第25話
「……あのぅ、何かスイマセンでした。」
「んっ?どうして、お前が謝るんだ?」
「一応、父の代わりに謝っておきたかったんです。」
「父?……ロシュフォールの公爵様か?」
「……いえ、そっちではなくて、しがない庶民の方です。」
「はぁ?」
墓荒らしはアイテム獲得イベントで仕方ないにしても、風呂場の覗きやパフパフはスルーしても全く支障はなかったはず。
余すところなく遊び尽くしたと言えば聞こえはいいが、そこには貴弘のスケベ心が確実にあったと思う。貴弘の操作でやったことが原因で、『勇者たかひろ』が監禁されているのであれば申し訳ない話だった。
「……でも、そんな罪で監禁されるなんて酷くないですか?一応、世界を救った勇者なんですよね?」
「『一応』じゃなくて、俺が間違いなく世界を救ったんだよ。ただ、門の開閉を出来る存在が俺しかいないことが問題だったんだ。」
「えっ?……世界でただ一人、門を閉めることができる存在だったから勇者に選ばれたんですよね?そんなことが問題になるんですか?」
ゲームのオープニングに流れていた説明文で書かれていたことを思い出した。『まおうにちからをあたえるもんをしめることができるのは せかいでゆうしゃただひとり』だった。
「そうだ。せっかく閉じた門を再び開けられる危険があるから、俺を監禁してると思う。」
「あぁ、そういうことですか。」
勇者に倒された魔王は、マグマの中に落ちて絶命したはず。
それでも、魔物たちは世界中にいるので、門が開いてしまえば魔物に力を与えてしまうことになる。平和を維持するためには勇者の存在が邪魔になったのだ。
「……勇者なのに、信用されてないんですね?」
「あぁ、姫様が心変わりして、軟弱王子とくっついたからな。その腹癒せに門を開け始めるんじゃないかと警戒されたんだ。」
「冒険の途中では、勇者と姫がくっつく結末を予想してました。」
「は?……どうして、お前がそんなことを知ってるんだ?」
「あっ、今のはナシで。気にしないでください。」
ゲームの途中でイイ感じに進んでいても、クリアした後の展開までは責任を取ってもらえない。ゲームに限らず、小説や映画でも主人公の『その後』が悲惨になっているケースは結構多いらしい。
「まぁいい。……俺は、門の影響を受けなかった。門が閉まった後も、魔界の瘴気が体から消えなかったんだよ。」
「勇者としての設定が残ってたのかな?」
「何か言ったか?」
「いえ、大丈夫です。続けてください。」
「魔界からの瘴気が消えた世界で、俺は異端な存在になってしまった。他のヤツらが静かに生きようとする中で、俺は厄介者扱いをされたんだ。」
「何となく、分かる気がします。」
私も同じことを感じていた。周りと違う自分は、浮いている存在だった。
まず、この世界でポッチャリ体形に育つことが珍しい。さっきの話から推察されるのは『暴食』の門が閉まっていることが影響しているのだろう。
「……ん?……そう言えば、お前も……。」
ソファーから身を乗り出すようにして、『勇者たかひろ』が私を観察するように見てきた。おそらくは、ポッチャリした体形に違和感を覚えていたのかもしれない。
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