なにがなんだか
そこにいる誰もが、今後の小島家崩壊を安易に想像できたらしく、黙り込んでしまった。こういう静寂は超苦手な小心者が俺です。
だが、他人の顔色をうかがうようにおろおろしてる俺を見るに見かねたのか、そこでオカンがパンと手をたたいた。
「……まあ、この話は今ここで突き詰めてもどうしようもないわね。時間も時間だし、なんだかおなかすいちゃったわ。みんなで何か食べない?」
わりとお昼のラーメンを食べたのは遅い時間だったはずだが、オカンの気づかいに感謝しつつ俺も同意した。
「そうだな、とりあえず腹が減っては戦はできん。何か食おう……」
「これだけの人数を賄えるだけの何かあるの、この家に?」
オカンのおっしゃるとーり松坂トーリ。同意したはいいが、これだけの人数を賄えるような量の食糧は我が家に装備されてない。
「ピザでも、取るか……」
以前郵便受けに突っ込まれていた、今はキッチンのわきに無造作に置いてあるピザのチラシを見ながらそうつぶやく。
するとさっそく反応があった。
「ならアタシはマルゲリータでシクヨロ。生地はクリスピーでね」
「マンゲヌイタピザ? 剣崎さんパイパンなんか」
「あんたぶっ飛ばされたいの? そんなの当然でしょう」
「あ、アンジェはパンプキンピザが良いな」
「じゃあ、わたしはプレスサンドを……」
「……プルコギピザで……」
「はいはい、アンジェがかぼちゃぱんつピザで暮林さんが種付けプレスサンドで小島さんがプルプルコキコキピザね。つか、君たち結構ぜーたく言ってるってこと忘れてない? アンジェ以外金は出せよ、おごる義理などないからな」
お高いんだけど、全員ピザで文句ないのか。ついでに剣崎さんがパイパンだということだけは覚えておこう。
というわけで、手持ちのスマホからインターネッツ注文をしたのだが。
ピンポーン。
五分もせずに、なぜかインターホンが鳴った。
「早っ! もう来たんか!?」
最近のピザ屋すげえ、とか思いつつ、何の気なしにドアを開けたら。
「雄太さまこんばんは。美衣のお荷物を届けに来ました……って、やたらにぎやかですね。どうされたんでしょう、こんなに人が……」
そこにいたのは、ピザ屋やフーゾクのデリバリーではなく、暮林さんの御母堂、美沙さんであった。なぜかかたわらに膨らんだバッグが置いてある。
「いや、ちょっといま今後の(小島さんとかの)身の振り方について取り込み中で……って、荷物、とはなんでしょう?」
「ああ、その前に……この度は、美衣との同棲のご提案、ありがとうございます。私どもとしては少々事を急いでるとも思えましたが、当の本人が嬉しそうにしているので、問題はないという結論に至り、許可しました。どうぞこれからもよろしくお願い申し上げます」
「……はい?」
「ですから、雄太さまから美衣に持ち掛けられた、同棲のご提案のことです」
「……はい?」
大事なことなので聞き返してしまった。
ドーセイ?
そんな提案してないぞ?
ドーセイ……いや、剣崎飛鳥という同性に関しては少し聞いた記憶はあるけど、同性違いだ。どーせいっちゅーねん。
「ですが、まさかこれだけ人がいるとは……まさかとは思いますが、雄太さま、ハーレム計画などを立てたりはなさってないですよね?」
そこで首を左右に振りワンルームのアパート内を見渡す美沙さんの目は鋭かった。あ、なんか知らんが剣崎さんが気まずそうに顔をそらしてる。
一方、暮林さんは嬉しそうに起立して駆け寄ってきた。
「あ、ママ!? わざわざママが届けに!?」
「ええ、万が一があってはいけませんので。バッグの中に当面の服と下着、あとはコンドーム3ダースと夜の必需品が入ってます。いいですか美衣、いくら同棲というのはヤるだけの生活とはいえ、あなたたちはまだ学生の身です。避妊だけはしっかりするのですよ」
「も、もちろんだよ!! わたしだって妊娠するよりも、雄太くんとたくさん愛し合いたいもん!! あ、で、でも、雄太くんに望まれたら、ナマでもしちゃうかもしれないけど……」
「????」
なんだこの親子の会話。何を言っているのか、0.01ミリも理解できそうにない。というか母としてどうなんだそれ。
…………
いやでも確かに美沙さんはすごくぶっ飛んだこと以前に言っていたけどさあ。ふと思い出した。
それよりも問題は。
「……お兄ちゃん。同棲って、な゛に゛????」
アンジェはじめ、他のメンバーからの圧がすごいんですけど。
冤罪で糾弾されるってこんな感覚か、ありがたくねえよ。
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しばらくさぼっててすみません。
各ルートの流れをあらためて考えてたんですが、『コイビト・スワップ』よりもはるかに長くなっちゃいそうだなこれ。
カットできそうなところは切り捨てたいと思いますのでもう少しお付き合いください。
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