はんぺん

バトンタッチを繰り返すはんぺんの群れ


満月に向かって吠えるバラバラになったはんぺん


所狭しと並べられたうだつの上がらないはんぺんドミノの渋滞



渋滞は「解消」という行為を知る前にドミノ倒しを巻き起こして

事態を次々に深刻なものへと落としていく



はんぺんは文字通りふにゃふにゃ

だから元々ビデオテープみたいに

ドミノの架け橋になる資格なんて

元々無かったんだ


                    誰かが叫ぶ

                    冷凍マグロが保管された冷凍庫の中で

                    はんぺんが仮死状態のままカチンコチン

                    

                    誰かが倒れる

                    ドミノの礎となって

                    はんぺんも倒れる

                    これくらいカチンコチンなら

                    きっといつまでもやっていけるわ


                    って


都会の空を埋め尽くすマンホールの雲

都会のコンビニを賑わすおでんを求める客の群れ


皆おでんを求めているんだ

そのために列を作り

それらは風に飛ばされて

いつしかドミノになるんだ

どこもどいつも

みんなみんな

生きることに躍起になって

いきることに絶望しながら

最後の最後でドミノ倒しのように

生きる意味を諦めていく


                   バトンタッチ


                   受け継ぐはんぺんとはんぺん


                   片方は柔らかくて


                   もう片方はどことなく硬い


                   みんなお互いを求め合っているんだね?


だからみんなはんぺんであろうとするし


はんぺんから別のものにはなりたくない


明るい日差しがほほを白く染めるあさが


みんな、大嫌いだって


ままが僕にそう教えてくれたのは


十五年前の話


                   



ばらばらになったはんぺんの群れ

蟻の方が統制がとれているのではないかと思わせるくらい

それはドミノではなく

ただの練り物だった





星空が十二時の方向に傾く真夜中のこと

僕達は机の上から伸びる小さくとも確かでまっすぐな光、

その光の存在を頼りにしながら

ドミノを並べていくことをし続けるほかどうしようも無かった

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