命を繋いだそぼろご飯

一つ前のお話では、関西の友人が関東へ来た。今回は、関東にいる私が関西へ行った時のお話。その時は、私の推しのライブを観に行っていた。夏の日であったが、風が強く、大阪へ向かう道中で新幹線が30分ほど止まってしまうことがあった。開演までに着くかヒヤヒヤしたものの、無事に到着して、何事もなく推しと対面した。5列目で観た推しは輝いていた。キラキラした汗を流しながらキラキラした笑顔を見せている。ファンサービスなどいらない、貴方の笑顔が見ることが出来ればそれでいい。と心に留めながら推しのメンバーカラーのペンライトと双眼鏡を装備して約90分幸せな時間を過ごした。

その後、関西に住む友人のお宅へお泊まりすることになっていた。ホテル代が浮いてありがたい限りであったが、ここでハプニングがあった。お昼に吹いた新幹線が止まるほどの強風は、在来線にも影響を及ぼしており、友人の家へ向かうための路線も2時間の遅れが生じていた。何度か関西には訪れているものの、路線など覚えておらず、とりあえず来た列車に飛び乗れば各駅停車。車内で落胆する私。友人の家の最寄り駅まで数十駅。最初は順調に進む電車であったが、止まっては動き、止まっては動きの繰り返しが始まった。電車にも渋滞ってあるんだなあ……。そう考えてしまう。電車内に閉じ込められて早2時間。コンビニで買ったそぼろご飯はひっくり返り、チューハイはぬるくなっていた。なんとか友人の最寄り駅に着き、お家へお邪魔して即シャワーを浴びた。空腹より、汗でベタついた身体や髪の毛が鬱陶しかった。ギリギリの中、シャワーでスッキリしてリビングへ戻れば先程生で見た推しがテレビに映し出されている。それを見ながら、ビニール袋の中でひっくり返ったそぼろご飯を貪り食べた。なんとか生きられた。新幹線の中でおにぎりを2つほど頂いたのに、数時間でこんなに消化されるなんて……。人体のからくりにこんな所で驚かされるとは思いもしなかった。そこから、友人と酒を飲んで、翌日の計画を練った。こんなことが無ければ、ただのコンビニのそぼろご飯が思い出として語られることはなかっただろう。感謝、そぼろご飯。もう電車に閉じ込められるのは懲り懲りである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る