第46話
「に、西川…?た、頼む、話を聞いてくれ…」
「ん?何かな?」
「謝る…謝るから…許してくれないか…?」
もはや打つ手を無くした裕也は、幸雄に対して媚びるようにそう言った。
「謝る…お前にしたことも、黒崎にしたことも謝るから…な…?」
「うーん…謝って許されるなら警察はいらないよねぇ?」
「…っ」
「有馬くん…君はとんでもない罪を犯したんだ。自分を信頼してくれているクラスメイトを操って騙して、挙げ句の果てに僕の黒崎さんを傷つけようとした。この罪はきっちりと償ってもらうよ?」
「ふ…」
「ふ…?」
「ふざけんじゃねーよ!!!」
たまりかねた裕也が怒鳴り声をあげる。
「何が罰だ!?僕の黒崎さんだ…!?てめー何様のつもりだよ、この根暗インキャが…!お前如きにこの俺を裁く権利があると思うのか!?いいからさっさと高速を解きやがれ、オタクが…!!陽キャラの俺に逆らってんじゃねーぞ!!!」
唾を吐いて一気に捲し立てた。
クラスの一軍だった有馬裕也の言葉。
もしこれが日本の教室だったのなら、彼に賛同し、西村を非難する声が殺到していたことだろう。
だが今は、裕也の声は虚しくダンジョンの暗闇に消えていくだけだった。
クラスメイトたちは今現在、幸雄のドミネーターのスキルによって、口を開くことができない。
いや、それ以前に、裕也が生徒たちを操り、自分のためにこき使っていたことが発覚した時点で、裕也の信用は地に落ちていた。
生徒の中には、裕也に加勢するどころか、逆にみっともなく怒鳴る裕也に白い目を向けている者さえいる。
「ふふ…まだ自分が僕よりも上の立場にいると思ってるんだね…有馬くん。じゃあ、今から身の程を弁えさせてあげるね」
そういった幸雄は、裕也の目の前で自らの足を持ち上げた。
「舐めろ、有馬裕也。舐めて僕の靴を綺麗にするんだ」
「…っ!?」
ドミネーターのスキルが発動し、裕也が大きく目を見開いた。
裕也の口がゆっくりと幸雄の靴に近づいていく。
「やめっ、やめろぉおおお!!嫌だ!!嫌だ嫌だ嫌だあああああ!!!」
裕也が悲鳴をあげるが、意に反して口元は着実に幸雄の靴に近づいていった。
「靴なんて舐めたくないっ…陰キャラの靴なんて…やめてくれぇええええ…!!!」
ダンジョンに裕也の絶叫がこだました。
だが、ドミネーターの強制力は、そのくらいでは消え去らない。
結果、裕也は無事、幸雄の汚れた靴の裏を、その舌で掃除させられることになった。
「ぺろぺろ…おえぇええええ!!うぇええええ…ぺろぺろ…」
吐きそうになりながら、それでも必死に靴を舐めて掃除する裕也。
四つん這いになり、幸雄の靴を舐め回すその姿は、もはやかつての人気者のそれとは程遠かった。
「うぇええええ…!!ぺろぺろぺろ…うぇえええええええええ!?」
ボロボロと涙を流し、みっともなく鼻水を垂らしながら、それでも裕也は幸雄の靴を舐め続けた。
「あひゃひゃひゃひゃ…!!ざまぁああああああああああああああ!!!!!」
それを見た幸雄が、爆笑し、勝利の声をあげる。
「おいおい、見てくれよみんな…!君たちの人気者の有馬裕也くんの成れの果てを…!!あんなにキラキラ輝いていて、クラスの中心人物だった有馬裕也が…今…!僕の靴を舌で舐めて掃除している
よ…!!!ああ…!愉快にも程がある…!!」
充血した目をぎらつかせて、幸雄は捲し立てた。
やがて裕也はすっかり幸雄の靴の汚れを舐め終わった。
幸雄は裕也からドミネーターによる強制を解除する。
「うん、もういいよ。お疲れ様」
「うぇえええええええ!!!おえぇええええええええええええ!!!」
解放された裕也がえずき、口の中に入った汚れを吐き出す。
それから顔をあげて、充血した目で幸雄を睨んだ。
「ぢぐじょおおおおお!!!ごろずぅううううううううう!!!」
クラスメイトの前で靴なめをさせられ、プライドをズタズタにされ、裕也の精神はほとんど破壊されかけていた。
涙目になりながら絶叫し、ニヤニヤ笑う幸雄に殴りかかろうとする。
だが、当然幸雄がそれを許さない。
「おっと。跪け」
「うぎぃいいいい」
拳を振り抜こうとしていた裕也の動きがぴたりと泊まった。
そしてすぐさま、幸雄の前に跪かせる。
「ぢぐじょぉおおおお…」
幸雄のスキルの前に完全に屈してしまった裕也は、途方もない敗北感を感じてボロボロと涙を流す。
そんな裕也に幸雄が絶望の一言を告げる。
「何泣いてるの?罰はこれだけじゃないよ?」
「うぇ…?」
裕也が泣き止み、ブルブルと小刻みに震え出した。
〜あとがき〜
新作の
『モンスターの溢れる現代日本で俺だけレベルアップ&モンスターに襲われない件〜高校で俺を虐めていた奴らは今更助けてと縋ってきたところでもう遅い〜』
が公開中です。
そちらの方もよろしくお願いします。
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