バーター選手(6)
「新しくチームを率いることになった
グラウンドに出てきて軽いランニング、基礎練習を済ませた後に現れた新監督は、皆を集めそう言った。短髪に色黒な肌、いかにもスポーツマンといった見た目をしている。
監督はメンバーにも簡単な自己紹介をさせた。氏名、ポジション、目標を各々述べていく。そして、大生にお鉢が回ってきた。
「
そう言って大生は口を閉じた。周りの人間はポカンとしてるか、怪訝そうな目を向けるだけである。しかし、駿介と陽奈だけは意味がわかったらしくない呆れた顔をしていた。あいつらの言いたいことは分かる。おおかた『わざわざそんな婉曲的な言い方するな』と言ったところだろう。別にいい、誰も理解できなくても。ハナから期待してない。
しかし、大生の考えとは逆に反応を示す人がいた。
「君は佐藤寿人の後継者になりたいのかい?」
城田監督だ。予想だにしない反応に大生は言葉に詰まる。結局
「えぇ、まぁ……」
という弱々しい言葉しか出てこなかった。自分の番が終わり他のやつが自己紹介をしていてもそれは耳から耳へ抜けていった。
一通りの自己紹介が終わり城田監督は練習メニューの発表に移る。
「まずは君たちの実力を見せてくれ。五分後から紅白戦を始める。メンバーについてだが、前監督からいちおうAチーム、Bチームの振り分けは聞いてきた。今から発表する」
結果から言うと、
「はい、大生はこれでしょ」
と言って手渡されたビブス。広げてみると背番号11がプリントされていた。
「あぁ、サンキューな」
それだけ言って大生は準備にかかる。そこに青田が話しかけに来る。
「やぁ渡貫くん、いい自己紹介だったね」
「からかってるのか」
「まさか。本心だよ。それよりも、例の作戦よろしくね」
「わかってるよ」
適当に相槌を打ちながら、サブ組が集まっているところに向かう。フォーメーションを決めるためだ。前顧問のやつサブ組にはとことん無関心かよ。
メンバーとしてはちょうど
「守って守ってカウンターしかねぇんじゃねぇの?」
という誰かの言葉に総意が得られた。『専守防衛』という訳だ。
時間がきた。会議と呼べるほど議論は交わしてないが、作戦会議は終わりにして、各々のポジションについた。
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