第八回・実際に作れ③ ~詩語表を使いこなせ(後)
では、気を取り直して続きといきましょう。
みなさん、まだ『近世詩語玉屑』開いてますか? ちょくちょく確認してきますよ?
前回の続き、『平平』とか『仄平』は分かりました。
じゃあ、『庚』ってなんだ?
さらに次のページにいくと、『東』、『灰』となっており、その下の詩句は全て三字です。
つまり、この三文字熟語の欄は、全て一句の末尾三字用の熟語で、『庚』とか『東』は末字の韻を表しているわけです。
そして、平仄式のルールを思い出しましょう。絶対思い出せないと思うので書いちゃいますけど、
④押韻
一、二、四句の末字は同じ平韻で揃えてね。三句目は外すこと。
です。
つまり一二四句の末字は必ず平声の、それも同じ韻を持つ漢字でなくてはいけません。
例えば、一句目なり四句目なりの最後を『東』の中の『旭日紅』にしたなら、残りの二句の最後は同じ『東』の中から選べばいい(選ばなければいけない)ということなんです。
……え、この中から選ばなきゃダメなの? 自由度低すぎひん?
当然そう思われるかと思いますが、ご安心ください。まず『近世詩語玉屑』の中に、『東』の三字熟語はもっとたくさん載ってます。なので、次ページをぽちぽちクリックしながら、上の方に『東』の字を探せばいいんです。
そして、やっぱりピンとくるのがないなー、思ったら、その時はいよいよ漢和辞典の出番です。ピンとは来ないけどニュアンスは近い、みたいな三字熟語の、「この字をこれに変えてみればいい感じになりそう」みたいなのを一字ずつ調べていけばいいんです。
ちなみに、ずらずらーっと並んでる三字熟語の中に、右上に不自然な黒点が打たれている文字があるのがわかるかと思います。
これも簡単、点を打ってる文字が仄韻です。点がなければその字は平韻という意味です。どこにもそんな解説載ってませんが、多分そうです。十文字くらい調べて確認しました。
あとちょっと!
では一二四句はそれでよしとして、三句目は?
引き続き次ページをぽちぽち押して十二ページ目を開いてください。
『轉句』という文字が書いてます。
古体字ですが、要は『転句』です。
さて、そういえば解説し忘れていたのでここでちょろっとお話しちゃいますと、
絶句の四句はそれぞれ起承転結に対応してますので、
一句目を『起句』
二句目を『承句』
三句目を『転句』
四句目を『結句』 と呼びます。
つまり『轉句』の欄に載っている三字熟語が、三句目の末三字に使える詩句ということになります。全ての詩句の三字目に黒点が打ってますよね。三句目末字は仄韻となりますので、当然そうなります。
最後です!
それぞれの詩句の隙間に、なにやら小さくカタカナが書いてます。これはその詩句の解説です。
例えば『芳草』という詩句に『ハルノクサ』と書いてます。春の草ですね。
まあこれは見ればわかるかと思いますが、一つ解説しておいたほうがいいかと思うのが、『ヿ』という文字です(環境依存字ですので、なにか変な表記になっていたらゴメンナサイ。『コ』の下の横棒だけ消したみたいな記号です)。
これ、『こと』と読みます。
『添歳』の下を見ると『一年マシタト云ヿ』と書いてますので、これは『一年増したということ』と読むわけです。
どうでしょう。シコルスキーが脱獄した絶壁の刑務所のような取っつきづらさが、ドロケイの刑務所くらいの緩さになってきた気がしませんか?
何度も言いますが、この詩語表、マジで便利です。作った人はすごい。できればもっと見やすく書き直す人が現れてくれても良かったと思いますが、少なくとも私はこの『近世詩語玉屑(上・下)』と『全訳 漢辞海 第四版(小型版)』の二つを駆使すれば取りあえず見かけだけでなくルール上も問題ないくらいの漢詩は作れました。
私にできたんだから他の人もできるはず!
次回!
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