彼女ガチャで今まで引いたＮＴＲ（ネトラレア）が、大学生活でＤＳＲ（ダイスキレア）になって返ってきたんだけど。

錯乱棒、飛んで火に入る悪い虫

　人生がけっぷちのあずささんと面談終了。

　あずささんの協力は得られることが確定し、さてジョーンズさんに連絡入れなきゃなあ……なんて思っていたその時。

　スマホに着信が届いた。誰かと思いきや暮林オカン、美沙さんだ。

「もしもし？」

『あ、突然すみません、雄太さま。今、大丈夫でしょうか？』

「ああ大丈夫ですよ、ちょうど用事が済んだところですから」

　お気楽な俺とは裏腹に、美沙ママの口調は何やら深刻な雰囲気を感じさせるものだった。

　なんかトラブルがあったんかな、とか思ったら案の定。

『実は……お預かりしている小島様の件なのですが』

「ああ、なにか？」

『はい。さきほど、小島様のスマートフォンにメッセージが届きまして……それを確認した小島様が、突然錯乱し始めたのです』

「……はい？」

『どうしたのかを尋ねても、ただただ錯乱するばかりで要領を得ず、困惑しておりました』

「……」

　ありゃまー。

　なにかしら小島さんを脅かすようなメッセージでも届いたんだろうか。

　…………

　ま、心当たりなんぞ限られている、か。

『そうしてご自身のスマートフォンの電源を落とし、お貸しした部屋の片隅で震えている状況でして……』

「……直接、小島さんと話せますか？　いま」

『ええ、おそらく雄太さまであれば問題ないかと思います』

　とりあえず、美沙さんから電話を代わってもらって、小島さんと話すことにしてみた。ま、美沙さんのほうでもそれを望んで俺に連絡取ったんだろうし。

『あ、ああ、雄太どうしようどうしよう、どうしたらいいのあたし』

　小島さんに通話相手が代わった直後のことばからして、憔悴っぷりがうかがえる。

「落ち着け。頼むから落ち着け。訳が分からないからまず何があったのか説明してくれまいか」

　口調だけはやさしくしてそう諭すと、小島さんは少し間をおいてからぽつりぽつりと話し始めた。

『……来るの』

「なにがよ？　生理がか？　来ないかもとビビってたらやってきそうなんで嬉しくて思わず気がドーテイ……いや動転したとか？」

『……』

「……」

　ファーストコンタクト失敗。

「すまん、小島さんを落ち着かせようとしていっただけだが見事に滑った」

『……あ、ありがと』

「いや礼を言われるのもすごくビミョーなんだが」

『……兄貴が、こっちに来る日が決まったの』

「……は？」

『ゴールデンウィーク前の、土日に……竜一義兄さんが、こっちに様子見に、来るって』

「……ああ」

　そういうことか。一番会いたくないやつが来る日が確定したから。

　クッソ生真面目だなあ。その日に合わせて断るとか逃げるとか回避方法はいろいろあるだろうに。

『絶対にすぐ帰るつもりなんてない。脅してでもこっちに滞在しようと思ってるはず。そして……』

「（自分のたまりにたまった性欲を開放すべく、半ばゴーカンでも小島さんとやろうとしてるわけね。ま、ＪＣをナンパしようとするくらい切羽詰まってるみたいだしなあ、欲求不満が）」

『ねえ、いやだよ、あたし。もういやなの、通い合う気持ちすらないのに、身体を重ねるのなんて』

「（そりゃ不感症のままむりやり押し倒されてもなんもいいことないよな）」

　少しだけ、俺は悩んだ。

　因果応報ってもんを、小島さんの家庭の事情に持ち込んでいいのかどうか。

　いちおう言質を取らねばなるまいな。