第17話

「ミレーユ様が、魔法大学への進学を希望されるのであれば、調べておく必要はあると思いますよ。」


「魔法大学に行くつもりはなかったけど、面白そうだから調べてみたいかも……。」


「では、試験紙を用意しておきます。……それで話は逸れてしまったのですが、私が水の属性について詳しくは分からないので、ジェラールに聞いてみましょうか。」


「ジェラールって、ジェラール・ガルシア?」


「そうです。彼は色々な属性の魔法の素質を持っていていて、水と氷の系統は得意なんです。」


「へぇー、そんなことまで知ってるんですね?」


「もちろんです。優秀な人材は、国にとって財産になります。王家の者としては必要な情報です。」


 残念なことにジェラールは帰宅してしまっていたので、後日改めてフレデリック様が話をする機会を作ってくれるらしい。

 ちなみにジェラールも、ジュリアをイジメようとしていた時に私を慰めた一人だった。

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 眼福……とは、こんな時に使う言葉だと実感する。


 二人の美少年が真剣な表情で話し合っている姿を至近距離で眺めることになった。

 フレデリック様と違うタイプのジェラールは、鋭利な刃物タイプの外見だった。長めの髪に隠れる鋭い瞳を持ちながら、発せられる言葉は優し気である。


「……水の属性の魔法で自分の姿を隠すことはできます。」


「そうなんだ。」


「ええ、厳密には見えにくくしているだけなんですが、魔法を使う人の技量によっては本当に隠れてしまいます。」


 私は、レティシア兄を完全に見失っていた。それだけレティシア兄の技量が高いことになるのだろう。


「どうやったら見えるようになるの?」


「……そうですね。風の魔法で乱反射を作り出している霧を消し去ってしまう……、と言うのはどうでしょう?」


「魔法が使えないんだけど……。他に方法はないのかな?」


「うーん、そうなると感覚的な話になってしまいますね。」


「……感覚?」


「はい。実際に、その人はいなくなっているわけではなくて、光の乱反射で周囲の景色に溶け込んでいるだけなんです。その乱反射を作り出しているのは霧です。」


「そこまでは、何となく理解できたわ。」


「霧は水滴です。その魔法で隠れている人が通った場所は、涼しい空気になっていたり、水滴が付着している可能性が高くなります。」


「その違いを感じろと?」


 簡単なようで難しい話。微妙な温度変化と周囲への観察力が試されるような内容だった。あまり細かいことは得意ではないので自信がない。


「よろしければ、一度試してみますか?」


「えっ!?出来るの?」


「一応同じことは出来ると思いますが、魔法は熟練度によって違いが生れます。私程度の魔法で練習になるのかは分かりません。」


「そんなこと、やってみなきゃ分からないでしょ。やってみてよ!」


「フフッ、承知しました。……では外に出ませんか?」


 経験上、『私程度』と謙遜する人ほど自信を持っていることは分かっていた。それを証明するかのようにジェラールは余裕の態度を見せている。

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