第3話 右手、左手

「よっ」

 道で会った友人が手を上げている。こっちも「よっ」と手を上げて返事をしようと思った。すると、

「よっ」

友人は、さっきとは、反対の手でまた手を上げた。友人は今、両手を上げている。

なんで、両手を上げたのだろうか。そういう流行りなのだろうか。咄嗟に、自分も両手を上げようとする。

いやいや違う。もしかしたら、自分の後ろに別の人がいて、片方の「よっ」はその人に向けてなのかもしれない。

そう思い、「よっ」と片手で返した。

「よっ」後ろから声が聞こえる。振り向くと、その人は両手を上げていた。恥ずかしそうな顔。俺の勝ち。

 


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