第16話
「ご迷惑でしょうか?」
「……いいえ、そんなことはありません。何かあれば、協力しますともお伝えしてありましたし……。何より、私も知りたいと思うことはあるのです。」
「あっ、前にも『気になることがある』って、おっしゃっていましたね?……何が気になっているんですか?」
「『勇者たかひろ』様は、お祖父様やお祖母様を連れだって魔王を倒した功績がある方。そんな方を人目に触れないように隠しておくなんて、許されることなのか?という疑問です。」
「……でも、それは『破廉恥な罪』を犯してたからなんですよね?」
「だとしても、魔王を倒せたのは『勇者たかひろ』様がいたからなんです。いくら罪を犯したとは言え、閉じ込めておく必要があるのか分からないのです。……それも30年以上も。」
真面目過ぎるがゆえに、心を乱されていた。
レティシアのブラコンもだが、この世界の人たちは真面目に生きようとして溜め込んでしまっているのかもしれない。
ストレスで病気になってしまわないか心配だった。正直、ちょっと面倒臭くなってしまう。
「……『勇者たかひろ』が、どう思っているかが問題ですね。本人が罪を償うために納得しているなら、仕方ないんじゃないですか?」
「罪を償うために……、ですか?」
「だって、『勇者たかひろ』は『レベル99』なんですよ。ちょっとやそっとで閉じ込めておくなんて出来ないと思うんです。」
「『レベル99』?……それは何でしょう?」
「いや、魔王を簡単に倒せてしまう強さってことです。そんな人を閉じ込めておけるってことは、反省しているから黙って従ってるのかもしれないですね。」
「その気になれば、簡単に出てこれるということでしょうか?」
私は頷いたが、疑問もあった。
30年以上も反省して大人しくしている『勇者たかひろ』が、罪を犯すことがあるのだろうか?という疑問だ。
「……その辺りのことも直接聞いてみるので、フレデリック様に教えてほしいことがあるんです。」
「あっ、そうでしたね。申し訳ありません、私の話になってしまっていました。……それで、何をお聞きになりたいのでしょうか?」
「えっと、姿を隠す魔法について教えてほしいんです。出来れば、対処方法も。」
「姿を隠す魔法ですか?……『勇者たかひろ』様の屋敷を隠している魔法でしょうか?」
記憶しているゲーム情報だと、レイモン様は攻撃魔法担当でフレア様は治癒魔法担当になっている。その二人の孫であれば、魔法は得意だと勝手に思い込んでいた。
「たぶん同じだと思います。レティシアのお兄さんを尾行しようと思ったんですが、姿を消してしまったんです。」
「そうですか。でしたら、水属性の魔法だと思います。」
「……水属性の魔法?」
「空気中の水分で霧を発生させて、乱反射で周りの景色と一体化することができるらしいのです。」
「へぇー、すごいですね。」
「詳しいことは魔法大学でしか学べないのですが、私も水属性の素質はありません。ですから、対処方法となると……。」
「魔法の素質って、分かるんですか?」
「ええ、調べれば分かります。それぞれの属性に反応する紙があるのですが、ご存知ありませんか?」
そんなリトマス試験紙みたいな物は知らなかった。
私が首を横に振っていると、フレデリック様は笑っていた。
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