第2話 転校生

「おい!蓮お前聞いたぜ、暴れてる男を捕まえたんだろ?」


退院して登校して来た蓮はまるでヒーローの様に注目を集めた

クラスに入るや否や男子女子関係なく周囲を囲まれた

それは一緒に居た一輝も同じだった


「蓮どういう事だよ!こんな騒ぎになってるなんて聴いてないぞ!」


日頃感じられない熱い眼差しに困惑しつつ、空手で全国に出ても、テストで学年1位取っても感じられない優越感に2人は満更でも無かった


「なになに?そんな一斉に話されても答えられないよ、1人1人と話してあげるから順番ね」


鼻を伸ばし調子に乗る2人は席に向かいながら自慢げに話し始めた


「最初はさビックリしたんだよ、デカイ男が暴れてんだもんな?」 


「そうそう!それで蓮がいきなり俺に鞄渡したと思ったら、急に走り出してさ女の子をお姫様抱っこして俺の所まで来たんだよ」


「そう!実はさあの女の子結構タイプだったんだよね?だから良い所見せたくてさ、一輝に預けたて男の所に向かう前にさ、君の為に勝ってくるよ!なんて思ってたんだよ」


「俺も可愛いと思ってたんだよね!だから男が襲ってきた時、俺が守ってあげるから安心して良いよ?なんて思ってたんだ」


2人が話しているのに1人また1人と離れて人気に陰りが見えた


「なぁ?まだ話したり無いんだけど聞いてくんないのかよ?」


蓮が集まって来ていた生徒を引き止めようと話し掛けたが冷たい目見られ


「え?お前ら女の子に良い格好しようとして暴れたって事だろ?もう良いよ」


えっ!ちょっと待ってよ?確かに女の子の話は多かったけど助けたのは本当だよ?俺ら1週間も入院して登校したら1分も持たないって俺達人気なさ過ぎたろ(泣)

2人は内心かなり傷付いていた


「蓮?良いのか?あんな嫌われる様な話にして?本当は」


「良いんだよ!別に?俺にも良く分からなかったし」



担任の山井先生が教室に入ってきた、その後を何処かで見覚えのある女の子が入ってきた


「よろこべー転校生だ!」

教室の空気は一変した、目元が緩くなる男子、鋭くギラついた視線を送る女子、折れた心を自力で治す蓮と一輝


「東条カレンです、皆さん宜しくお願いします」


蓮と一輝は耳を疑った!東条カレン?この声は!

2人が前を見ると助けた女の子がそこに居た


「どーすんだよ蓮!お前がさっき皆に余計な事を言うから、やぁあの時は大変だったね?あの後は大丈夫だった?なんて話し掛けられないし、あの子にバラされたら俺達の学生生活が終焉を迎えるぞ!」


「いや!待て一輝冷静になるんだ!あの子がいきなり、あっ!あの時は助けて貰ってありがとうごさいました!なんて言って来る可能性なんて皆無に近い」


「確かにそうだな俺に俺達の席の回りはもう埋まってるし、空いてる席は真反対だから今日はとりあえずバレなければ平気だよな?」


「そうだ一輝焦るな!あの子だって転校初日から男子と絡むなんて恥ずかしくて出来やしない!だから俺達はまだ運がある!」


「じゃあ席は窓際が良いだろ?1番後は蓮の特等席だから難しいしな、蓮の横も一輝だしな?

そしたら蓮の前の吉村!席譲ってやってくれ?」

山井先生の提案に吉村はあっさりと承諾して席を移動していった


「山井ぃぃぃ何を言い始めてんだよ!コッチはその提案に反対なんだよ!どういう選択肢で窓際選ぶんだよ!」


「おい!蓮どうすんだよ!このままうつ伏せで寝たふりを1日中するしか無いのか!」

2人が寝たふりをしながら小声で会話をしていると山井先生が声を掛けてきた


「おい!入院してたお2人さん?寝てないで転校生に挨拶ぐらいしろよ?」


「挨拶なんてもう済んでんだよ!膝枕までして貰ってんだよ!それより周りにバレたくねぇーんだ」


うつ伏せで寝たふりをする蓮の机は大量の汗で濡れていた

スタスタ・・歩いて来る音が近付いてくる

カーテンが風でなびいている、カレンは2人の間に立ち挨拶をしてきた

2人は顔を隠してる事を諦めて、起き上がった


「転校生ヨロシク!俺は神崎蓮」

「俺は金井一輝」


「あら?あの時は名前も聞けなかったので聞けて良かった」

素敵な笑顔が2人は焦りを忘れた、和やかな雰囲気に包まれていた


「なんだ?お前達顔見知りだったのか?」


蓮と一輝の顔が固まった・・ヤバいバレるさっき皆に話した冗談が本気で信じられてる

一輝が目で蓮を見ると完全に思考が止まってるのが分かった

一輝は冷や汗を流しながらその場をどうにか切り抜けようとした


「こないだの事件で近くに居た子だよね!うんうん!覚えてるよ!」


「え?神崎君が私を担いで金井さんの所まで連れて行って2人で守ってくれたじゃないですか?」


周囲の冷たい目線が2人に集まった、あっ終わったこれからは助けた動機が好みの子で格好付けたかったって言われ続けるんだ、学生生活がこんなあっさりと崩れるとは


「じゃあ席は窓際が良いだろ?1番後は蓮の特等席だから難しいしな、蓮の横も一輝だしな?

そしたら蓮の前の吉村!席譲ってやってくれ?」


蓮は耳を疑った、山井先生は同じ事を言っている?目線を教卓に向けると横に居たはずのカレンが教卓に居る?

さっき横に来て挨拶したよな?あれ?正夢?

スタスタと歩いて来たカレンが席に着こうとした時、山井先生に窓を閉めて良いか聞いた、山井先生は閉めて良いと言ってカレンが窓を閉めようとした時


「良い夢(幻覚)見れました?後で話しましょう」


「じゃあ授業始めるぞー」

その後いつも通りでなんの変化もない時間が流れた



「蓮は今日から部活出るか?」


「あぁ、その前にちょっと予定があるから終わってからだな」


「そうか、俺は塾だからまた明日な」

一輝は先に帰って行った、蓮は落ち着かなかった



ーーーーーー科学準備室ーーーーーーーー



「朝の話の続きをしましょうか」


呼び出して話ってなんだよ?それに朝のあれはなんだったんだ?

夢って言ってたけどあの時見せられたのは何だったんだ?俺にしか見えてなかったみたいだし

「で?話って何だよ?」


「貴方に渡したネックレスはどうしたの?付けておく様に言ったわよね?」


病院に着いた時に検査で外されてから確かに着けてなかった!でもそれがどうした?


「あぁあれは検査の時に外されて着けるの忘れてたわ」


「貴方を待ってたのよ!あの世界で」


あの世界?何を言ってんだ?つまらない冗談を言うタイプでも無さそうだけど?


「東条さんさっきから何を言ってるの?」


「いいわ!今日の夜11時に寝なさい、そしたら全て分かるから」


そのままカレンは準備室をあとにして行ってしまった

蓮は1人残され理解出来ないままだった


その夜蓮は・・・

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