第十回・実際に作れ⑤ ~後ろから作れ

 はい。とうとう十回です。


 いよいよ実際に七言絶句を作る手順なんですが、私が参照したハウツーサイトによると、『結句の末三字から作るべし』と書かれていました。

 おいおい詩を書くのに最後から書くやつがあるかよ、と思うかもしれませんが、実際初心者は結句から作るべしと漢詩界隈では古くから言われているそうです。

 これはどういうことか、私なりに分析しますと――。


 ①起承転結の結から作ることで作品の方向性を決める。

 ②結句の末三字が決まれば必然的に『平起式』か『仄起式』かが決まる。


 こんな感じの理由かと思います。②はあとできちんと説明します。

 大体の絶句形式の詩において、起句承句は情景描写に使われるイメージがあります。

 例えば、これも有名な杜甫の絶句。


 江碧鳥愈白

 山青花欲然

 今春看又過

 何日是帰年


 前半部分はただただ綺麗な山河の景色です。

 この詩の主題は後半部、浮世の柵に捕らわれてなかなか故郷に帰れない寂しさにあるわけです。

 つまり、何か言いたいことがあるなら最後に書くんだから、とりあえずそっちを先に決めましょうよ、ということなんですね。


 初心者は七言絶句からチャレンジ!

 まずは結句の末三字から作ってみよう!



 で。

 私、ガン無視しました(笑)


 いや、最初はちゃんとやろうとしたんです。

 ただ、今回ただ詩作をするだけじゃなくって、一応お題に沿った詩にしないといけなかったんですよ。

 私が今回漢詩で作ろうとしたテーマが『太陽』だったんですけど、じゃあ太陽をイメージしてまずは一句作ってみよう、と思ったときに、詩語表と平仄式をガン見しながらあれこれ言葉を弄ってたら、


 曙光斜照一樹梅


 この一句が出来ちゃったんです。

 で、私気に入っちゃったんです。自分で作ったこの一句が。

 まあ実際はルール②二六同に引っかかっちゃうんで


 曙光斜照一


 に直したんですけど、とにかくこの一句を手放したくなかったんです。

 じゃあこれを結句にしようかと思ったんですけど、これ、どう見ても情景描写じゃないですか。

 朝日が斜めに差して梅の木の枝を照らしてるんですよ。

 いや、それが主題になるわけねえだろ。


 というわけで、この子は起句に置くことに決めました。


 そうすると、平仄を振ったとき、


 曙光●〇斜照〇●一枝梅●〇〇(灰)


 となりまして、二字目が平韻なので、私がこれから作る一首は『平起式七言絶句』となることが閣議決定されたわけです。『灰』は『梅』の韻字です。


 仮にこの子を結句にしたとしても、二字目は平韻になります。

 平起式でも仄起式でも、起句と結句の二字目は揃えなきゃいけないんで、必然的に起句の二字も平韻となり、この詩は『平起式』となるわけですが、多分この説明じゃわけが分からないと思うので、後述する平起式の図を確認してください。それを見てもよくわからないかもしれませんが。


 そして、もうここまで読んでお分かりになるかと思いますが、漢詩作りって、実は行き当たりばったりなんです。これ、別に私がいい加減だからそうなるってわけでもなくって、とにかく最初は詩としての体裁を整えることを最優先しなきゃいけないんで、全体像を想像しながら緻密に計算して作っていくなんてできないんですよ。そういうのは最後に推敲としてやればいいんです。


 というわけで次回に続きます!

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