確認は実地でどうぞ

 帰りの道中で、これからどうするのがいいかを少し考えた。


 まあ、まずは暮林さんに、剣崎さんのことを話してなんとかごたーいめーんできるようにお願いすることは一番重要。主に俺の未来という点において。


 あと、暮林オカンの美沙さんに、奥津があの後どうなったのか、もし知ってるなら今は何をしてるのか、そのあたりも尋ねなければならないか。

 剣崎さん宛に、あんな怨恨のこもった手紙を出したのが奥津である、という可能性が出てきたからな。さすがに、俺のバラ色の未来がスプラッタに染まるのだけは勘弁してほしいので。


 というわけで、俺は電車の中で待ちきれずに美沙さんへと電話をかけ、まずは奥津のことを確認したのだが。


「わかりません」


「……へ?」


「安藤……いえ、奥津の間男は、今後美衣にストーキング行為をしたら、マッパにひん剥いて街中に放置するかもしれませんよ、と説得はしたんですが」


「それ説得じゃなくて脅迫ですよね。逆にこっちが訴えられても知ーりーまーせんよー?」


「雄太さまはアイ〇スオー〇マをリスペクトしてらっしゃるのでしょうか?」


「……」


 そこツッコむんかい! とは思ったが、不毛なので言うのはやめた。なんとなく美沙さんはパイパンのような気がするし。


「ところで、なんで今、9センチのたわわの件について尋ねられたのですか?」


「それ全然たわわじゃないですよね? いやまあそれはともかく、奥津が何をしてるかがちょっと気になったもので」


「まあ、なにかあったら、ご報告いたしますね」


「よろしくです。そうそう、奥津と言えば剣崎さん──例の先輩なんですが、大学の春祭に呼ばれたことはご存じですか?」


「そういえばKYOKO、という名前で芸能活動してらっしゃるんですよね、剣崎飛鳥さんは」


 さすがにそのあたりは知ってるか。

 じゃあ、一番大事なことを。


「そのKYOKOさんが、指名で暮林さんに会って話をしたい、とお願いしてきたんですよ」


「……どういうことでしょう? なぜ雄太さまがそのようなことを?」


 おっと、訝しがられた。まあそりゃそやな、まさか俺と剣崎さんがつながっているとは知らないだろうし。


 ……しまった、どう言い訳しようか何も考えてなかった。適当にごまかそう。


「あ、あの、新歓委員の先輩が、そのような条件を要求されたって漏らしてて、暮林さんと同じ学部だという俺になんとかしてくれないかとお願いされたので……」


「……そうですか。しかし何のために……」


「え、ええと、なにやら会って直接謝罪したいことがあるそうですよ」


「……」


 思うところはさすがにあるのか、珍しく美沙さんが黙った。

 暮林さんが俺に謝罪した経緯を鑑みると、許してくれても良さそうな気もする。


「ま、まあ、俺は深い事情は分からないんですが、せっかく有名人が来るそうそうない機会ですし、合コンのためにも暮林さんに都合つけてもらえないかなと……」


「合コン?」


「間違えた、今後のためにも、です」


 やべえやべえ、アドリブはやっぱりどこかしらにぼろが出る。なんとか取り繕えたからいいけど、下準備は大事だな。


「……ですが、そのあたりは私が強制できるところではございません、美衣の気持ち次第ですので」


 やはり娘を思う気持ちが強いのだろうか、美沙さんはいい返事をしてくれない。

 ま、剣崎さんがなんのために暮林さんから奥津を奪ったか、を説明したらまた話は違うかもしれんけど。

 この様子じゃそんなこと説明した時点で、俺と剣崎さんの関係を疑われそう。


「そこをなんとか……」


「……なので、雄太さまが直接、美衣を説得してくださるなら、可能性は高いと思うんですけど?」


「……はい?」


「ちょうど美衣も自宅にいますし。通話が長くなるのが嫌であれば、今から家まで来ていただいても、いっこうにかまいませんから」


「……」


「直接、雄太さまが美衣を説得してくださいませ」


 ガチで嫌な予感しかしない。


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