第3話 別世界

「来たわね?じゃあちょっと移動するわよ」


「おい!なんで俺は高校に!それも昼間じゃねーか?」


誰も居ない校舎は異様な雰囲気を放っている、校内は人気も無く本当に日中の学校に来ているのか不思議に思ってしまう

廊下を歩いているがいつも通りの風景に変わらない張り紙、後から誰かが声を掛けてきても違和感が無い

ふと外からの日差しに手を当ててみる、あれ?眩しいのに温もりは感じない


「ここは夢の世界よ?それだけ」


蓮は頭を抱えながら何を言ってるのか理解しようと必死に考えた

夢の世界?それはつまりなんでも出来るって事か?でも起きた時はあんまり覚えてないから、カレンが夢に出て来て何言われても起きたら忘れるからな?


「ちょっと街の中心街まで移動するわよ?」


校舎を出て通い慣れた道を歩いて居ても人気が無い、耳を澄ましても鳥の鳴き声1つ聞こえない

異様に静まり返って不気味な雰囲気に感じてしまうぐらいに、中心街からは少し離れている高校の為、普段ならバスで移動した方が早いが車1台すれ違わない、その為に歩いて居ると遠くの方で音がした・・・バンッバンッバンッ

乾いた音が小さくだが聞こえて来た、するとカレンが立ち止まり振り返った


「これから何が起きても私を助けた時の様な行動は取らないでね!絶対によ!初日に死ぬの嫌でしょ?」


「それって意味が分からねぇよ」


「そうね?仲間が先に向かったから大丈夫だと思うけどね」


「いやだから何を言ってるのか分からねぇよ」


街に着いた2人は繁華街を歩いて居たが、そこでも人に出会わない

普段なら人の活気に流行の曲が流れているのに

すると大通りの方から大きな音がした、蓮は走った!何が起きているのか気になったからだ

大通りの手前で足を止めて物陰に隠れて見てみる

そこには銃を構えた連中が1人の男と戦っていた、男は目にも止まらぬ速さで移動しており、1人また1人と銃を持った連中を倒している


「また霧山さん暴れてるの?」


後から追い付いたカレンが蓮の背後でつぶやいた

霧山?蓮は良く分からなかったが、男の圧倒的強さに目を奪われた

急に銃撃が止んだ、目をやると1人の男が歩いてきた


「霧山、今日こそお前を殺す」

男は抜刀術の構えをして動きを止めた、ただならぬオーラを放つ男に蓮は息を飲んだ、刀が相手なのに霧山という男は悠然と歩いて近づ居て止まった


「あそこが間合いのギリギリ外よ」


カレンは静かに言った、緊張感から額からは汗が垂れてきたが拭く事を躊躇う、目を離せば一瞬で決着が付く距離、余りにも静か過ぎる周囲に唾を飲む音さえ響き渡るのではないかと思わせた


「お前の拳が俺に届くより俺の抜刀術・瞬断殺で斬り捨ててやるよ」


「お前の本気に俺も力で答えてやるぜ」

そう言うと霧山の体が蒼白く輝き、体からは電気が放出している


「霧山お前に力を見るのは初めてだな、俺の瞬断殺は文字・・・」

男の視界が一瞬暗くなった・・視界が戻ったが目線が低くなっている

なぜ?なぜ俺の体が倒れてる?首から上は何処に行った?

あれ俺どうなんでんだ?

そんな事を思っているうちに男の視界は暗くなり光を失った


「えっ!今あの人一瞬で移動したけど何?どういう手品なの!」


「アレがあの人の能力よ」



相手の首が地面に転がり銃を持っていた連中は怯えた様子で霧山に一斉射撃をするが次々と相手を倒していく

目にも止まらぬ速さで相手を無力化していった

相手を倒し終わった霧山にカレンが近づいて行った


「霧山さんターゲット見つかりましたか?」


呆然と立ち尽くす蓮を他所に2人が話をしている


「今回のターゲットはここの市長だったよ、とりあえず今は柴田と佐藤が守ってるから大丈夫だ」


「なら良かったです、霧山さん一週間前に私が襲われた時に助けてくれた神崎蓮君です」


「おぉ彼が言ってた!おーい!カレンを守ってくれて助かったよ!」


蓮はこの霧山という男を見た事があった、思い出そうと顔を歪めて居ると、霧山がゆっくりと近づいて来た

身長が大きく相手を萎縮させる程の威圧感を感じさせた


「君の話はカレンから聞いてるよ、俺よりデカイ男を現実世界で倒したって凄いよ!で覚醒者になれるかもって?」


「すみません?俺まだ理解してないんですけど、さっきのは何なんですか?」


「あれ?カレン説明してないの?」


「はい、言うより見てもらった方が早いと思ったので」


「なるほどね?まぁ良いか!」


2人の会話に全く着いて行けず、蓮は目が点になり呆然としている

自分は知りもしない状況に置かれているのに、なぜちゃんと説明してくれないのか?


すると霧山が声を掛けて来た

「あそこの店に入ろうか?」

そのお店は少し古くさいがレトロな雰囲気が心地良い喫茶店だった


「霧山さん私は柴田と佐藤さんに合流して来ますね?」

そう言う何処かえ走って行った、静かな繁華街を走って行く足音だけが響いて姿が消えた

霧山と蓮は喫茶店に入ると霧山がカウンターの向こう側でコーヒーを入れ始めた


「勝手にコーヒー入れて平気なんですか?」


「大丈夫だよ!コーヒー飲むか?」


「じゃあ貰います!」


「で?聞きたい事があるんじゃないのか?」


「あっ!はい。さっきから聞いてる世界って何なんですか?

あとは覚醒者って戦ってた相手は何なんですか?」


「・・・・」

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キューブ ネムネムZzz @nemunemu0326

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