動きをしている裕也を蹴飛ばした。


「お前ももういいよ。飽きた。お疲れ様」


「はぐっ!?」


腹蹴りをもらった裕也は、悲鳴を上げて地面に倒れ込む。


「あっ…あっ…」


現実を受け入れられないのか、その目は虚だ。


口からは涎がダラダラと垂れて、肌寒いのか体を抱えて小刻みに震えている。


もはや裕也の精神は完全に壊れており、幸雄に仕返しをしようという意思すら完全に叩き折られていた。


「流石にこれくらいで勘弁してあげるか。お疲れ様、裕也くん」


そんな裕也を見て、幸雄はドミネーターの支配から解放してやる。


「あっ…」


強制力から解放された途端に、裕也が地面に倒れ込んだ。


もうすでに幸雄の支配下ではないのだが、今度は幸雄に殴り掛かろうともしなかった。


倒れたまま、目の前の虚空をぼんやりと見つめている。


「あーあ。壊れちゃった」


なんの感慨もない声でそういった幸雄は、次のターゲットへと視線を向ける。


「さて、本日のメインディッシュと行こうか、ね。鬼山くん」


「うっ!?」


ぎくぅと鬼山龍之介が飛び上がり、さっと幸雄から目線を逸らした。


幸雄は、ツカツカと龍之介の前まで歩いていく。


「次は君が罰を受けるばんだ。なぜなのかは…もちろんわかるよね?」


「いや…そのだな…」


しどろもどろになる龍之介。


直接幸雄を害したわけではない裕也が、これほどの恥辱を味合わされた。


かつて幸雄を裸に剥いて、画像を掲示板に貼り付けた自分が、今からどのような目に遭うのか、想像した龍之介は内心震え上がった。


どうにかしてこの場を切り抜ける方法を模索するも、何も思い浮かばなかった。


「龍之介くん…君は僕から金を巻き上げ、顎でこき使って…挙げ句の果てに、裸画像をネットにアップしやがったよな?ん?」


「いや、その…」


「それに相応しい罰が、何かわかるか…?」


「く、靴を舐めます…本当にすみませんでした…」


幸雄からただならぬ殺気を感じた龍之介は、ともかくプライドを捨てて媚を売ることにした。


自ら、裕也と同じように幸雄の靴を舐めることを申し出る。


だが幸雄は否定するように首を振った。


「いいや、そんなことじゃない。その程度で済むわけがない」


「じゃ、じゃあ…何を…?」


「龍之介くん、君に相応しい罰はね…?」


「…っ」


龍之介がごクリと唾を飲む中、幸雄が静かに告げた。


「死だ」


「へ…?」


「君には死んでもらう」


「なっ…」


龍之介が目を見開く。


幸雄が他のクラスメイトたちの方を向いて、スキルを使い命令する。


「黒崎さん以外の生徒全員で鬼山龍之介をリンチして殺せ」


「や、やめろっ」


「龍之介は一切抵抗するな。お前はここで死ね」


「い、嫌だ…!やめろおおおおおお!!!」


龍之介が悲鳴をあげる。


生徒たちが、立ち上がって龍之介を取り囲んだ。


龍之介の顔が絶望に染まる。


「殺せ。なぶり殺せ」


幸雄が迷いなく非情な命令を下す。


するとクラスメイトたちが一斉に龍之介を蹴り、殴り始めた。


「あだだだだだだだ!?」


四方八方から本気の蹴りをくらい、龍之介は悲鳴をあげる。


バキ!ボコ!と鈍い音がダンジョンに響く。


「痛い痛い痛い!?や、やめてぇええええ!?死んじまうよぉおおお!!!」


龍之介は地面に蹲って泣き叫ぶ。


「お前らやめろぉおおおおおお!!俺のお父さんは…暴力団なんだぞぉおおおお!?日本に帰ったらタダじゃ置かないぞおおおお!!!」


龍之介が父親を使って生徒たちを脅すが、ドミネーターの力で完全に支配されている生徒たちが、龍之介をいたぶる手を止めることはない。


「いぎぃいいいいい!?だ、だずげで…!!ママあああああああ!!じにだぐないぃいいいい!!」


約10分間にわたり、ダンジョンには人の体が少しずつ壊れていく音が響いていた。


そして十分ご、そこにはすっかり形を変えた龍之介の死体が転がっていた。


「君たち、お疲れ。もういいよ」


幸雄の命令で生徒たちが、龍之介から離れる。


幸雄は、全身内出血で真っ赤になった龍之介を蹴飛ばして、生死を確認する。


「うん、完全に死んでるね」


そして龍之介が死んでいることを確認してから、ほっと一息ついた。


「ふぅ…スッキリした」


「「「「「…っ」」」」」


クラスメイトたちが驚愕に目を見開く。


幸雄の浮かべた表情が、他人に人を一人殺すことを命令した人物のものとは思えないほどに清々しいものだったからだ。




〜あとがき〜


新作が公開中です。


タイトルは


『モンスターの溢れる現代日本で俺だけレベルアップ&モンスターに襲われない件〜高校で俺を虐めていた奴らは今更助けてと縋ってきたところでもう遅い〜』


です。


内容はタイトルのまんまで、


• 突如モンスターが現代日本に出現。


• 主人公だけモンスターを倒すとレベルアップ。


• 何故か主人公はモンスターに襲われないため、モンスター倒し放題。


と言うものです。


興味を惹かれた方は是非そちらの方もよろしくお願いします。











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