座礁したナンパ船にょぅι゛ょ再び
「ねえ、ところでお兄ちゃん」
「ん?」
「さっきまでいたお兄ちゃんの元カノ、なんか変な独り言口走ってたけど、病んでるのかな?」
アンジェがそれを言うか。というか、聞いてたんかい。
そうは思っても、心の安寧が訪れた今、変に蒸し返すのは避けたい気もする。
アンジェのこの言い方からして、どういう誤解、というか思い込みを話していたのか、よく聞こえてないようだし。
「……まあ、自殺未遂したくらいだからな」
「え……」
アンジェを黙らせるべく、ノレない方向へ話題を振る。案の定アンジェは黙り込んでしまうが、何かピンとくるものがあったらしく。
「それは、お兄ちゃんと別れたことが、関係してるの?」
的確なところをツッコんできやがった。これだから勘のいい妹は……いや嫌いじゃないけどさ。
「……ノーコメントで」
「それ、答えになってるよね?」
「まあ、アンジェが思ってるような理由じゃない。実際、別れてからこの大学に来るまで、一切顔も合わせなかったし、情報がなかったからな。自殺未遂したって知ったのもつい最近だ」
「そうなんだ。まあ、どうせ別れてからお兄ちゃんの良さに気づいて、激しく後悔したから……みたいな感じなんでしょ?」
思わずひるむ俺。当たってはいないが、割と鋭いアンジェの推理であった。
「……バカだよね。本当に大事なものは、
「それがチューボーのセリフか」
「アンジェだって、そのくらい知ってるもん」
そう言って俺の目の前で膨れるアンジェは、ひょっとすると俺が思ってるより大人なのかもしれない、なんて思った。
……オトナ、ねえ。
「なあ、アンジェ」
「なに?」
「早くオトナになりたいとか思ってるか?」
質問するやいなや、アンジェの口の中に入っていたフェラエチーノが俺の顔面に吹き付けられた。
顔面シャワーって本当に嬉しくない。俺にもし彼女ができても、こんな不快な行為はしないようにしよう。
「どどどどう言う意味!?」
「……いや、言葉通りの意味……」
「そそそそうだよね、お兄ちゃんはアンジェを早くオトナにしたいって思ってるんだよね!?」
「……いや、というか、アンジェもオトナびてるよなあ、って思ったから聞いただけなんだが」
「だだだ大丈夫だよ、アンジェはお兄ちゃんがオトナにしてくれる日を待ってるから!!」
「……? いや、俺が何をするまでもなく……」
「だめだよ! お兄ちゃんがアンジェをオトナにするの!! それはたとえかをるちゃんが使徒だろうが犯人がヤスだろうが揺るがない確定事項なの!! いい!?」
「……お、おう……」
勢いで了解してしまったが、アンジェは
「まったく……やだよアンジェは。お兄ちゃん以外の男の人なんて触れられたくもない」
「……」
そういえばアンジェは男が苦手……というより、毛嫌いしてるもんな。
特に小学生時代にいじめてた男子が、中学進学したら手のひら返すようにすり寄ってきたことをいつもバカにしてたっけ。せめて小学校時代から仲良ければポイントも稼げただろうに。
「この前もさ、なんか知らないチャラそーな大学生くらいの男の人がいきなりナンパしてきてね。大してカッコよくもないのに勘違いしてるような男でさ、正直キモかった」
「断ったんだろうなァ!?」
「ひっ! びっくりした。当たり前でしょ、なにかあったらすぐに見捨てて逃げそうなチャラい男の人なんて、いっちばん嫌いなタイプだもん」
「……ならいい。アンジェ、おまえは清いままでいてくれ、俺の心が持たない」
「うん、生理がおわったら、アンジェはすぐにでもいいからね?」
「……何の話だ」
そういう意味か! 堕天使になるのはまだ早いぞおい。
つーかな、しねぇって言っただろーが。頼むから忘れてくれ。
…………
忘れさせるためにアンジェの頭を強打してやろうかと思ったが、さすがにそんなひどいことはできないのと、頭を強打してギャルになったら逆に困るのでやらなかった。
しかし、今時ナンパするやつなんて、真方くん以外にもいたんだな。
―・―・―・―・―・―・―
いろいろと性的によろしくないスマタバックスを出て、俺はアンジェに問いかける。
「で、ジョーンズさん来るまでまだ時間あるけど、どこか行きたいところあるか?」
「あ、なら、プチプラコスメ見に行ってみたい。都会の方なら田舎よりもいいものありそうな気がするし」
「……俺はどこにその店があるかわからないぞ」
「それはもう調べてあるよ。まかせて」
「……」
アンジェのやつ、本当に俺よりこの街に詳しいんじゃねえか。
客人であるはずの妹に手を引かれ、情けなく後をついていく兄。
そうして目的地近くまできたところ、向かい側から同じように手を引かれて歩いてくるようじょが目に入る。
なんかどこかで見たような……あ。
「おにいたーーーーん!!」
ぽすっ。
俺が気付くよりも早く、ようじょは俺に向かって突進してきた。
まさかゆきちゃんが俺のことを覚えていたとは。
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